目次
■エクストレイルの内外詳細を見る
リアル試乗・エクストレイル第9回は、車両内外の利便性がいかほどのものかを見ていきます。
まずは運転席まわりから。
●運転席まわり
・インストルメントパネル
歴代同様、計器盤(以下インパネ)の見える部分、手の触れる部分はオールパッド仕立てで、先代からチラ見せし始めていたプレミアム感をさらに押し進めた感じがします。
上下に薄く見えるのはアームレスト高さそのままのコンソールが水平のまま空調パネルまで伸びてきていることによる目の錯覚。
写真で見るとセンターのナビ画面が飛び出していて、前方視界の規制(設置物がガラス内に入り込んではならない)に引っ掛かりそうですが、着座高さとよく併せて考えられており、少なくとも身長176㎝の筆者の視線では問題なし。ガラス下端のハシからハシまでがモニターに遮られるようなことはありませんでした。
・メーター(アドバンスドドライブアシストディスプレイ)
低廉寄りS/S e-4ORCEはセンターにカラー液晶を備えた指針式が与えられ、中間X/X e-4ORCEと最上級G/G e-4ORCEは、12.3インチ全面液晶のメーターで装います。
本名は「アドバンスドドライブアシストディスプレイ」で、S/S e-4ORCE用は「7インチカラーディスプレイ」、X/X e-4ORCE、G/G e-4ORCE用は「12.3インチカラーディスプレイ」に区分けされています。
全面液晶式は何でもかんでも自在に表示できるぶん、アダプティブクルーズを使っているときなどは煩雑に感じるし、燃費情報も多彩で、半面、いささか情報過多だと思いますが、切り替えなければいい話だし、中には情報種類の表示/非表示を選べるようにもなっているので、要は使い方次第かなとも思います。
煩雑に感じるのは、どの分野の表示はどの辺にというゾーン分けがされていないこと、「READY」「e-Pedal OFF」などのマークが小さいなどが理由かと思われます。
CX-60のように文字の大中小を選べるなど、全面液晶ならではのメリットを存分に活かしたプログラムであれば見やすくなるでしょう。
表示デザインは2つあり、左には下部に電池残量計を備えるパワーメーター、右には下に燃料計を擁した速度計を表示する「クラシック表示」、パワー計、速度計を左右に押しのけて先進デバイス他、多彩な情報の表示エリアを中央にめいいっぱい広げる「エンハンス表示」の2種。
表示項目の詳細は「メーター編」をごらんください。
・ヘッドアップディスプレイ
フロントガラスにメーター機能の一部を投影する機能は、自動車用として世界初で日産自動車が実用化し、1987年に技術発表した後、まず1988年にS13シルビアに初搭載しました。S13のまとめ役だった川村紘一郎さんは、次に受け持ったU13ブルーバードでも起用、別のひとが引き継いだS14シルビアにも与えられという具合に、ヘッドアップディスプレイは日産が老舗です。
狙いは視線の移動距離が少なくてすむこと、そして遠くを見るときの焦点のまま情報が得られることのふたつ。
S13では車速を映すだけでしたが、U13ではターンシグナルやブレーキ/半ドア警告、マスターワーニングなどを追加、S14では自動輝度調整が加わるなど、順次進化してきた歴史があります。
で、エクストレイルのヘッドアップディスプレイ。
2020年代のこと、ごらんのとおり表示は多彩で、車速、速度標識、ナビ表示、メッセージ、プロパイロット状態表示、警告文を表示。軽自動車にすら備わる時代なので、老舗といえど、さすがにS13時代ほどの新鮮味は感じません。
もちろん不要なときは消すことも可能です。
・ステアリングホイール
左右にスイッチ、中央にエアバッグ&ホーンスイッチを内蔵したまんまるパッドを備えた3本スポーク型。
気づけばエアバッグ入りパッドもずいぶん小さくなったものよ。エアバッグ初期はメーター視認性に影響を与えるのではないかという声もあったほどパッドが大きかったものです。
