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■あの大雪を対岸の火事だと余裕をかましていた男は、東京に帰れたのか?
●RR車のルノー・トゥインゴ、小さいけれど山登りは得意です
こんにちは。東京で車を買っちゃったライター、半澤です。
突然ですが皆さん、趣味はありますか? そう聞かれてすぐに答えを雄弁に語れる人は意外と少ないのではないでしょうか。
ボクもこの質問に対して映画・ドラマ鑑賞とか、読書とか、油断するとそういう当たり障りのない回答をしてきた人間の一人ですが、今年から、明確な趣味が生まれました。
そう雪山に行くこと、スキーです。
10代後半からスポーツらしいスポーツもしないし、長年にわたりインドア派を公言していたので自分でも完全に忘れていたのですが、幼少期から中学生まで真面目に競技スキーをやっていたため、実は普通にスキーが滑れます。
昨年、たまたまスキーに行く機会があり、こんなに雪山って楽しいんだっけ?と、ときめいてしまい、齢40歳にしてまさかのスキー参戦を決定。今シーズンからゲレンデ復帰を果たすことになりました。
四半世紀にわたり雪山に行くことなかったので、現在の愛車、ルノー・トゥインゴを購入する際も雪山想定を全くしていませんでした。
でも雪山のイメージがあまりない、これぞ街乗り車という見た目のトゥインゴ、実はリアエンジン・リアドライブ車、いわゆるRR車なんですよ。アクセルを踏むと後ろから押される感覚もあるため、けっこう峠道が得意なのです。
900ccながらパワーもあるし、後部座席を倒せばスキーも積めるので、スキー場に行くのにも活躍しています。
前回は車の冬装備を購入したという話を書かせてもらいましたが、これらも全て雪山に行くため。幸い、これまではチェーンを巻くような機会もなくスタッドレスタイヤだけで十分、安心・快適なカーライフを送っていたのですが…。
●スキー初日は晴れ間ものぞく、心地よいスキー日和だったんですが
そう、今回の記事も友だちと車で雪山行って楽しかったよ。スキー最高、スキー場までストレスなく連れてってくれるトゥインゴありがとう!という、和やかで楽しいレポート記事になる予定だったんですよ。
ですが、正直地獄を見ました。ことの顛末を語らせていただきますね。
今回、友人Hさんと出かけることになったのは2月4日(日)~5日(月)。長野のスキー場に一泊し、翌日もスキーを満喫して帰ってくるというプランでした。日曜発のため関越道も上信越道もスイスイ。こんなにスムーズでいいの?っていうくらいサクッとスキー場に到着しました。
雪は積もっていたけれどチェーンを履く必要もなく、トラブルもストレスもゼロ。スキー場も空いていて、わあ、これは賢いプランを組めたねと友人と笑いながらゲレンデの時間を過ごしていました。スキーの記事を書く仕事もあるのでパシャパシャご機嫌に写真を撮り、スキー自体も楽しんでと、今から考えればかなり調子乗っていましたね。
この「2月5日」という日にちを見てすでに「あちゃー」と思っている方もいらっしゃるでしょう。そうです、この男が浮かれてスキーを楽しんでいる翌日は、大雪警報が出て関東、上信越エリアが大騒ぎになったあの日なのです。
それなのにボクたちは4日の夜、お酒を飲みながら、「羽田空港発着便が翌日、欠航を決めた」というニュースを対岸の火事として悠長に眺めていました。今から考えると信じられないですが、正直、翌日雪がたくさん降るのはラッキー!なんて言いながら気持ちよく眠りについたわけです。
●2月5日はどこもかしこも大雪、果たして東京に帰れるのか?
