新型トヨタ「クラウンクロスオーバー」の乗降性・取り回し・居住性・積載性を試乗してチェック

■ボディサイズ拡大も最小回転半径は先代と同等レベル

新型クラウンクロスオーバーは、「TNGA」プラットフォームの「GA-K」が、同モデル向けに最適化されています。

セダンをリフトアップし、エンジン横置きのFF化(電気式4WDシステムのE-Four)をはじめ、「トヨタ」ブランド初の2.4Lターボ+ハイブリッドシステムの「デュアルブーストハイブリッドシステム」、2.5L NAエンジンを積む「リダクション機構付シリーズパラレルハイブリッドシステム」を設定。

トヨタ・クラウンクロスオーバー
トヨタ・クラウンクロスオーバーのエクステリア

さらに、ボディバリエーションは、クロスオーバー、スポーツ、セダン、エステートという4本立てで、グローバルモデル化により各国や地域のニーズもきめ細かく拾ってく戦略が取られています。

トヨタ・クラウンクロスオーバー
トヨタ・クラウンクロスオーバーのサイドビュー

クラウンクロスオーバーのボディサイズは、全長4930×全幅1840×全高1540mm、ホイールベースは2850mm。先代は、全長4910×全幅1800×全高1455mm、ホイールベースは2920mm。

トヨタ・クラウンクロスオーバー
トヨタ・クラウンクロスオーバーのフロントマスク

全長が20mm延び、全幅は40mmワイドに、全高は15mm低くなっています。近年のクラウンは、1800mm(1800mm以下)の全幅を堅持してきましたが、その制約から解き放たれたことで、ワイドなスタイリングが強調され、賛否両論ありそうなエクステリアデザインも含めて、存在感は何倍にも増している印象。

また、ホイールベースは意外にも70mmも短くなっていて、前後席間距離は先代よりも少し延びているようですが、実感としては後席の足元空間は若干増したという感覚です。

トヨタ・クラウンクロスオーバー
トヨタ・クラウンクロスオーバーのリヤまわり

また、グレードにより全高が80〜85mm高まったにもかかわらず、後席のヒール段差は低め。前後席ともに、SUVらしく周囲を見下ろすような着座位置までには至っていません。とはいえ、先代や一般的なセダンよりも高めの景色が広がり、狭くて低い場所に押し込められているような圧迫感も抱かせません。全高が高くなったことで、頭上まわりの開放感も高まっています。

■後席パワーリクライニングは、「RS Advanced」にのみセットオプション

また、前後席ともに床面が高く、初めて乗り込むと若干の「上げ底」感を抱かせました。前席は、横方向、天地方向ともにたっぷりとしたシートサイズで、座り心地は上々。

トヨタ・クラウンクロスオーバー
トヨタ・クラウンクロスオーバーのフロントシート

前席に座っただけでも、新型クラウンの車格が1階級上がったかのような印象を受けます。後席は、ヒール段差は高くありませんが、座面に後傾角が付いていて、お尻の収まりはよく、太もも裏のサポート感も確保されています。

トヨタ・クラウンクロスオーバー
「RS Advanced」のリヤシート(セットオプショ装着車)

なお、後席のリクライニング(40:20:40分割式の電動機構)は、リヤセンターアームレスト(トランクスルー機能付き)などと「RS Advanced」にのみセットオプションで、リラックスして座りたい人やVIP向けとしては、同グレード一択になっています。

クロスオーバーの名のとおり、リフトアップされたクロスオーバーとはいえ、基本的なパッケージングや諸元はセダンに近くなっています。最低地上高は145mmで、先代よりも10mm高くなっています。わずか10mmでも不整地や雪上などでの走破性、安心感につながりそう。また、全幅を1840mmに抑えたのは、横幅制限1850mm以下の駐車場に入庫できるようにする配慮でしょう。

