【自動車用語辞典:空調「エアコン用環境センサー」】吹き出し温度や風量を決めるために外気温や日射量を測るためのセンサー類

■オートエアコンの制御に欠かせない装置

●クルマの性格や車格によりセンサー数は変わる

快適な車室内空間を確保するオートエアコン制御には、さまざまなタイプの環境センサー情報が必要です。例えば、車室内の温度・湿度センサー、外気温センサー、日射センサー、排気ガスセンサー、赤外線センサーなどです。

それぞれのセンサーの役割と動作原理について、解説していきます。

●どんなセンサーが必要か

エアコンの制御は、吹き出し温度や風量、湿度、吹き出し口切り換え、内気循環と外気導入の切り換えですが、制御のためには多くのセンサーが必要です。

・車室内温度を検出する温度センサー、湿度を検出する湿度センサー
・外気温度を検出する外気温センサー
・車室内に侵入する日射量を検出する日射センサー
・車室外の排ガス濃度を検出する排気ガスセンサー
・乗員の温感を非接触で検出する赤外線センサー

エアコンECUはそれらの情報を使って、エアコンの吹き出し温度(エアミックスバルブの開度)や風量(エアブロアの回転)、コンプレッサーを制御して車室内の空調状態を最適化します。

以降で、それぞれのセンサーの役割や検出原理について、解説します。

センサー配置図
センサーの配置例

●車室内温度センサーと湿度センサー

温度と湿度のセンサーは、通常一体化してステリングとセンターコンソールの間に装備されます。

温度センサーとしては、温度によって抵抗値が変化するサーミスタが使われます。

湿度の計測は、高分子感湿膜を使います。感湿膜が、水分量(湿度)によって可動イオンの遊離量が増減してインピーダンスが変化することを利用します。窓ガラスの曇り具合を検出するガラス搭載型の湿度センサーもあります。

●外気温センサー

外気温を計測するには、温度センサーを走行風や直射日光、放射熱などの影響を受けにくい場所に取り付ける必要があります。通常は、フロントバンパー内にステーなどで浮かせてサーミスタの温度センサーを取り付けます。

●日射センサー

日射センサーはダッシュボードの上に取り付けられ、日射量を検出して温度補正を行います。日射センサーは、光検出素子としてフォトダイオードが使われ、日射強度を電流として出力します。

●排気ガスセンサー

オートエアコンでは、通常は換気の良い外気導入で作動します。ただし、渋滞に巻き込まれた等で車室外の排ガス濃度が高いことを排気ガスセンサーが検出した場合には、内気循環に切り換えて外気からの排気ガスの進入を防止します。

排気ガスセンサーは、ガス濃度で抵抗値が変化するガスセンサーを用いています。前方車からの排気ガスの影響を検出するため、フロントグリル背面に取り付けていることが多いです。

●赤外線センサー

赤外線センサーは、物体から放射される赤外線を受光することによって、物体の表面温度を計測するセンサーです。物体から放射される赤外線エネルギーの熱を、熱電対の原理で電圧に変換して温度を計測します。

赤外線センサーを使って乗員の温感を察知して、引き出し口を切り換える制御が一部で採用されています。またトヨタ・レクサスなどの高級車では、同時に6箇所の温度を計測できるマトリクス赤外線センサーを使って、後席各乗員の温感を察知して最適制御しています。


オートエアコンでは、より多くのセンサーを使えば、その分燃費と快適性の両立を高いレベルで達成できます。
最終的にはコストパフォーマンスなので、クルマのコンセプトや車格によって、環境センサーの数やエアコン制御の精度が決まってきます。

(Mr.ソラン)

この記事の著者

Mr. ソラン 近影

Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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