チョ~複雑で分かりにくい「自動車保険の等級」の仕組みを解説します!【保険/車検のミニ知識】

■自動車保険料の負担を公平化するためのシステム

自動車保険には、大口契約(10台以上)のフリート契約と、9台以下の小口契約のノンフリート契約があり、一般的に個人の方はノンフリート契約を結ぶことになります。ここで出てくる等級とは、ノンフリート等級別料率制度で保険料の割増・割引率を決めるための区分のことを言います。今回は元自動車ディーラー営業マンが、自動車保険の等級について解説していきます。

任意保険の等級
保険請求がないと1ランクずつアップします。

■1年に1つずつ育っていく等級

新規で自動車保険に加入すると必ず6S等級からスタートします。加入から1年間、保険請求をする事故が無ければ1等級ずつ上がっていきます。逆に保険請求をする事故を起こした場合は3等級下がります。自然災害や盗難などでの保険請求では1等級下がります。

等級は1等級から20等級までの20段階となり、3等級以下は保険料が割増、4等級以上は保険料が割引となり、20等級で最大割引率となっています。例外として全労災のマイカー共済のみ最大等級が22等級となります。

■等級は一台につき一つ設定される

一人で複数台のクルマを所有している場合には、1台ごとに等級が新しく振り分けられます。例えば、10年間クルマを保有し続けていて、保険請求が無かった場合、その保険は16等級まで上がっていますが、この時に2台目のクルマを保有した場合、2台目のクルマは7F等級が設定され、一人の契約者が16等級と7F等級の2本の契約を持つことになります。

■日本全国共通の等級管理

保険会社を変更しても、自分の持っている等級は変わりません。良くも悪くも簡単にリセットできないのが自動車保険の等級です。6等級以下の等級の状態をリセットしようと、他社で新規契約しようとしても、過去の契約をどの保険会社でも調べることができるので、以前に結んでいた契約の等級が調べられてしまい、リセットすることはできません。リセットするためには、自動車保険を契約していない時期を13か月以上つくる必要があるので、その期間はクルマの保有はできません。

逆に保有台数を減らす場合に、大事に育てた等級が消えてしまうわけではありません。「中断」という形をとることで、10年間は育てた等級を維持したまま、今後の増車のタイミングで等級を再利用することができます。大事に育てた等級を無くさないように、減車のタイミングでは必ず中断証明書を発行しましょう。

■事故あり係数という罰則期間

等級には1~20までの段階がありますが、この中でも過去に保険請求をしたことがある人と、請求をしていない人を分けるのが「事故あり係数」です。これは事故を起こして保険請求をした人と、事故なしで保険料を払い続けている人の保険料負担を公平化するために、近年作られた制度です。

3等級ダウン事故で3年間、1等級ダウン事故で1年間、事故あり係数適用期間が設けられ、同一等級でも保険料割引率が下がります。7等級以上で割引率に変化があり、事故なしの7等級で30%割引されるところを、事故あり係数適用期間の7等級では20%割引となります。同様に、13等級では49%割引のところが29%割引に、20等級では63%割引のところが44%割引となります。

実質的に保険請求をすると、等級が下がるほかに、割増保険料を一定期間払わなければならに事態になるので、クルマの修理費よりも、3年間で支払う自動車保険料の方が高くなってしまったということもあります。

■まとめ

イマイチ仕組みのわかりにくい自動車保険の等級制度は、事故あり係数適用期間の導入により、さらに複雑なものになりました。表面的な等級の数字だけでなく、今の契約がどれだけ保険料の割引になっているのか、保険を使った場合と使わなかった場合に等級と割引率がどうなるのかを保険代理店に確認しながら、保険請求や更新手続きを行っていきましょう。

(文:佐々木 亘)

この記事の著者

佐々木亘 近影

佐々木亘

大学卒業後、銀行員になるも3年で退職し、大好きだった車の世界へ足を踏み入れました。自動車ディーラー営業マンへ転職し、レクサス・セールスコンサルタントとして自動車販売の現場に7年間従事します。
現在はフリーライターとして独立し、金融業と自動車ディーラーでの経験を活かして活動中です。車にまつわる金融・保険・法規などの、小難しいテーマを噛み砕き、わかりやすい情報へと変換して発信することを心がけています。常にエンドユーザーの目線に立った、役立つ情報を届けていきたいと思います。
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