全機種本革巻きで、いつの間にか広まった、下部が直線になったD字形状型。D型にする本当の理由は知りませんが、たぶんハンドルを下げた位置でもひざ上空間および乗降スペースを確保したいためかと推測します。
輪っかの一部がストレートになったところで操作に違和感はありません。
・ステアリングスイッチ(アドバンスドドライブアシストディスプレイ)
こちらも「メーター編」で触れていますが、ここでもう一度。
ハンドル左に備わっており、メーター表示の切り替えや項目選択に使います。
中央のダイヤルスイッチは「上下まわし」と「押す」を兼ねており、「上下まわし」で項目選択、押して「決定」。
メニューの選択項目の中に「戻る」を置いてのボタン押しで「戻る」のではなく、ボタンのほうにきちんと「戻る」を置いたのは使いやすい・・・のですが、使いやすい中にも使いにくさがありました。理由はカーソルの上下と左右の移動の操作が別にしているためで、ダイヤルはそのままに、囲みボタンも上下にボタン機能を付加してくれればいいと思いました。動かない上下部分に何度も触れてしまったものです。
ショートカットメニューのボタンをきちんと専用に置いたのは親切。押すと使用頻度の高いメニューが表れます。こちらは「メーター編」で解説済み。ごらんあれ。
・ステアリングスイッチ(プロパイロット関連)
「プロパイロット編」で書いたことをもう一度。
ハンドル右スポークにはプロパイロット操作スイッチがまとめられています。
いちばん右に「プロパイロットスイッチ」、その左は上下のシーソースイッチになっていて、下が「SET-」、上に「RES+」。シーソースイッチそのものを押すとアダプティブクルーズ走行を一時解除する「キャンセルスイッチ」で、プロパイロットスイッチの下は「車間設定スイッチ」。
左右スポークにスイッチを占領されるとホーンスイッチは中央にとどまららずを得ず、ホーンを鳴らすには10時10分なり9時15分なりの位置から中央に手をもっていかなければならないのはハンドルスイッチ全盛時代の悩み。やたら鳴らしちゃいけないのはわかっちゃいるけど、鳴らすことで事なきを得ることが多いのも事実で、手を動かす時間のあるなしの差は大きい・・・何かいい方法はないものかと、外野のくせにもっか思案中なのであります。
・パワースイッチ
インテリジェントキーのリモコンを携帯の上、ブレーキペダルを踏みながら押すとe-POWERシステムが起動して走行待機状態に。ペダル踏まずで押すと、ドアミラーやオーディオなどが使えるACC状態のOFFと本当のOFF、ONのモードが繰り返されます。
乗っている間じゅう、さすがにどうかねと思ったのがスイッチの場所。センターのもの置きトレイの右奥にあります。使用頻度が低くない割に、ちょっと手の届きにくい位置にある。何か理由があってのことかもしれませんが、もっと近場のハンドルすぐ左にあるほうが操作性はいいと思います。
ところで最近Youtubeで、あるタイヤ屋さんの駐車場で高齢者が軽自動車を暴走させ、すきを見て店員が運転席ドアを開けて何とか停止させようとしている動画を見ました。
結局惨事は免れず、暴走車は好き放題に周囲車両にドッシャンガッシャンやっていましたが、シリンダーにキーを差し込む旧来の方式ならともかく、エンジン(パワー)始動を電気的に行うボタン式なら、いっそハンドル左右に備えてもいいのではないか。暴走車の場合、調べたらスイッチはシフトレバー右にあるクルマで、つまりはハンドル左にあるクルマでした。先の事故例で、もしスイッチがハンドル右にもあったなら店員もエンジン停止できたはずです。
しかし、現状はエンジン始動ボタンがハンドルの右にあったり左にあったりで各社各車バラバラのまま。エクストレイルの場合、2秒以上またはすばやく3回押すとe-POWERが緊急停止するロジックが組み込まれているし、他のクルマも似たようなロジックになっていますが、いざというとき外からも手が下せるよう、始動スイッチはハンドル左右にあっていいと思います。
