90kWhリチウムイオン電池を積むジャガー初のバッテリーEVであるI-PACEは、ドライブシャフトと一体化された電動モーターが前後輪に各1基配置され、4輪すべてにトルクを伝え、鋭い加速が自慢です。最終減速比は1.000で、トランスミッションは搭載されていません。
2モーターによる合計最高出力は400PS/4250-5000rpm、最大トルクは696Nm/1000-4000rpm、0-100km/h加速4.8秒を誇ります。ガソリンエンジン車のSUVを引き出すと、ポルシェ・マカン ターボが400PS/6000rpm、550Nm/1350-4500rpmで、0-100km/h加速は4.6秒。
カタログ値の0-100km/h加速は、ポルシェ・マカン ターボが0.2秒上回っていますが、おそらく同時にスタートすると、最初はすぐにトルク(加速感)が立ち上がるI-PACEの方が出だしはいいかもしれません。これは、競争をした訳ではないのであくまで予想ですが、それだけ瞬時に駆動力がタイヤに伝わるEVならではの感覚がI-PACEでも堪能できます。
さらに、首都高速道路で追い越しをかける際も、身体が背中に押しつけられるような加速が右足を少し踏み込むだけで引き出せます。面白いのは、加工された疑似エンジン音が室内に響き渡る「アクティブ・サウンド・デザイン」の採用。確かに、ギミックではあるものの、なかなかいい響きが室内に聞こえてきますから、スポーツ走行を楽しみたい時には使ってみるのもいいかもしれません。
減速時は、High(ハイ)、low(ロー)の2段階から回生ブレーキの減速Gを設定できます。ただし、タッチスクリーンで操作する必要があるため、一度固定したら頻繁に切り替える人は少なそうです。パドルシフト式の回生レベルセレクターが備わっていれば、回生ブレーキで減速をよりコントロールしやすくなり、EVの利点を実感できるはず。
乗り心地は、床下に重い電池を積むEVらしいどっしり感があるもので、路面によっては上下、左右に揺すぶられるシーンも散見されますが、全般にフラットライドで十分に良好といえるレベル。
3段階調整式のエアサスペンションを装着し、乗降時は40mm下がり、オフロード走行時には最大で50mm車高が上がるなど、ジャガーランドローバー・グループの一員らしい悪路走破性を備えています。
90kWhリチウムイオン電池への充電は、最大7kWのAC普通充電、100kWのDC急速充電、日本向けには50kWのチャデモの急速充電に対応。0%から80%まで(DC50kW)は約85分、0%から100%まで充電する際は、AC普通充電(7kW)で約12.6時間かかります。
(文/塚田勝弘 写真/平野 学)