目次
■リアルとオンラインで3年ぶりに開催された「学生フォーミュラ日本大会2022」
●日本自動車大学校(NATS)は過去最高位の3位を獲得
公益社団法人自動車技術会が主催の「学生フォーミュラ日本大会2022 -ものづくり・デザインコンペティション-」が、9月6日(火)~10日(土) の5日間にわたって、静岡県袋井市と掛川市にまたがるエコパ(小笠山総合運動公園)で開催されました。
学生フォーミュラは、1981年にアメリカで開催された「Formula SAE」がその元となっています。学生が自ら小型フォーミュラカーを使ったビジネスを企画し、それを売り込むという体で、車両の設計からその車両を売り込むプレゼンテーションもしながら、実際にフォーミュラマシンを製作することで、そのアイデアや技術を競うというものです。
製作された小型フォーミュラマシンは車検を受けたうえで、用意されたコースで実際に走らせて、そのデザインや性能評価を行います。現在では、世界各国でほぼ同一のルールにより競技会が開催されています。日本国内では、2003年から毎年開催されてきていました。
しかし、このコロナ禍の影響で過去2年にわたり、開催が中止になってしまっていました。が、今回、静岡のエコパで実に3年ぶりの開催となりました。
といってもこれまで通りとはいかず、実際の車両を持ち込んで行われる車検や動的審査のみ会場で開催。これまで現地で行われてきた静的審査については、今回はオンラインで事前に開催され、上位3チームによるデザインファイナル審査のみ現地開催となりました。
これまではアジア地域や欧州での強豪校の参戦もありましたが、今回その参戦は国内限定となり、69台がエントリーしました。
5日間に及ぶ車検および動的審査は、その静的審査のSES(構造計算書)の順位で車検がスタート。他にもドライバーのテストなども行われつつ、各チームが車検、さらにチルト試験や騒音試験、ブレーキテストをこなしていき、徐々にスキッドパッド(8の字走行テスト)、アクセラレ―ション(加速テスト)といった動的審査へと流れていきます。
この大会、初日と2日目は雨によるタイムスケジュール変更などもあったのですが、それでも順調にマシンが仕上がっているチームはタイミングを見てタイムアップを図っていきます。
●3度の優勝を経験している京都工芸繊維大学が優勝
そして、今回の日本大会を制したのは「#6 京都工芸繊維大学」。
2016年、2017年大会連覇など、これまで3度の総合優勝を経験しているチームは、マシンのシェイクダウンも早く、事前にオンラインで開催された静的審査でもデザインファイナルに進出する暫定トップで会場入り。最終的にこのデザイン審査1位を獲得となりました。もちろん動的審査でもしっかりと走り切り、アクセラレーション2位、スキッドパッド、オートクロス、エンデュランスはすべて1位という素晴らしい成績で優勝となりました。
総合2位には「#3 京都大学」。静的審査ではプレゼン7位、コスト2位、デザイン4位。アクセラレーション9位、スキッドパット5位、オートクロス9位、エンデュランス2位という結果となりました。
そして、「#13 日本自動車大学校」は過去最高位となる3位に入りました。NATSは自動車研究科の卒業研究として、2010年から参戦を開始しています。これまでも、自動車学校チームの中では最上位を獲得してきました。が、13年目にして、ついに表彰台の一角を占めることとなりました。
●EVクラスは過去最大の14校がエントリー。優勝は静岡理工科大学
日本大会過去最大の14校がエントリーしたEVクラスですが、残念ながら、車検通過も厳しいチームが多数で、まだまだ…という感じでした。
エンデュランス審査にまで進出できたのは2チームのみ。その中でも、2013~2015年にわたってEVクラス3連覇の実績を持つ静岡理工科大学は、今回新たなモーターを搭載してこれに臨み、総合13位EVクラス優勝を果たしました。
また、今季でその活動が終了すると噂されているトヨタ東京自動車大学校は、これまで使用してきた直流モーターで、非常に重い車体をしっかりと動かし、きっちり走り切って、こちらもクラス2位、総合17位でフィニッシュしました。
事前のシェイクダウン証明提出ができなかったチームのフォローアップとして、空き時間を利用した模擬車検を受けるチームも多く、また、車検が通過できなかったチームのためのフォローアップ走行という機会も与えられました。
この経験をバネに、3年ぶりの大会でもろもろが間に合わなかったチームの、来年以降の活躍に期待したいと思います。
(青山 義明)