大型バイクで踏切を渡るときの緊張感はハンパない【バイクのコラム】

■踏切は減りつつあるけれど…

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オートマの四輪であれば不安なく渡れる踏切。滑りやすいレールにライダーは緊張する

渋滞原因のひとつといわれる「踏切」は、長い目でみれば確実に減っています。国土交通省の資料によると、昭和36年度(1961年度)には全国で7万1070か所あった踏切は、令和3年度(2021年度)には3万2540か所でした。約60年で半分以下になったというわけです。

ただし、その資料によると主に減っているのは遮断機のない踏切であって、遮断機のある踏切については、この30年ほどは約3万か所で微減といった状況です。都市部では、踏切をオーバーパスやアンダーパスによってなくすといった工事も実施されていますが、踏切を渡る機会はまだまだなくなりそうにありません。

遮断機が上がっているときに、一時停止をして、列車の接近がないこと、渡った先のスペースがあることを確認、安全な状況で一気に渡るというのが踏切の走り方ですが、じつはバイクには苦手な要素が詰まったシチュエーションでもあるのです。

●足がつかない&前傾姿勢&低速が苦手の3重苦

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愛機「CBR1000RR-R」のシート高は830mm。1速・アイドリングで20km/h前後の速度が出てしまう

とくに筆者の場合は、身長165cmと平均より小柄なため、足つきには自信なし。しかも愛機のホンダCBR1000RR-R FIREBLADEのシート高は830mmと高めなため、一時停止でバランスを崩しやすかったりします。

しかも踏切によっては一時停止の場所に傾斜がついていたりするものですから、立ちゴケの危険性を感じてしまうことも多々あります。事前のルート検索で、踏切があることがわかっているときは、できるだけ避けようという気分になったりもするものです。

また、画像でもお分かりのようにスーパースポーツタイプで、前傾姿勢が厳しいこともあってバランスを取るのは苦手。滑りやすい線路を超えるようなシーンはできれば避けたいのが正直な気持ちです。

さらに、リッタークラスのスーパースポーツには共通でしょうが、全体にハイギヤードなので低速での走行は得意とは言い難い部分もあります。そうした様々な要素もあって踏切への苦手意識が強まっているのです。

とはいえ、ご存知のように踏切が渋滞を生み出している理由のひとつは、線路によって分断されているエリアをつなぐには、踏切を通過するほかないからです。目的地によっては、踏切が苦手だからといって、完全に避けるのは不可能です。

●大型二輪の教習は無駄じゃなかった!

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大型二輪の教習で、波状路や一本橋を練習したことが踏切を渡るときの自信になってくれる

踏切を渡るときに重要なのは、とにかくエンストせず、転ばずに渡り切ること。

そういえば、大型二輪の教習では波状路や一本橋で、そうした走りができるよう練習してきています。

踏切に波状路ほどの段差はありませんが、線路を超えるときに少し腰を浮かせておけばバランスを取りやすいですし、一本橋で覚えた半クラッチやリヤブレーキを使った低速走行のテクニックは踏切でも効果的に使えます。

教習中は、波状路や一本橋のようなシチュエーションはほとんどないのだから教習のための練習であって意味がない、と思ったこともありましたが、じつはリアルワールドで必要なスキルを学んでいるのでした。そう思うと、あれだけ練習したのだから大丈夫、と自信が湧いてきます。

そうはいっても、初めて渡る踏切ではとくに緊張してしまうものです。一時停止から発進するとき、必要以上にエンジンを吹かしてしまうこともありますが、けっしてイキっているわけではなく、単なるビビりから高めの回転でクラッチをつなごうとしているだけです。そんな姿を見かけても、温かい目で見守っていただければと思う次第です。

自動車コラムニスト・山本 晋也

この記事の著者

山本晋也 近影

山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
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