●淡々としたレース運びの中でもチャレンジを続けたドライバーたち
8月25日に決勝レースが行われた、2019第48回サマーエンデュランス『BHオークションSMBC鈴鹿10時間耐久レース』、略してSUZUKA 10H。
決勝の日のスケジュールはレーススタートが午前10時からとなっているために朝が早く、ピットウォークは朝の7時から。それでも朝早くから大勢の来場者の方々がピットウォークにやってきます。
8月24日の予選の結果により23位からのスタートとなったModulo Drago Corseの034号車。スターティンググリッドは旧ルマン式となりストレートのピット寄りの壁に斜めに並べられます。実際のスタートはここからフォーメーションラップを経てのローリングスタートなので、この並べ方でスタートする本来の旧ルマン式スタートのような大混乱ということはありません。
朝9時過ぎから始まったグリッドウォークも多くの来場者で賑わいます。
この時点で気温は30度近くまで上がっており、グリッドではスタートドライバーの道上龍選手がクールジャケットの上から保冷剤で体を冷やしているという光景も見られます。
フォーメーションラップを経て午前10時に切られたスタート。ここから10時間後の夜8時のチェッカーフラッグまで長い戦いが始まります。ミスなく走り最終的な順位をあげていくという戦略でレースを進めるはずでしたが、スタートではルールの解釈の違いで順位を落としてしまいます。
日本のレースではシグナルがブラック・アウトしてレースがスタートしてもスタートラインまでは追い抜きはできませんが、ブランパン ワールドGTチャレンジの一戦となった今年は、統括するSROのルールが適用されるのでコントロールラインから追い抜きができたようで、この辺りのルールの理解の違いで2台ほど先行を許してしまいます。
ルールと言えばピットでのルールも違います。義務付けされたピットインでは必ず84秒のピットストップも義務となります。これよりも早くピットアウトするとペナルティとなるのです。
その間にタイヤ交換、給油、ドライバーチェンジを行いますがSUPER GTなどで1秒未満の戦いをしながらピット作業を行う日本のチームにとってはかなり余裕のある作業となるのでピットではミスのない作業が行なえます。しかしタイヤ無交換作戦などのピット作業を削っての作戦はとれません。
レースはフルコースイエロー(FCY)やセーフティーカー(SC)が何度も入る荒れた展開となっていましたが、Modulo Drago Corseの034号車はピットインでの順位変動はあったものの17位〜19位を推移、淡々と走っているかの印象を与えていました。
しかし、そんな中でも出来るチャレンジは繰り返していたようで、中嶋大祐選手曰く「日本のドライバーならペナルティーとなりそうで絶対にやらない。(PS4ゲームの)グランツーリスモだってペナルティーになる」という、海外勢の4輪脱輪になるようなライン取りを大津選手は「後ろにくっついていって真似してみました。確かにピレリタイヤだったら効果ありですね。SUPER GTだったら絶対にやりませんけど」と語っています。
こういった走りに貪欲な姿勢の大津選手、ナイトランとなる夕方6時以降は2スティントを担当します。
夜7時を過ぎた頃から日も完全に落ちる鈴鹿サーキット。増設もされたヘッドライトだけが頼りとなります。「とにかく暗くてよく見えない。後ろからアウディの速いのとかが来て眩しいな、と思うことはありますが、むしろ前の方を照らしてくれるのでかえってこっちのペースが上がったりします」と語る大津選手。
夜8時のチェッカーが近くなると道上選手、中嶋選手がサインガードにやってきてピットビルの屋上にある大型ビジョンでレースの様子を見守ります。
そして夜8時に向かえたチェッカー。18位でフィニッシュとなったModulo Drago Corseの034号車。
レース後に道上選手は「完走できたのは良かった。でもピレリタイヤに悩まされたのは事実で、決勝日の朝の短いフリー走行で予選よりはマシンのセッティングも良くなったが、ドライバーもこのタイヤに合わせたドライブをしないといけない。ルールの理解とレースのイメージの違いが海外勢と日本側でかなり違う。例えば(4輪脱輪しそうな)スプーンコーナーでのあのコーナーリングは僕らの感覚で行けば違うコーナーとして捉えられなければできない」と語ります。
「SUPER GTのマシンを持ち込んでいるので壊さなかったのはまぁよかった。次のSUPER GTオートポリス戦は昨年も表彰台に上がっているし、その次のSUGOも昨年はかなり良かったので9月に2戦あるSUPER GTはいいイメージで臨みます」と早くもSUPER GTのシリーズに頭を切り替えている道上選手。
SUPER GTの次戦、9月7日〜8日のオートポリス戦では再び表彰台を期待しましょう。
(写真・文:松永和浩)