ホンダが次世代電動スモールスポーツコンセプトモデルとして発表した「EV-STER」。
すでに皆さんもこれが「次期ビート」になるのではないかという報道を目にされていると思います。 確かに軽自動車枠(全幅は1480mm)にいつでもサイズダウンできそうな全幅1500mmや、明らかに初代ビートを意識したようなボンネットのラインなどが「次期」を予感させます。
しかし筆者が一番「これは次期ビートの匂いがする」と思ったのはインテリアなんです。
初代ビートでは、ドライバーの運転操作姿勢を第一に考えて2座の配置がボディのセンターから対称な位置ではなく、運転席側に余裕を持たせて助手席側が狭い設計だったのです。
今回のEV-STERでは一見、助手席も運転席と同じフルバケットシートのようですが、実はこの助手席はリクライニングもスライドもせず、それどころかそのシート骨格はフロアから直接「生えている」のだそうです(現場にいた20代とおぼしきインテリア開発担当の方談)。これはもちろん軽量化のためで、形は違えど初代が持っていたドライバー優先の設計が根付いているよう。
さらに注目すべきはドライバー側のシートカラー。イエローを使ったスポーティなものですが、実は初代ビートでは製品に採用されたゼブラ柄の前段階ではイエロー&グレーのシートも検討されていたんです(モックアップもあったくらい現実性の高いものだったのですが、最終的にはどんなボディカラーにも似合うゼブラに落ち着いたようです。尚、この情報ソースは筆者が記した本「エンスーCARガイド ホンダ・ビート」<三樹書房刊>取材時に得たもの)。これはスポーツ・ギアとしての元気のよさを体現したかったための配色だったそう。
そこで前出のインテリア開発担当者に「このイエローは初代の開発段階のイメージを参考にしたのですか?」と聞いたところ、やんわりと、しかし強い意思を持って否定されました。「いえ、過去にはまったくとらわれず、自由にデザインしました」と。ここに筆者は「ピン!」ときたわけです。実は初代ビートというのは開発メンバーのほとんどが20代で「自分たちが欲しい、とにかく新しいものを」という思いで作られた、そして、そんな自由な環境をメーカーが許した稀有なクルマだからです。
ひるがえってEV-STER。エクステリアデザインに関していえば、おそらく初代ビートを意識しなかった、というのは嘘になるでしょう。が、インテリアについてはおもいっきり自由にやった。
しかし、その自由さが逆に初代ビートに近い感性を生み出していった。そしておそらくは今、ホンダの中にはそんな若者たちに「自由にやらせる」空気が育っているのではないでしょうか。だから「次期ビート」は近い。そう筆者はにらんでいるのです。
(ウナミ哲也asウナ丼)