メルセデス・ベンツのCクラスはFR系メルセデスのなかでもっともコンパクトなモデルとなります。その先祖は190シリーズで、かつては日本の5ナンバーに収まるサイズでしたが、現行モデルは3ナンバーサイズとなっています。
今回試乗したAMG C43 4マチック カブリオレは全長4693mm×全幅1810mm×全高1402mmで、5ナンバーだった190時代に比べるとなかなかの大きさですが、それでもメルセデスのなかでは小柄で、取り回し性もいいという印象です。
搭載されるエンジンはV6の3リットルで最高出力は390馬力、最大トルクは520Nmにも上ります。従来型エンジンに比べて23馬力の出力アップが行われていて、動力性能的にはかなりのパワフルさを感じるものとなっています。
駆動方式はフルタイム4WDですが、トルク配分は31対69とかなりリヤよりとなっていて、この配分がナチュラルなハンドリングを生み出す大きな要因のひとつとなっています。
真っ直ぐ走るだけなら、4輪に均等に駆動トルクが配分されていればいいですが、クルマはコーナリングをしなくてはなりません。操舵を担当するフロントタイヤに駆動力が伝わりすぎるとコーナリングに使うためのグリップが減ってしまいますが、このくらいの配分だとちょうどいいフィーリングで、安定した加速とコーナリングの両立が可能となっています。
AMG C43 4マチック カブリオレには「AMGダイナミックセレクト」と呼ばれる走行モードセレクターが装備されており、エコ、コンフォート、スポーツ、スポーツ+、インディビデュアルの5種のモードを選ぶことができます。
もっともスポーティなスポーツ+はサスペションもかなり硬くなり、エンジンの吹け上がりや変速タイミング変速スピードもスポーティなものとなります。このモードで走ったときには気持ちのいい加速とハンドリングを楽しめます。もっとも柔らかなコンフォートは見事なほどにコンフォートな乗り心地となり、かなりゆったりとした走りになります。
このダイナミックセレクトはクルーズ・コントロール時のレーンキープ機構にも影響します。スポーツ+モードで走っている際に、ちょっと硬すぎるなと思ってコンフォートにすると乗り心地自体はよくなりますが、レーンキープでの追従性はダウンしてしまうので、それまで車線内を走っていても同じペース同じ回転半径でも車線内に収まりきらないことも起きます。
AMG C43 4マチック カブリオレの価格は1023万円です。Sクラスでもっともリーズナブルなモデルが1116万円ですから、ほぼ同レベルと言っても過言でないでしょう。圧倒的存在感のあるSクラスとほぼ同価格のコンパクトなカブリオレ、しかしその中身はパワフルでスポーティなもの。これを選ぶのは相当に贅沢でかっこいいと思います。
(文・写真/諸星陽一)