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■マシンのポテンシャルを見せつけたD1GP最終戦
2022年最後の2連戦となるD1GP第8戦・第9戦が、2022年11月12日(土)・13日(日)、福島県・エビスサーキット西コースに新設されたバンクを使った区間で開催されました。
第8戦では藤野選手が決勝に進出。第9戦では川畑選手が単走2位となって単走シリーズチャンピオンを獲得するという活躍を見せました。初めての開催コースでもGR86は安定してレベルの高い走りを繰り返し、戦闘力の高さを証明しました。
●藤野選手が決勝で再戦の末に惜敗
前戦から3週間。TEAM TOYO TIRES DRIFTの2台のGR86は、特にアップデートを受けずに第8戦に臨みました。バネや車高等はそのコースや状況に合わせて調整します。
前日の練習日、川畑選手はやや下り調子、藤野選手は上り調子で終えましたが、当日の朝のチェック走行では2人とも高得点がとれていることを確認して本番に臨みました。
土曜日の第8戦単走。川畑選手は1本めを失敗しますが、これは最近のルーティン。2本めには難なく高得点を決めて、その時点でのトップに立ちます。
藤野選手は1本めから確実に通過できる得点を獲得し、2本めにはさらに得点を伸ばす走りを披露。
最終的に、川畑選手は3位で、藤野選手は5位で追走進出を決めました。川畑選手はこれで単走ランキング首位をキープです。
そして迎えた追走トーナメント。シリーズ順位2番手につける川畑選手ですが、ベスト16の1本め、後追いの末永選手に接近ドリフトを決められ、大きくアドバンテージをとられてしまいます。2本めは川畑選手も逆転を狙って攻めた後追いを見せましたが、攻めすぎて接触したこともあってポイントはとりきれず、ここで敗れてしまいました。
いっぽうの藤野選手は、圧倒的な接近ドリフトこそ見せられませんでしたが、レベルの高い走りをミスなく繰り返し、ルーキーのヴィトー選手、勢いのある北岡選手、スピード抜群の齋藤選手を倒し、決勝に進出します。決勝の対戦相手は、ベスト16で川畑選手に勝った好調の末永選手でした。
決勝。まずは末永選手がミスもありましたが、接近ドリフトを決めます。対する藤野選手も2本めの後追いで寄せきれず、ポイントは同点。勝負は再戦にもつれます。
その1本め、末永選手は後追いからきれいな追走を見せ、最後のセクターでは距離を詰め、大きくアドバンテージをとりました。入れ替えた2本め、今度は藤野選手がうまい寄せを見せ、接近ポイントを取り返します。
しかし、ベースとなるDOSS点(機械審査システムの点)で末永選手が上まわったために1pt差で敗北。好勝負は見せましたが、藤野選手は準優勝に終わりました。
なおシリーズランキング首位にいる横井選手はベスト8まで勝ち上がって敗れ、川畑選手は最終戦を前にポイント差を10ptsに広げられてしまった形になりました。
●川畑選手、総合タイトルでは一歩及ばずも単走チャンピオン獲得
そして日曜日は2022年第9戦。川畑選手にとってはふたつのタイトルがかかったシリーズ最終戦です。
まずは単走。この日は藤野選手も1本めにミスをしましたが、2本めに十分な得点を獲得。そして川畑選手は、1本めに迫力のある飛び込みを見せたものの、バンクでリヤタイヤをはみ出させてしまうミスで大きく点を落としてしまいます。
しかし、2本めには鋭い振り出しと大きな角度での進入を見せて高得点を獲得。単走優勝はできませんでしたが、単走を2位で終了。これによって2022年の単走シリーズチャンピオン獲得を決めました。
通常、1本めは抑えめの走りで通過確実な得点をとり、2本めに単走優勝を狙って攻めに行く走りをするのが上位選手のセオリーなのですが、川畑選手は、1本めに失敗をして追い込まれ、2本めに高得点をとるというラウンドが多い中でのタイトル獲得という珍しいパターンでした。厳しい状況でも狙った走りができるというのは、それほどGR86が扱いやすかったということでしょう。
そして追走トーナメント。タイトル争いで川畑選手が追いかける横井選手の最初の対戦相手が藤野選手です。1本めは先行の藤野選手がいい走りを見せ、横井選手もある程度、接近してきましたが、アドバンテージは4.5点。十分逆転できるポイント差です。
入れ替えた2本め、藤野選手は見事に横井選手をとらえ、終始近いドリフトを見せましたが、バンクの先の振り返しの手前で、わずかにドリフトがもどってしまいました。結局、これが減点されてアドバンテージは1点にとどまり、逆転ならず。横井選手がベスト8進出を決めます。
藤野選手は、「やっぱ相手が横井くんなんで、速いのを想定してエア圧とかもけっこうトラクションかかる方向にセッティングしていて、結局タイヤを回せなくてもどっちゃいました」と話しています。
いっぽうの川畑選手は、岩井選手に勝ってベスト8に進出しましたが、続くベスト8では先に横井選手が勝ってベスト4進出を決めます。タイトル獲得に望みをつなげるには川畑選手も勝つしかありません。川畑選手は新人のヴィトー選手と対戦。
1本め、圧巻の飛び込みを見せた川畑選手でしたが、バンクでややハーフスピンぎみに失速。むりやり振り返したものの、後追いのヴィトー選手のドリフトを止めてしまったことにより大きな減点が入ります。
2本めは川畑選手が非常にいい後追いを見せましたが、1本めの差は挽回できず敗退。川畑選手のタイトル獲得はなりませんでした。
川畑選手は、「ちゃんと向きが変わってなかったかな、振り返しがちょっと守りに入ってたのかな、スピードだけはちょっと速かったのかな、っていうところのミスだったんで、なんかちょっと力んでたのかなっていう感じはしますね」と振り返っています。
●GR86のポテンシャルは高かった
けっきょく川畑選手はシリーズ2位、単走チャンピオン獲得。藤野選手は、シリーズ6位で2022年シーズンを終えました。
今季このふたりのマシンとしてGR86を投入したTEAM TOYO TIRES DRIFT。
当初は「乗りやすいけれど、強みがまだわからない」「尖ったところを引き出したい」といっていたふたりですが、終わってみれば川畑選手は優勝2回、藤野選手も単走優勝1回に決勝進出1回と、非常に高い戦闘力を持っていたことが証明されました。
実際GR86は、車速は高く、コースを選ばずにレベルの高い走りができて、相手に合わせられるコントロール性も持ち合わせていました。そのマシンに乗り慣れてきたことで、ポテンシャルを引き出せるようになったのでしょう。
藤野選手は「クルマはいいので、あとは自分とクルマの歯車がうまく合えばかみ合えばいけると思うんです。今年なんかあまりぱっとしてないんで、来年は気持ちよく終われる1年にできるように頑張りたいと思います」。
川畑選手も「単走もまだまだ行けると思います。追走ももっと精度を上げていけると思います。現状、チーム体制含めてすごくいい状態なんで、これを現状維持できるように、がんばってやっていきたいですね」と来年の抱負を語ってくれました。
来年のD1グランプリシリーズ、開幕は滋賀県の奥伊吹モーターパークで、5月13日・14日の予定です。
(文:まめ蔵/写真提供:サンプロス、まめ蔵)