■速さも運もあった埼玉トヨペット GB GR Supra GT4
2023年10月22日(日)の午後に、岡山国際サーキットで開催された「ENEOS スーパー耐久シリーズ2023 Supported by BRIDGESTONE 第6戦 スーパー耐久レースin岡山」のGr.1決勝レース。
Gr.1とは、スーパー耐久でも特に速度域の速いST-X、ST-Z、ST-TCR、ST-1、ST-2クラスを指す予選でのクラス分けとなりますが、コース幅の狭いスポーツランドSUGOと岡山国際サーキットでは、決勝レースもこのクラス分けで行われます。
Gr.1レースでも特に参戦台数の多いST-Zクラス。FIA-GT4マシンを使うこのクラスは、なんと11台のエントリーで、スーパー耐久全体でも1500ccクラス相当のST-5クラスの13台に次ぐエントリー台数となり、世界的にも盛況と言われるGT4レースの片鱗を垣間見せます。
そのST-Zクラスで今季、かなりの強さを誇っていたのが、埼玉トヨペット GB GR Supra GT4。第2戦SUPER TEC富士24時間レースを含め、開幕から3連勝、その後も全戦で表彰台を外さないという強さで臨んだ第6戦岡山。
ポイントは、第5戦もてぎ終了時で144ポイントで、ランキング2位につけるシェイドレーシング GR SUPRA GT4 EVOの107ポイントに37ポイント差をつけており、埼玉トヨペット GB GR Supra GT4は表彰台に乗ったうえで、シェイドレーシング GR SUPRA GT4 EVOの前でゴールすれば、最終戦を持たずにチャンピオンが確定するという状況でした。
予選2番手からスタートした埼玉トヨペット GB GR Supra GT4。順調にこのポジションをキープすればチャンピオンか!?と思われた矢先に、とんでもない番狂わせが起こります。
Aドライバー予選不出走で最後尾スタートだったPorsche EBI WAIMARAMA Cayman GT4 RS CSが、スタートドライバーの千代勝正選手のドライブにより、スタートから1時間も立たないうちにST-Zクラスだけも10台を抜きでトップに立ってしまうのです。つまり、埼玉トヨペット GB GR Supra GT4は3位となってしまいます。
この状態で、ピット作業のタイミングで順位が1つでも下がろうものなら、チャンピオン決定は最終戦の富士に持ち越しになってしまいます。
そんなハラハラした状況ですが、Porsche EBI WAIMARAMA Cayman GT4 RS CSはピットインでドライバーチェンジ、タイヤ交換、給油と行う際に、オフィシャルから油漏れを指摘され、この修復が出来ずにレース続行を断念。リタイアとなってしまいます。その後の確認によりミッショントラブルによるオイル漏れと判明。
このPorsche EBI WAIMARAMA Cayman GT4 RS CSのリタイアにより、再び2位のポジションを取り戻した埼玉トヨペット GB GR Supra GT4。ピット作業もそつ無くこなし、ポジションをキープ。キープと言ってもそのペースは速く、3位を走行するシェイドレーシング GR SUPRA GT4 EVOは一向に追いつく気配を感じさせません。
そしてスタートから3時間経過、2位でチェッカーを受ける埼玉トヨペット GB GR Supra GT4。この時点でST-Zクラスのチャンピオンが決定しました。
ピットでは歓声が上がり、ドライバーやメカニック、スタッフは喜びをかみしめながら抱き合います。
今年から埼玉トヨペット GBのチームに加入して、埼玉トヨペット GB GR Supra GT4のドライバーとなった山崎学選手も喜びの涙を流します。
埼玉トヨペット GBは、2015年にマークXでスーパー耐久のST-3クラスに参戦。2019年にはランキングトップと同一ポイントながら、優勝回数の差でランキング2位となってしまうこともありました。
そして、2020シーズンでクラウンRSにマシンをチェンジし2022シーズンまでST-3クラスで活躍します。その2022年のランキングは2ポイント差で2位。
そして、2023年の今年、ST-Zクラスへクラスを変えて挑んだシーズンで初めてのチャンピオンとなったのです。
●スーパーGTでもチャンピオンに王手! 史上2番目のスーパーGT、スーパー耐久のダブルチャンプも見えてきた
埼玉トヨペット GBは今季、スーパーGTでも埼玉トヨペットGB GR Supra GTで大活躍を見せています。
第7戦オートポリスでは、20周弱に及ぶ1秒以内での大接戦に勝利し優勝を決め、ランキング2位との差を20ポイントとしています。
これにより、最終戦もてぎでランキング2位のチームがポールポジションを獲れなかった場合は、その時点で埼玉トヨペットGB GR Supra GTがチャンピオンとなります。
2017年に埼玉トヨペットGreenBraveマークX MCとしてスーパーGTにデビューして以来の、初のチャンピオンが手に届く位置まで来ています。
スーパー耐久とスーパーGTの両方で同一シーズンにチャンピオンを獲得したチームは、2012年のENDLESS以来、11年ぶりという快挙となります。
そのためにも、最終戦もてぎでは確実にチャンピオンへの道を歩んでいただきたいと思います。
(写真・文:松永 和浩)