■EVのみならず水素エンジンをカーボンニュートラル実現の手段に
トヨタ自動車の欧州部門であるTMME(トヨタモーターヨーロッパ)が12月2日(現地時間)、同日開催したイベントで新型ピュアEV「レクサス RZ」のティザー映像を公開するとともに、水素燃焼エンジンを搭載したコンセプトカー「GRヤリス H2」を公開しました。
現在、日本国内のスーパー耐久レースに出場している「カローラスポーツ」と同じく、水素燃料を使用できるように改造された1.6L直3ターボエンジン(G16E-GTS)が搭載されています。
今回のイベントで同社は2035年までにCO2の100%削減に向けたロードマップを説明。今後数年間でZEV(ゼロエミッション車)数を増やし、2030年に西欧における販売台数の約半数をZEVにする目標を掲げました。
一方の日本では昨秋の臨時国会で菅首相が「2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」と宣言。本年早々の施政方針演説では「2035年までに新車販売で電動車100%を実現する」と表明。
こうした状況のなか、トヨタはカーボンニュートラル実現に向け、EV化のみならず、水素を燃料とする水素エンジンを視野に入れることで、これまで自動車業界を支えて来た550万人に上る関連企業の雇用を守ろうとしています。
と言うのも、EV化により、日本の自動車各社が長らく培ってきた高度なエンジン開発技術を失うことになり、雇用のみならず計り知れない影響が業界に及ぶからです。
具体的にはクルマの心臓部であるエンジンがEV化で必要なくなった場合、駆動系やボディシェル関連の開発技術は残るものの、海外IT関連企業などの自動車産業参入を容易化し、ヘタをすれば日本の自動車会社がそれら企業の下請け的なポジションに甘んじる可能性すら出て来ます。
つまり、「エンジン関連技術」を死守することは、自動車各社の将来にとって非常に重要であり、エンジンを温存したままでゼロエミッションを達成する「水素エンジン」の実現はまさに悲願とも言えます。
●水素エンジンはガソリン車同様のエンジンサウンドが楽しめる
おりしもトヨタ自動車では、本年5月から水素エンジンを搭載したカローラスポーツをスーパー耐久レースに投入しており、モータースポーツという過酷な環境下でスピード感をもって水素燃焼エンジンのテストにあたっています。
水素はガソリンよりも高速で燃焼するため、クリーンな環境性能を実現しつつ、優れたレスポンスを発揮。しかも、内燃機関の魅力とも言えるエンジンサウンドや感覚を楽しめます。
トヨタによると、水素燃焼エンジンの開発は2017年にスタートしたそうで、まだ実験段階ではあるものの、モータースポーツを通じて水素エンジン技術をさらに磨き、より良い水素社会の実現を目指すとしています。
EV化の推進には夏場のピーク時における電力不足やバッテリーのコスト、寿命などの課題が山積しており、従来感覚で運転できて車両価格の抑制にも有利な水素エンジンへの期待は今後いっそう高まりそうです。
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