■免許取り消し前に返納すれば処分はチャラ…そんな甘い考えは通用しない!
高齢者の「免許返納」が話題になっている。
「免許を受けた者は、その者の住所地を管轄する公安委員会に免許の取消しを申請することができる」(道路交通法第104条の4第1項の前段)
自ら申請しての取り消しなので、道交法的には「申請取り消し」という。
警察庁のデータによれば、2009年の申請取り消しは5万1086件だった。2018年にはなんと42万1190件に。この10年間で8倍以上も増えたわけだ。
返納の規定を利用して、こう考える人がいる。
「酒酔い運転で捕まっちまった。違反点数は35点。イッパツで欠格3年の取り消し処分だ。3年間も運転できないのは困る。処分を受ける前に免許を返納してなくし、すぐまた取り直そう。どうだ、いい手だろ」
●取消処分の基準に達すると免許証の返納はできない!
いや、ちっともよくない。
道交法施行令第39条の2の3が、免許取り消し処分の要件に該当した者、停止処分の基準に達した者については申請取り消し(返納)はできないと、しっかり定めているのだ。
もっと正確にいえば、返納の申請はできるのだけども、公安委員会(実質は警察)は応じないことになっている。
事務的な事情で点数の登録が遅れ、処分の要件・基準に達する前に返納ができてしまうこともある。
だが、再び免許を取り直す前に点数が登録されると、「拒否処分」(同法第90条第1項)を執行され、新しい免許は取得できない。
返納も免許の再取得も終わったあとに、じつは取り消しの要件・基準に達していたことがわかれば、「事後取り消し処分」(同法第90条第4項)を執行される。
返納の規定を利用する抜け道は、塞がれているのだ。
前出のとおり2018年の返納(申請取り消し)は42万1190件。うち65歳以上が40万6517件。
ということは、65歳未満の返納が1万4673件あったわけだ。その多くは、長期の取り消し処分を逃れたくて「どうだ、いい手だろ」と返納したケースかもしれない。
(今井亮一)
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今井亮一の交通違反バカ一代!
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