■eAxleは、バッテリーEVの性能W左右する動力源であり、キャビンやラゲッジスペースの広さも左右
2022年4月13日(水)、BluE Nexus、アイシン、デンソーの3社は、バッテリーEVのトヨタbZ4Xに採用されているeAxleを共同開発した、と発表しました。
BluE Nexusは、アイシン、デンソーが各45%、トヨタが10%出資し、2019年4月に設立され、電動化システム、電動駆動モジュールの開発・販売を担っています。
eAxleは、モーター、インバーター、トランスアクスルがすべて一体化された電動駆動モジュール。つまり、バッテリーEVの動力源になり、EVの性能を大きく左右します。
今回開発されたeAxleは、高い動力性能、小型化を実現し、車両の電費向上やキャビンの広さ、荷室容量の確保に貢献しているのが特徴です。
上記の3社は、FWD車向けの150kW仕様(フロント)、4WD車向けの80kW仕様(フロントおよびリヤ)の計3機種を今回、新たに共同開発しています。
今回の開発では、小型化や最適な冷却を実現するべく、デジタルシミュレーションなど、これまでに培ってきた技術から導き出されたeAxle内の最適な冷却、熱マネジメント技術が採用されています。
とくに、熱対策に苦労したそうで、冷却技術の見直しをデジタルシミュレーションにより達成したそう。さらに、インバーターの積層両面技術進化により、出力密度を向上させることで、長時間、高トルクで出力可能な高い動力性能を達成。
また、モーターの最適磁気設計、コイルエンド短縮接合技術、低粘度オイル、新型パワー半導体RC-IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)などの損失低減技術により、トップクラスの電費を実現しています。
モーター、トランクアクスル、インバーターは、ハイブリッドで培ってきた技術を活かし、バッテリーEV向けに新開発されたことになります。従来品に対し、約10%の損失を低減させ、EV航続距離の延長(NEDCモード)に貢献しています。
加えて、インバーターをトランスアクスルに内蔵するBuilt-in構造の採用をはじめ、モーターの小型化、アウトプットシャフト採用による軸間短縮といった技術で、eAxleの大幅なコンパクト化を達成。
このアウトプットシャフトの採用により、モーターとデフの軸間を短縮したことで、キャビンの拡大に寄与。
具体的には、フロントは前後方向の長さ、リヤは高さを低減し、車内やラゲッジの拡大に寄与しています。今後の課題として、さらなる高効率化を中心に、ユーザー(自動車メーカー)に対応するカスタム化、コストの削減などを掲げています。
なお、安城第一工場のユニット組立ラインは、150kWフロントユニット、80kWフロントユニット/リアユニットの3機種をフレキシブルに混流生産することができるそう。
全自動の共通固定プラットフォームと、変動対応エリアの組み合わせで、複数の異なる機種を生産できる「セル生産」が新たに導入されています。今回の3機種だけでなく、将来的により多様な種類のユニットを生産する場合にも、変動対応エリアの切り替えなどにより対応できるそう。
また、新たに導入された組み立て機は、ロボットアームに装着する「ツール」を自動で持ち替えることが可能。これにより混流生産に対応できるだけでなく、1つのロボットで複数の工程を処理することができ、生産ラインのコンパクト、低コスト化にも寄与しています。
ほかにも、自動搬送システムやIoTによるエネルギーの見える化など、新しい生産技術が複数採用されていて、カーボンニュートラルに向けては、組立ラインにおけるCO2排出量30%削減(従来比)を達成するほか、自動化、ダイバーシティなど様々な課題を解決する革新的な生産ラインになっています。
(文:塚田 勝弘/bZ4X撮影:井上 誠)