民間でのロケット開発も進んでいるようで、アポロの時代からは身近になったとはいえ、まだまだ庶民にとっては夢のまた夢の宇宙旅行。
1969年、初の有人による月面着陸という偉業を達成したアポロ11号。着陸をめぐってのうんぬんについては、真偽の定かでないねつ造説も飛び交ってますが、興味のある方はご自由に検索ください(笑)。
さてその着陸の際、ルイ・アームストロングが発した「ひとりの人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な一歩である」は、現在でも語り続ける名言ですが、その後、アームストロングさんより遅れること2年、月面に“一歩を刻んだ”タイヤがあったことをご存知でしょうか?
それは、着陸した探査機のタイヤ、1971年にグッドイヤー社が開発した、通称「ムーンタイヤ」なんです。
やり直しなどできない、本番一発勝負の環境下、タイヤが原因による探査機のトラブルなどあろうものなら、アメリカ宇宙工学の恥、いや人類にとっても忘れ得ぬ汚点となったハズですから、開発陣の緊張感とプレッシャーは並大抵ではなかったことは想像に難くありません。
まず、月面の過酷な温度変化に対応する必要がありました。
月面は、陽のあたる場所で摂氏150度、日陰ならマイナス120度にもなってしまう、超がつく過酷な環境。当然、地球上にあるゴム素材でその温度域に対応した素材はありません。
そこでNASAとともに共同開発!(このフレーズ、男ゴコロを刺激します)
当時の最先端技術で精製された、新たなゴムを開発。打ち上げ時に万が一の出火をふせぐため、注入されたのは空気ではなく、難燃性の窒素。これは空気の漏れを防ぐ効果もあったとか。
この窒素注入、現在ではガソリンスタンドやカーショップで取り扱っている、非常に身近な存在ですが、まさか月面タイヤがルーツのテクノロジーだったとは!
こうして、“ツキ”ではなく、エンジニアの努力によって人類史上で唯一、月面を走ったタイヤが生まれたのです。
満月の夜、丸いお月様に、タイヤのシルエットを重ね合わせながら、グッドイヤーの果てしないチャレンジに思いをはせてみるのもいかがでしょうか。
月面に残されたトレッドパターンは知るよしもありませんが、きっと月夜のうさぎは知ってると思いますよ。
※写真は日本グッドイヤー株式会社のホームページより(http://www.goodyear.co.jp/universe/)
(畑澤清志)