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■MIVECとマグネシウムコンプレッサーで、高出力と高レスポンスを実現した第9世代ランエボIX
2005(平成17)年3月2日、三菱自動車から「ランサーエボリューションIX」がデビューしました。
最大の特徴は、名機4G63ターボエンジンにMIVEC(連続可変バルブタイミング機構)を採用し、ターボのコンプレッサーホイールをマグネシウム化するなど、高速性能とレスポンスを向上させたことです。
ランサーエボリューションは、今後こういった車両が発売される可能性の低さから中古車価格は常に高値をキープしており、中には1000万円近くの値付けで取引されているケースもあるようです。
●ランエボの初代~第8世代まで
ランサーエボリューション(以下、ランエボ)は1992年9月に初代が誕生し、最大の武器である高性能の4G63ターボエンジンと、優れた走破性を誇る4WDを搭載。
1993年からWRC(世界ラリー選手権)グループAに参戦し、1995年スウェディッシュラリーの初優勝を皮切りに、1990年代後半~2000年代初期にはスバルの「インプレッサWRX」とともにWRCの舞台で大活躍し、その名を世界に轟かせました。それでは、ランエボの歴史を振り返ってみましょう。
・第1ステージ(I、II、III)
ギャランVR-4でWRCに参戦して実績を上げた三菱が、さらに戦闘力を上げるために投入したのが、「ランサーGSR1800」ベースの“ランエボI”でした。
搭載エンジンは、2.0L直4 DOHC(4G63)インタークーラー付ターボで、最高出力250PS・最大トルク31.5kgmを発揮、トランスミッションは5MTのみ、駆動方式はVCU(ビスカスカップリング)付センターデフ式のフルタイム4WDを装備。
1994年にホイールベースを100mm拡大した“ランエボII”、1995年には空力性能を向上させた“ランエボIII”に移行、この時点で最高出力は270PSに向上しました。
・第2ステージ(IV、V、VI、TME)
1996年にベースであるランサーのフルモデルチェンジに対応して“ランエボIV”が登場。エンジンはパワーアップして自主規制値280PSに達し、エンジンを左右逆転させて搭載、初めてAYC(アクティブ・ヨー・コントロール)を採用。
1998年にはワイドボディの3ナンバー化した“ランエボV”、1999年には2段リアウィングなど空力特性の改善と冷却性能を向上させた“ランエボVI”に移行。2000年には、WRCで4年連続ドライバータイトルの獲得したトミー・マキネンの偉業を記念した“トミーマキネンエディション(TME)”が設定されました。
・第3シテージ(VII、VIII、VIII MR、IX、IX MR)
2001年にランサーがモデルチェンジして「ランサーセディア」になったので、ランエボも第3ステージの“ランエボVII”へ移行。翌2002年に初のAT車「GT-A」を追加。
2003年にはフロントマスクの変更とスーパーAYCへ進化したほか、6MTを初採用した“ランエボVIII”が登場。さらに2004年にビルシュタイン製バンパーやアルミルーフを採用した“ランエボVIII MR”が登場しました。
●MIVECの採用とターボ改良でさらに進化した第9世代
そして2005年のこの日、”ランエボIX“が登場しました。先代VIIIで不評であったダイムラー・クライスラー出身デザイナーの「ブーレイマスク」を一新して、冷却性に優れたシンプルなフロントマスクに変更されました。
最大の特徴は、4G63ターボエンジンの吸気側にMIVEC(連続可変バルブタイミング機構)と、ターボチャージャーのコンプレッサーホイールをマグネシウム化するなどして、全域で高性能とハイレスポンスを実現したことです。
その結果、ランエボIXは歴代の中でも高い戦闘力を持ったランエボと評価され、今でも人気モデルとして挙げられています。しかし、WRCで活躍することなく、三菱は2006年以降、WRCから完全に撤退し、ワークス活動に終止符を打ちました。
WRCから撤退した三菱とスバルに対して、復活を望む声は相変わらず大きいですが、両社ともその可能性は低いのでしょうか。企業としてはリソースが最大の問題であるとは思われます。
時代的にもメーカーの独自技術で争い、その技術を市販車にフィードバックするという、かつてのレース参戦の目的が薄れてきたという側面もあるでしょう。ですが、ラリーを通してクルマのいろいろな素晴らしさは伝わってきます。そんなラリーの魅力は廃れることなく日本にもWRCは再来してきているのですが、参戦はトヨタだけ…。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれません。
(Mr.ソラン)