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■ジュニア世界ラリー選手権(JWRC)の実績を引き下げてWRCに挑戦
2006(平成18)年2月28日のジュネーブモーターショーで、スズキは2007年からWRCに本格参戦することを発表しました。スズキは2002年から「スイフト」ベースでJWRCに参戦し、2004年にドライバーズチャンピオンを獲得。満を持して、トップカテゴリーであるWRCへの挑戦を決断したのです。
●スズキのWRC挑戦の歴史
スズキが初めてWRCに参戦したのは、1986年の米国オリンパス・ラリーで、ベースは1.3L直4 SOHC NA(無過給)エンジン搭載の「カルタスGT-i」でした。その後も本格参戦ではないもののWRC参戦を続け、一方1992年からはアジア・パシフィック・ラリー選手権(APRC)にも参戦し、2L以下クラスを何度も制しました。
1996年、ラリーマシンは1.6L直4 SOHCエンジン搭載の「カルタスクレセント」ベースとなり、さらに1.8L直4 SOHCエンジン搭載の「カルタスワゴングループAラリーカー」へと変更。2002年には、WRCに新設されたJWRCに初代スイフトをベースにした「スイフトスーパー1600」で参戦し、2年目の2003年にラリー・フィンランドで初優勝を飾り、2004年には「イグニス(スイフトの海外名)スーパー1600」に切り替えて、JWRCタイトルを獲得します。
2005年からは、2代目スイフトをベースにした新型「スイフトスーパー1600」を投入して無類の強さを発揮、2007年に2度目のJWRCチャンピオンに輝きました。
●2Lターボ搭載のSX4 WRCでトップカテゴリーのWRCに参戦
スズキが2006年のこの日、ジュネーブモーターショーで発表したWRC参戦のために仕立てたマシンは、SX4ベースの「SX4 WRC」です。SX4は、フィアットと共同開発したクロスオーバーSUVで、日本では2006年にデビューしました。
デザインは、イタリア人の巨匠ジウジアーロ率いるイタルデザインが担当、パワートレインは1.6L/2.0L直4 DOHCエンジンと4ATの組み合わせ、駆動方式はFFと4WDが用意されました。
それをベースにハイチューニングされたラリーマシン、SX4 WRCのパワートレインは、最高出力235kW(320PS)/4000~4500rpm、最大トルク590Nm/3500rpmを発揮する2.0L直4 DOHCターボエンジンと5速シーケンシャルトランスミッションが組み合わされ、電子制御のデファレンシャルギアを装着した4WDです。
●リーマンショックなどの影響で、僅か1年でWRC撤退
SX4 WRCは、2007年にテスト参戦、2008年からフル参戦を始めました。2008年のニュージーランドラリーでは6位と7位に入り、いよいよ本領発揮か?と思われましたが、スズキは2008年12月、わずか1年でWRC撤退を決断しました。
2008年にリーマンショックが起こり、世界的な経済不況が起こったことが、撤退の理由でした。この時期は、三菱自動車やスバルのWRC撤退、ホンダのF1撤退など、多くのメーカーが一斉にモータースポーツ活動から身を引いた時期だったのです。
スズキのWRC参戦は、WRCを席巻した三菱「ランエボ」とスバル「インプレッサ」の陰であまり目立ちませんでしたが、スズキのモータースポーツを盛り上げたのは、スイフトスーパー1600とSX4 WRCの2台です。WRCへの参戦がもう5年ほど早ければ、活躍の姿がもっと見られたかもしれませんね。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかも知れません。
(Mr.ソラン)