明けて2月5日です。朝イチからゲレンデに向かい、楽しく滑っていました。確かに雪、すごい降ってるなあ、とは感じてはいたんですよ。
それが、10時を過ぎた頃から明らかに大雪に。リフトに乗っているだけでも、全身に雪が積もって真っ白という状況でした。でも、恐ろしいことに早く帰らなきゃという頭はまだなかったんです。高額な一日券を買っているし、むしろ良い雪がたくさん降ってきたので、ここで退散するなんて発想は皆無でした。
びっくりすることにボクたちはその日の朝、「大雪が降る前に首都高が閉鎖」というニュースをまだ他人事として見ていました。首都高に乗らないから大丈夫、東京は雪に弱くて困るね、くらいの気持ちで、入り口が封鎖された首都高の映像を眺めていたんです。
冷静になれば、高速が閉鎖された厳戒態勢の街に帰る自分たちに関係ないはずなどないのですが、その報道を自分ごととは思っていませんでした。
もう疲れたし、東京戻ってからもどこか飲みに行けるのではくらいの気持ちで、スキー場を後にすることにしたのが14時のこと。着替えたり雪おろしをしていたため、出発したのは15時すぎでした。普通なら3時間半くらいで東京に戻れるので、多少遅れが出たとしても19時、20時には東京に着くはず。
けれど、これこそかなり甘い見積もりでした。
過酷な現実を知ったのは運転してすぐ、山を下っているときのこと。道路情報を見てくれていたHさんの顔が曇りました。なんと、すでに上信越道、関越道に通行止めが多数、高速道路では東京に帰れないことがわかったのです。
●軽井沢一泊が決定、そしてまさかのトラブルが!
とにかく行けるところまで移動しようとなり、長野県内を南下。高速道路は50km/h規制で、チェーン規制こそないものの、冬タイヤじゃないと走れないという状況でした。
サービスエリアに行くと、通行止めエリアがさらに拡大していたことが判明。これは、もう腹をくくるしかないとなり、軽井沢までは行けそうだったので、軽井沢に宿をとりました。まさかの追加一泊、大雪のなかの軽井沢行きということで、もう、これだけでもえらい騒ぎなのですが、ここからさらに大きなトラブルが。
高速道路を降りて、なんてことのない坂道を登ろうとしたところスリップしてしまったのです。いやあ、これは本気で焦りました。車のコントロールが効かずまったく動かなくなり、アクセルを踏んでもタイヤは空回り。友人が車を押してくれ、本当に少しずつ前進し、近くのホテルの駐車場に停めさせてもらい、ここでチェーンを巻かせてもらいました。
チェーンを巻くのも練習はしていたつもりでしたが、うまく装着できずHさんが大活躍。とっさのスリップと不慣れなチェーンで心が折れたボクは、雪道経験豊富な友人に運転を代わってもらうことになりました。まじで、役立たずだなあ…本当に落ち込みましたね。
いやあ、車を購入して以来、最大のピンチでした。1人であの状況になったらロードサービスを呼ぶ以外に手はなかったろうし、事故につながらなかったことだけが、不幸中の幸いだったと思います。
そこそこ広い道で後続車に迷惑をかけながらも、なんとか左に車を寄せられたのも救いでした。でも、スリップなどのあらゆるランプが点滅しまくり、頭はずっとパニック状態でしたね。チェーンを持っていたことで一応、ことなきを得ましたが、スリップ時や緊急時にどうすればいいかは、改めて頭に入れておかないとなあ。
この連載では過去に四国に車で行った記事も書かせてもらっていますが、そういう経験もあり、ロングドライブや知らない道を走ることにも「慣れているつもり」だったので、今回のトラブルはとても大きな反省になりました。また何より、大雪はずいぶん前から天気予報でわかっていたこと。そもそも旅程を考え直す必要があったのかもしれません。
少なくとも「羽田欠航」「首都高閉鎖」の報道を見た段階で、東京への帰り方、帰る時間をしっかり検討しておく必要があったでしょう。今となっては後悔と反省ばかりなのですが、大雪を「対岸の火事」と思っていたあの状況こそ異常。人間の感情の恐ろしさ、コントロールできない欲望の怖さを感じましたね。
自分に限って辛い想いをするわけはない、被害に遭うはずはない、そんな慢心が生んだトラブルでもあったなあ。車を運転する人間として、大きな戒めとなる忘れられない出来事でした。
うわあ、自分でもびっくりするくらい、長い反省文、書いてる! いやあ、でも本当に気をつけないとねえ!
次回、第27回【ディーラーへ行ってみた編】。いきなりですが次回は最終回。ディーラーに行って「あの車」について聞いてきます!
(半澤 則吉)