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■取り回しに不安がある人でも安心して運転できる視界の良さ
ホンダは2022年5月26日(木)に新型ステップワゴンを発表し、翌27日(金)に発売します。
新型ステップワゴンは初代、2代目への原点回帰を志向しながらも、最新技術のプレス成型などによりクオリティの高いエクステリアを実現しているように見えます。シンプルで塊感のあるエクステリアには、開放感の高さを抱かせる大きなガラスエリアが配されています。
発表に先立ち、テストコースで行われたプレス向けのミニ試乗では、主に視界の良さや良好な取り回し性などを確認できました。トヨタのノア/ヴォクシーに続き、新型ステップワゴンもついに全車3ナンバー化されています。
ボディサイズは、全長4800〜4830×全幅1750×全高1840〜1855mm。ホイールベースは2890mmで、最小回転半径は5.4m(PREMIUM LINEは5.7m)。
新型ステップワゴンに限らず、ボディサイズの拡大は新型車の傾向といえるものとはいえ、取り回しや駐車などを考えると無条件に歓迎ばかりとはいえません。
なお、従来型は4760×1695×1840mm(e:HEV スパーダ G・EX ホンダセンシング)で、ホイールベースは同値、最小回転半径も5.4m〜5.7mでした。
55mm拡幅された新型ですが、以前は5ナンバーサイズを基本としたBOX型ミニバンだけに、視界の良さや取り回しのしやすさを実現すべく細部まで入念に設計されています。
Aピラーの位置を変更し、二股になっている後方のAピラー(三角窓を形成)の形状が変更され、ドアミラー付近の三角パッチも廃止されています。
さらに、ボンネットフードの先をのぞき込んだ際(斜め前方)の見えない量(長さ)を従来の321mmから200mmに減らすなど、車両感覚の掴みやすさへのこだわりが貫かれています。
今回の試乗は、生活道路を模したようなテストコースが舞台でした。交差点でUターンしたり、生け垣で左右がほとんど見えない交差点を曲がったりするシーンもありました。
Uターンは「一度で曲がりきれるかな」という交差点でしたが、ワイドで先までよく見える視界(水平基調、直線基調のダッシュボードの設計も効いている)により、車両感覚が掴みやすく、すぐに慣れました。
また、頭(ボンネット)を少し前に出さないと生け垣で左右が見えにくい交差点でワイドな視界に加えて、死角から接近する車両も映し出す、超ワイドな「マルチビューカメラシステム」による視認性の高さも実感。ぜひ装着したい装備です。
●1列目から3列目まで高い静粛性を実現
また、速度制限内での試乗でしたので、動力性能や乗り心地などは味見程度でしか分かりませんでした。それでも静粛性の高さが印象的で、ハイブリッドモデル(e:HEV)は、エンジンが始動した際の音や振動もかなり抑え込まれていて、1列目から3列目で高い静粛性が確保されているのも実感できました。
市街地程度の速度域であれば、1列目の会話が3列目まで明瞭に伝わってきます。家族で出かける際も声を張り上げるシーンは少なそうです。
乗り味はホンダらしい引き締まったテイストで、「乗り物酔いしにくい」走りを目指したという狙いどころも伝わってきます。全体的には、シャキッと引き締まった味付けであるのと同時に、足の動きがスムーズなのが分かります。
乗り心地で不利な2列目、3列目でも揺すぶられるようなシーンが比較的少なく感じられました。ボディの剛性感が明らかに高く、不快な要素を排除しているのが分かります。
パワートレーンは、2.0Lエンジンと2モーターシステムを組み合わせるハイブリッド「e:HEV」、1.5L直噴ターボの2タイプを設定。
主力になりそうなハイブリッドは、熱効率の向上に加えて、モーター走行時のスムーズさ、高速巡航時などのクルーズ走行時のエンジン直結技術などが盛り込まれています。また、シフトスイッチを「B」にすることで、アクセルオフ時の減速度が高まり、下り坂などでのブレーキ操作を低減。
ガソリンモデルの方は、ターボらしい爽快な走りをはじめ、AWDも設定することで、降雪地域やウインタースポーツ派にも応えてくれます。
先進安全装備の「ホンダ・センシング」もアップデートされています。アダプティブクルーズコントロールが渋滞時追従機能付に進化。渋滞になりやすい大型連休などでも活躍するはずのミニバンにとって、まさにうれしい装備といえるでしょう。
後方誤発進抑制機能、近距離衝突被害軽減ブレーキ、オートハイビーム、渋滞運転支援機能の「トラフィックジャムアシスト」なども追加されています。
●日本向けのホンダ車で史上最大の室内空間を実現
もちろん、パッケージングやシートアレンジの進化も見逃せないポイントです。セカンドシートは、前後方向のロングスライドに加えて、左右にもスライドが可能。2列目を前寄りにスライドさせれば、運転席や助手席から2列目に座る子どものお世話もしやすいなど、多彩なアレンジが可能。
サードシートは床下収納を踏襲しながらヒール段差が高くなり、着座位置を高くすることで閉塞感を低減。前方のシートやヘッドレストの形状を工夫することで、見晴らしの良い視界が確保されています。また、サードシートは、シート座面の厚みも増していて、良好な座り心地が得られるのも好印象です。
さらに、操作性や快適性の向上にも入念に行われています。メーターディスプレイは視認性が高く、直感的な操作が可能な10.2インチのデジタルグラフィックメーターが採用されています。
オーディオなどのインフォテイメント系の情報、ナビや運転支援情報が左右のメーター内に表示され、直感的な操作を実現。
また、朗報なのがステップワゴンとして新採用になるパワーテールゲートは、開く角度を任意で設定できるメモリ機能付き。乗降性を左右するパワースライドドアは、従来のドアハンドル操作に加えて、軽く指先を触れるだけで開閉ができる静電タッチセンサー式が世界で初採用されています。
車内の快適性を担保するのが、大気中のPM2.5などの微小粒子物質も含めて検知し、空調制御とフィルターの組み合わせで空気を浄化する空調システム「Clean Air(クリーン エアー)」が全車に標準化されています。
タイプは「AIR (エアー)」「SPADA(スパーダ)」を基本に、後者には「SPADA PREMIUM LINE」も設定されていて、専用デザインのアルミホイールやスエード調表皮&プライムスムース(合皮)コンビシートなどが備わります。
新型ステップワゴンは、先行受注から取材時(ゴールデンウイーク直前)までで、すでに1万5000台の受注を集めたそう。それからすでに約1ヵ月経っているため、さらに受注台数は大きく積み上がっているはず。
ひと足先にフルモデルチェンジを受けたトヨタ・ノア/ヴォクシーは、販売力を含めて強力なライバルであるのは間違いありません。しかし、街中での走りや使い勝手は、ステップワゴン復権を十分に予感させる仕上がり、完成度といえそうです。
●ボディサイズ:全長4830×全幅1750×全高1840mm(AIR)
●ハイブリッド車価格帯:338万2500円〜384万6700円
●ガソリンエンジン車価格帯:299万8600円〜365万3100円
(文:塚田 勝弘/写真:井上 誠)