■楽しさ、安心感、快適性を併せ持つ「990S」
2021年12月16日に商品改良を受けたマツダ・ロードスター。今回の改良は、走りのブラッシュアップがメインメニューとなっています。
その目玉は、重量増なしで高速域、高負荷域のコーナリング、一体感を高める「KINEMATIC POSTURE CONTROL(キネマティック・ポスチャー・コントロール/KPC)」と呼ばれるサスペンションの新技術です。
その効果は、驚くほどの差があるわけではありません。しかし、コーナリング中の車体の動きを抑えることが可能になり、姿勢が安定。
KPSあり、なしで乗り比べると、その違いは確かに伝わってきて、コーナリング中のバネ上の動きが安定し、同じ速度域で同じコーナーに侵入してもよりピタッと安定しています。
この「KPS」は、車両重量を990kgまで軽量化した特別仕様車の「990S」をはじめ、エレガントな雰囲気が際立つ「Navy Top(ネイビートップ)」「テラコッタ」のインテリアカラーが新たに設定された新グレードの「RF VS Terracotta Selection(RF VS テラコッタ セレクション)」を含めたロードスター/ロードスターRFの全グレードに採用されています。
改良版ロードスターで最も強烈な印象をもたらしたのが、特別仕様車の「990S」。
ベースグレードであり、最軽量グレードの「S」をベースに、足元にレイズ製の16インチアルミホイール(RAYS ZE40 RS)が装着されています。1本あたり約800g、合計約3.2kgの軽量化に貢献するもので、バネ下重量を低減しています。
さらに、ブレンボ製の大径ベンチレーテッドディスク、同じくブレンボ製対向4ピストンキャリパーが備わります。990S専用のセッティングがダンパー、スプリング、電動パワステ(EPS)、エンジン制御にも施されています。バネレートを高め、ダンパーの減衰力を弱めたそう。
さらにパワステは、軽やかさを感じさせるセッティングにしながらも落ち着きのあるフィードバックが得られます。また、エンジンの専用セッティングは、レスポンスの良さと扱いやすさに注力されていて、ピーキーではなく、しかも意のままに反応してくれるから気持ちよさを増進させます。
この「990S」は、軽量化によるフットワークの良さは容易に想像できたものの、最も意外だったのは上々といえる乗り心地。
ゆっくりと走り出した時からすでに路面の当たりに尖ったものがなく、街中での実用域から高速域まで不快なショックが伝わってこないのには驚かされます。しなやかと表現できる仕上がり。
しかも先述の「KPS」の恩恵も含めて、コーナーでふらつくような挙動も少なく、ロールしても安心感の高さが印象的です。ベースの「S」は、LSDやリヤスタビライザーが備わらず、ロードスターの原点ともいえる走りが身上。「990S」は、初代NAロードスターを思い起こさせる人馬一体感が濃厚で、現在持てるソリューションで最上のロードスターに仕上げられているのが伝わってきます。
もっといえば、次期ロードスター(どんなカタチやパワートレーンになるか分かりませんが)もこうした走りであって欲しいと思わせるほどです。
「990S」は登場後、40%前後のシェア(支持)を得ているそう。ロードスターといってもグレードやトランスミッションによって味わいは異なります。ロードスターらしく、走りを最重視して選ぶのなら断然オススメ!! といえる仕上がりになっています。
●車両本体価格
・990S(6MT):289万3000円
(文/塚田勝弘 写真/小林和久)