何だったらどこかの外板の裏にスイッチをしのばせ、そこにライダーキックかましたら停止するようにしたっていいと思ったくらいで、まあそれは極端にしても、このような事例を目の当たり(動画ですが)にすると、中からはもちろん、外からも緊急停止できるような措置がそろそろ必要なんじゃないかなァと、ちょっと考えさせられた次第・・・
<オートACC>
長ったらしく固い話をした後でオートACCの話。
さきほど「ACC状態のOFFと本当のOFF」と書きましたが、最近の日産車では、パワーをOFFにしてもナビ/オーディオ、ドアミラーといった電装品が使うことができる「オートACC」が組み込まれています。
以下のときに自動でACCに切り替わります。
・リモコン(インテリジェントキー)で施錠または解錠したとき。
・パワースイッチをOFFにしたとき。
・ドアを開けたとき。
・ドアを閉めたとき。
完全停止は次のとき。
・ACC状態のまま約11分が経過したとき(工場オプションナビ非装着車)。
・ACC状態のままナビ操作を行わずに約11分経過したとき(工場オプションナビ装着車)。
・e-POWERシステム停止後、リモコン(インテリジェントキー)で施錠後、約1分経過したとき。
工場オプションナビ装着車はパワーOFF後、約10分間を経ると画面が消灯&作動停止、10分経たなくともパワーOFF後に運転席ドアを開くとナビ画面が消えるなど、いくつか付随機能があります。覚えきれるかな?
・ワイパー&ウォッシャースイッチレバー
どのクルマとも同じ操作様式。
レバーを定位置OFFから上保持でその間だけワイパー作動。下に下げるごとに間隔時間調整付きの間欠、低速作動、高速作動。レバー手前引きでワイパー連動のウォッシャー噴射。時間調整はレバー中腹のスイッチ上下でどうぞ。
先端はリヤワイパースイッチで、先端ノブを上にまわすごとに固定間欠、定速作動(低速じゃないよ!)。フロントワイパー作動中にシフトをRにするとリヤワイパーも作動するリバース連動機能がついていますが、煩わしければ機能OFFも可能です。
最近の日産車は、スイッチを入れるとどのポジションに入れたのかを数秒間メーターにガイダンス表示し、「フロントワイパーガイダンス」では間欠時間まで表示するばかりか、リヤワイパーの分まで表示。これも煩わしければ設定でOFFにすることができます。
・ターンシグナル&ライトスイッチレバー
「ライト編」の繰り返しになりますが、レバー上下で左右ターンシグナル、向こう押しで手動ハイビーム、手前引きでパッシング。ライトスイッチAUTOのレバー定位置でアダプティブビームが作動。
ライトスイッチは、夜間のパワーONでライトが自動点灯するAUTOを定位置に、手前まわしチョンでスモール落ち、1秒以上保持で全消灯。先端にはアダプティブビーム作動のON/OFFスイッチがついています。
工場オプションのリヤフォグランプ付の試乗車の場合、前後フォグランプは常に中央が定位置となるスイッチで行い、上にチョンするごとに車幅灯+フロントフォグがON/OFF、ヘッドランプ点灯中に下にチョンするたびにリヤフォグがON/OFFを繰り返します。ややこしいですが、これはフロントフォグにしろリヤフォグにしろ、それぞれを単体で点灯させることは保安基準上できないためです。
こちらもワイパーと同じく、ライトスイッチを操作するとメーター内に、いま操作した項目がガイド表示されます(ライトモードガイダンス)。
・運転席右スイッチ群
上段左からダミー、ヘッドアップディスプレイスイッチ、ハンドル支援スイッチ、トリップリセットスイッチ。その隣のダミーは、本来マニュアル式のライト光軸レベライザーのスイッチがはまる場所です。
下段に目を落として左から、1番目は何かのダミー、バックドアの電動開閉スイッチ、100V AC電源のメーンスイッチ、メーターの照度調整スイッチがずらり・・・ハンドル輪っか&右スポークに一部が隠れているのが難点ですが、いったん調整したら、あるいはONにしたらそのままにしておいたほうがいいようなものばかりなので特段問題はなさそうです。