トヨタ・クラウンクロスオーバー
標準装備のリヤシート

先代までなら本当にぎりぎり車庫に収まっていたケースでは、片側20mmのワイド化により厳しくなるケースもあるかもしれません。なお、最小回転半径は5.4mで、先代の5.3〜5.5mと大差はなく、新型には後輪操舵を担う「DRS(Dynamic Rear Steering)」が備わったことで、ボディサイズの拡大をカバー。とはいえ、狭い場所でのすれ違い、駐車時や乗降時には、ワイドボディ化を意識させられることもありそうです。

●乗降性は良好だが、床面の上げ底感が気になる

その乗降性は、モックアップから検討したそうで、少し腰をおろした場所に座面があり、フロント630mm、リヤ610mmというヒップポイントは、先代を含めた一般的なセダンよりも高くなっています。

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トヨタ・クラウンクロスオーバーのインパネ

また、乗降性を左右する足さばきのしやすさも、ドイツなどの輸入車系クロスオーバーモデルと比べると、良好といえます。サイドシル自体はワイドですが、路面からサイドシルまでの高さを抑えつつ、サイドシルから床面までの段差も抑えられているため、またぐ感覚はありません。

先述したように、前後シートに収まると、床面がやや高く感じられるため、「もう少し低い位置に床面がありそう」という無意識の身体の動きと若干ズレを感じさせます。また。乗り降りする際の頭上空間は、後席は余裕があるものの、前席は若干、Aピラーから続く流麗なルーフラインが気になることもありました。

トヨタ・クラウンクロスオーバー
「RS Advanced」の助手席サイドのシートパワースイッチ

積載性の前に少し気になったのは、トランクオープナーの位置。もちろん、車内に解除スイッチが用意されているものの、トランクリッド外側のそれは、非常に分かりにくい位置に、外から目立たぬように配置されています。エンブレムや後方用カメラなどがすでに用意されていて、配置場所に困ったようですが、外からトランクを開ける際は、何度目かでも下から直接視認しないと分かりませんでした。

トヨタ・クラウンクロスオーバー
トランクオープナーは、エンブレム右側の少し離れた位置にある

もちろん、スマートキーでもアンロックできるものの、ポケットやバッグの中に入れっぱなしというケースでは多少面倒に感じるかもしれません。

クロスオーバーモデルとはいえ、トランクの開口分や荷室形状は、セダンそのもの。荷室容量は、スペアタイヤ装着車が432L、スペアタイヤ非装着車が450Lとなっています。開口部下側との床面との段差が大きめ(深さがある)なのもセダンらしい作りです。

トヨタ・クラウンクロスオーバー
トヨタ・クラウンクロスオーバーのトランク

なお、後席中央部のトランクスルー機能は、「RS Advanced」にのみにセットオプションになります。お約束のゴルフバッグは、9.5インチを3セット積載可能としています。先代は4セット積載できる(9.5インチだが、形状によっては3セットまで)とカタログなどに表記されていました。

トヨタ・クラウンクロスオーバー
「RS Advanced」にセットオプションのトランクスルー機能

とはいえ、クラウンクロスオーバーは、従来どおり、4人で数泊分の旅行バッグであれば無理なく積めますし、日常使いなら不足はないでしょう。

(文:塚田 勝弘/写真:小林 和久)

この記事の著者

塚田勝弘 近影

塚田勝弘

1997年3月 ステーションワゴン誌『アクティブビークル』、ミニバン専門誌『ミニバンFREX』の各編集部で編集に携わる。主にワゴン、ミニバン、SUVなどの新車記事を担当。2003年1月『ゲットナビ』編集部の乗り物記事担当。
車、カー用品、自転車などを担当。2005年4月独立し、フリーライター、エディターとして活動中。一般誌、自動車誌、WEB媒体などでミニバン、SUVの新車記事、ミニバンやSUVを使った「楽しみ方の提案」などの取材、執筆、編集を行っている。
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