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■優れた燃費性能を示すも信頼性の課題が噴出
2013年(平成25)年7月19日、ホンダは新型ハイブリッドを搭載した3代目フィットHEVがハイブリッドモデルとして最高燃費36.4km/L(JC08)を達成したことを発表。新開発のHEVシステム「i-DCD」は、1モーターでありながらエンジンとモーターを接続・切断することによって、優れた燃費性能を達成しました。なお、このHEVシステムを搭載した3代目フィットは、9月から発売が始まりました。
●初代フィットHEVは、「IMA」システムのマイルドハイブリッドを搭載
フィットに初めてハイブリッドが搭載されたのは、2代目フィットをベースにした2010年10月のこと。この時のハイブリッドシステムは、インサイトで初めて採用された「IMA(インテグレーテッド・モーターアシストシステム)」です。IMAは、円盤状の薄型モーターをエンジンとトランスミッションに挟み込むタイプで、高効率のi-VTECエンジンの加速をアシストするのがメインのマイルドハイブリッドでした。システムの構成上、モーターとエンジンを切り離すことができずにモーターの単独走行ができなかったため、燃費改善効果は小さく、燃費は30.0km/Lにとどまりました。
●新たに開発した「i-DCD」でハイブリッドNO.1の燃費を達成
ホンダが新たに開発したハイブリッドは、7速DCDを組み合わせた1モーターの軽量コンパクトな「SPORT HYBRID i-DCD(インテリジェント・デュアルクラッチ・ドライブ)」です。
i-DCDシステムは、アトキンソンサイクルを採用した1.5L直4DOHC i-VTECエンジンにモーターを組み合わせた1モーターハイブリッド。エンジンとモーターの間に乾式クラッチの7速DCT(デュアルクラッチ・トランスミッション)を組み込み、優れたレスポンスと効率化を実現。DCTは、日本での採用例は少ないですが、MTのようなダイレクト感が持ち味で欧州では人気のトランスミッションです。i-DCDは、走行状況に応じて、エンジンとモーターを接続・切断することで、EVドライブ、ハイブリッドドライブ、エンジンドライブの3つの走行モードを自動で切り替えます。その結果、従来のIMAシステムに比べて、燃費は35%以上改善されました。
このi-DCDシステムを搭載した3代目フィットは、ハイブリッドとして最高の燃費36.4km/Lを達成しました。
●新型ハイブリッドは、リコール連発で信頼性の確保に苦しむ
i-DCD搭載の3代目フィットは、発売当初から信頼性において問題を抱えていました。好調な販売で滑り出すものの、市場ではハイブリッドシステムの7速DCTやエンジン制御プログラムの不具合などが発生。なんと1年の間に5回のリコールを実施するという、前代未聞の事態を引き起こしました。
開発工数不足に起因する信頼性の確認不足やDCTを開発したシェフラーとのコミュニケーション不足などが指摘されましたが、システムの信頼性が確保されるのに約2年近くを要してしまいました。売れ行きの低迷とともに、メーカーとして信頼性も大きな痛手を被ることになってしまいました。
最近は、メーカー単独ですべての開発を行うのが難しいので、開発の一部をサプライヤーやコンサルティング会社に委託する、アウトソーシングが積極的に行われています。開発工数不足を補填する有効な手立てですが、一方で今回のように様々な理由から上手くいかなかった例があるのも、事実ですね。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかも知れません。
(Mr.ソラン)