・インテリジェントキー
日産のリモコンは、長いことラグビーボール型かアーモンド形をしており、筆者がティーダに乗っていたときはポケットの中でもかさばらなかったので気に入っていましたが、いつの間にかこのような形状になっていました。大きさは変わらないので多少角ばってもかさばらなかったことには違いありません。
試乗車はオートバックドアが標準なので、ドアのロック、アンロック、バックドア開閉のボタンが3つ。ほかにいまや運転席ドアにしかなくなったキーシリンダー使用時のためのメカニカルキーが内蔵されています。
おっと、液晶面が尽きました(「誌面が尽きた」のウェブ版)。
液晶だから尽きるはずはないのですが、運転席まわりの話はまだ続きます。
次回、「ユーティリティ・運転席まわり 後編」でまた。
(文/写真:山口尚志 モデル:星沢しおり)
【試乗車主要諸元】
■日産エクストレイル G e-4ORCE アクセサリー装着車〔6AA-SNT33型・2022(令和4)年7月型・4WD・ステルスグレー&スーパーブラック2トーン/ブラック内装〕
★メーカーオプション(税込み)
・アダプティブLEDヘッドライトシステム(オートレベライザー付):3万3000円
・クリアビューパッケージ(リヤLEDフォグランプ):2万7500円
・BOSE Premium Sound System(9スピーカー):13万2000円
・ステルスグレー/スーパーブラック 特別塗装色:7万7000円
・ルーフレール+パノラミックガラスルーフ(電動チルト&スライド、電動格納式シェード付):18万1500円
★販社オプション(税込み)
・グリルイルミネーション(インテリジェント アラウンドビューモニター付車用):6万3840円
・日産オリジナルドライブレコーダー(フロント+リヤ):8万6302円
・ウインドウ撥水 12ヶ月(フロントガラス+フロントドアガラス撥水処理):1万1935円
・ラゲッジトレイ:1万7800円
・デュアルカーペット:3万9800円
・滑り防止マット:1980円
・アドベンチャーズパッケージ(リモコンオートバックドア・インテリジェント アラウンドビューモニター付車用):16万3118円(セット内容:フロントアンダーカバー、リヤアンダーカバー、フロントバンパーフィニッシャー(ブラック))
・フードディフレクター:2万9800円
●全長×全幅×全高:4660×1840×1720mm ●ホイールベース:2705mm ●トレッド 前/後:1585/1590mm ●最低地上高:185mm ●車両重量:1880kg ●乗車定員:5名 ●最小回転半径:5.4m ●タイヤサイズ:235/60R18 ●エンジン:KR15DDT型(水冷直列3気筒DOHC) ●総排気量:1497cc ●圧縮比:8.0-14.0 ●最高出力:144ps/2400-4000rpm ●最大トルク:25.5kgm/2400~4000rpm ●燃料供給装置:ニッサンDi ●燃料タンク容量:55L(無鉛レギュラー) ●モーター型式(フロント):BM46 ●種類:交流同期電動機 ●最高出力:204ps/4501-7422rpm ●最大トルク:33.7kgm/0-3505rpm ●動力用電池(個数/容量):リチウムイオン電池(-/-) ●モーター型式(リヤ):MM48 ●種類:交流同期電動機 ●最高出力:136ps/4897-9504rpm ●最大トルク:19.9kgm/0-4897rpm ●動力用電池(個数/容量):リチウムイオン電池(-/-) ●WLTC燃料消費率(総合/市街地モード/郊外モード/高速道路モード):18.3/16.1/19.9/18.4km/L ●JC08燃料消費率:-km/L ●サスペンション 前/後:ストラット式/マルチリンク式 ●ブレーキ 前/後:ベンチレーテッドディスク/ベンチレーテッドディスク ●車両本体価格:478万8700円(消費税込み・除くメーカーオプション)