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■11年ぶりのゼッケン1、世界王者の防衛なるか?
イタリアのバイクメーカー・ドゥカティが、2輪最高峰レース「MotoGP」に参戦するワークスマシン「デスモセディッチGP」の2023年型を公開しました。
2022年シーズンに、ライダー、チーム、コンストラクターズの3冠を獲得、まさにタイトルを総ナメにしたのがドゥカティ。
その2023年型ワークスマシンでは、2022年の年間チャンピオンとなったフランチェスコ・バニャイア選手のマシンに、ゼッケン1を装着していることが注目です。MotoGPでは、長らく、チャンピオンになってもパーソナルナンバーを付ける習慣が続きましたが、約11年ぶりにゼッケン1が復活したことで話題となっています。
2022年シーズンでは、強烈なパワーや先進の電子制御デバイス、車体の至るところに装備された空力パーツなどにより、日本メーカー製マシンを圧倒するほどの性能を発揮したドゥカティのマシン。
果たして2023年シーズンもタイトルを防衛できるのかが注目されます。
●空力パーツで圧巻のフォルム
今回、ドゥカティが公開したのは、ワークスチーム「ドゥカティレノボチーム」が2023年シーズンのMotoGPに参戦するマシン「デスモセディッチGP23」です。2023年1月23日にイタリアで開催されたイベントで披露されました。
写真などをぱっと見た感じは、2022年シーズンのマシンと大きな変更はみられず、相変わらず、車体の前後左右に装着された空力パーツなどにより、迫力あるフォルムが圧巻です。
フロントカウルに装着された大型のウイングはもちろん、サマーブレイク(夏休み)後に開催されたシーズン後半の大会からは、リヤのシートカウルにもウイングを装着。
圧倒的な速さを見せたことから、他メーカーでも採用するマシンが続々と登場し、2022年のトレンドとなったことも記憶に新しいところです。
●ゲーム機のようなスイッチを駆使
ほかにも、ステアリング左側には、まるでゲーム機のコントローラーにあるような3つの丸いボタン型スイッチも装着。
これは、スタート時に前輪が浮くウイリーを防ぐホールショットデバイスや、走行中に後輪の車高を変えることでトラクションをアップさせるライドハイトデバイスなどを操作するスイッチ類でしょう。
今のMotoGPマシンには、さまざまな電子制御デバイスがあり、レース中、状況に応じてそれらの設定を変更しないと速く走れないといいますから、当然、このマシンにもそうしたデバイス用スイッチが付いているようです。
そして、ドゥカティのマシンといえば圧倒的なストレートスピード。
2022年シーズンの第8戦イタリアGPでは、ホルヘ・マルティン選手(サテライトチームのプリマ・プラマック・レーシング所属)が、決勝中に363.6km/hもの最高速度を記録するなど、ドゥカティ製マシンは日本メーカーを含めた他チームのマシンを圧倒しました。
エンジンパワーこそ公表されていませんが、「350馬力近いか、それを超えている」という説もあるほど。本当であれば、まさにモンスターと呼べるマシンだといえます。
●ゼッケン1のなかにある小さな63の意味は?
そんなドゥカティのワークスマシンを駆り、2022年シーズンに年間チャンピオンを獲得したのが、イタリア人ライダーのフランチェスコ・バニャイア選手(21歳)。
2007年のケイシー・ストーナー選手以来、15年振り、2度目のタイトルをドゥカティにもたらしました。しかも、イタリア人がイタリア製バイクで年間王者となったのは、ジャコモ・アゴスティーニ選手以来50年振り。
バニャイア選手の師匠で、9度の世界王者に輝き、2021年シーズン一杯で引退したバレンティーノ・ロッシ選手でさえできなかった偉業を達成しています。
そんなバニャイア選手が2023年にMotoGPに乗るマシンには、久々にゼッケン1が付けられています。
MotoGPでは長らく、年間チャンピオンを獲得しても、翌シーズンに1番は付けず、パーソナルナンバーのままで参戦する習慣が続いており、ゼッケン1を付けたマシンは、2012年にホンダワークスから参戦したケーシー・ストーナー選手以来となります。
ちなみに、バニャイア選手のマシンに付けられたゼッケン1の中には、小さく63の数字も入っています。これは、2022年シーズンまでバニャイア選手が使っていたパーソナルナンバーです。
バニャイア選手によれば、「1番と63番のどちらを付けるか迷った」といいますから、1番を選びながらも、その中に63番を入れることで、両方を使うことにしたようですね。
なお、ドゥカティワークスでバニャイア選手のパートナーとなるのは、2022年シーズンまでドゥカティのサテライトチーム「グレシーニ・レーシング」に所属していたエネア・バスティアニーニ選手(25歳)。イタリア生まれの若い2人のライダーが、ワークスマシンを走らせます。
2022年シーズンは、ワークスとサテライトを合わせ計8台を走らせ、MotoGPでの最大勢力となったドゥカティ。
果たして2023年シーズンもその力を示し、タイトル防衛なるか? それとも、2022年シーズンまで、長年タイトルを獲得してきたホンダやヤマハといった日本メーカーのマシンが巻き返しをみせるのか? 今からとっても気になります。
(文:平塚 直樹)