量産ロータリー第4弾、マツダ「カペラ」デビュー。12Aエンジン搭載車は69.8万円で最高速度は190キロ【今日は何の日?5月13日】

■ロータリー車を基軸に、ガソリン車も設定

1969年にデビューしたカペラ。ロータリー車とガソリン車を設定
1969年にデビューしたカペラ。ロータリー車とガソリン車を設定

1970(昭和45)年のこの日、マツダ(当時は東洋工業)からロータリーエンジン搭載車「カペラ」が発売されました。

世界初のロータリーエンジンの量産化をこの年の3年前に果たしたマツダが進めていた、ロータリーフルラインナップ戦略の第4弾ですが、ガソリンエンジン搭載車も設定されました。


●世界初の量産ロータリー搭載車コスモスポーツの誕生

1967年に誕生した量産初のロータリーモデルのコスモスポーツ
1967年に誕生した量産初のロータリーモデルのコスモスポーツ

振り返れば1967年、東洋工業から世界初のロータリーエンジン量産車「コスモスポーツ」がデビューしました。ロータリーエンジンは、おむすび型のローターが回転して動力を発生する画期的な機構のエンジンであり、量産化に成功したのはマツダだけでした。

1968年発売のファミリアクーペ
1968年発売のファミリアクーペ

コスモスポーツは、「走るというより、飛ぶ感じ」のキャッチコピーを体現するような、流線形のシャープなフォルムのスポーツカー。最高出力110PSを発揮するロータリーエンジンを搭載し、最高速度185km/h、ゼロヨン16.3秒という圧巻の走りを誇り、パワフルなロータリーエンジンをアピールしました。

その後、マツダはロータリー搭載車のラインナップ展開を図り、第2弾「ファミリア」、第3弾「ルーチェ」を展開。これに続いたのが、第4弾のカペラだったのです。

●圧倒的な動力性能で特に米国で人気を博したカペラ

“風のカペラ”というキャッチコピーのカペラは、ジェット機を意識したウェービングラインを取り入れながら、ロータリーの力強さをアピールするため、角型ヘッドライトや骨太のリアクォーターピラーを採用しました。

スタイリッシュな2ドアクーペのカペラ。ノッチバックの4ドアセダンも用意
スタイリッシュな2ドアクーペのカペラ。ノッチバックの4ドアセダンも用意

パワートレインは、最高出力120PSを発揮する12Aロータリーエンジンおよびガソリンエンジンと4速MTの組み合わせ。

12Aはファミリア用の10A型ロータリーの排気量をローターハウジングの厚さを10mm拡げることで拡大し、単室容積を573ccとし、総排気量は2ローターなので1146ccとなります。一方のガソリンエンジンも、1.6L直4 SOHCで最高出力100PSを発揮する高性能エンジンでした。

セダンの車両価格は、ガソリン車が56.0万円、ロータリー車が69.8万円と、ロータリー車が13.8万円ほど高く設定されました。

最高速度は190km/h(ガソリン車は、165km/h)で同クラスの中で圧倒的な動力性能を誇り、日本でも人気を博しましたが、特に米国では高速のスムーズな加速性能が評価されて大ヒット。カペラは、マツダが世界に向けて本格的に輸出を始めたクルマだったのです。

●排ガス規制とオイルショックで大きな打撃を受けたロータリーエンジン

2003年に登場して2012年に生産終了となったRX-8
2003年に登場して2012年に生産終了となったRX-8

カペラに続き1971年には「サバンナ」を発売してロータリーフルラインナップ戦略は大成功と思われましたが、突然逆風が吹き荒れました。

それは、1973年に起こったオイルショックと厳しい排ガス規制(マスキー法)でした。特に燃費と排ガスが課題であったロータリー車は、一般のガソリン車以上の大打撃を受けて、販売が一気に低迷したのです。

その後も、マツダはロータリーの燃費と排ガスを改良して「コスモAP」や「RX-7」などのロータリー車を送り出しましたが、2000年を迎える頃には対応が困難になり、2012年「RX-8」の生産終了をもって、ロータリー車は市場から完全にフェードアウトしました。


マツダが対米輸出を開始したのは1970年で、その先陣を切ったのがカペラです。優れた高速性能から「インポートカー・オブ・ザイヤー」を受賞するなど高い評価を受けていましたが、オイルショックと排ガス規制が課せられると、排ガスと燃費がレシプロエンジンより劣っていたカペラの人気は、一気に減速したそうです。

毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれません。

Mr.ソラン

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Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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