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■80年代レーサーのフレームもオマージュ
ヤマハは、11月4日、スポーツヘリテイジモデル「XSR900」をフルモデルチェンジし、2022年2月に欧州で発売、また、2022年春以降に日本での発売を予定していることを発表しました。
80年代のスポーツバイクを彷彿とさせるスタイルに一新された新型は、ヤマハ製スポーツマシンの代名詞で、かつてレーサーレプリカにも採用された「デルタボックス」風のフレームを装備。
さらに、2輪レース最高峰「WGP」で活躍したゴロワーズ・ヤマハのYZR500を彷彿とさせるカラーも採用するなどで、昔からのヤマハファンばかりでなく、バイク好きがグッとくる演出が満載です。
●エンジン排気量を889ccにアップ
XSR900は、レトロなスタイルを現代風にアレンジしたヤマハのスポーツモデルです。
初代は2016年に登場、ネイキッドスポーツの「MT-09」をベースに、845ccの直列3気筒エンジンを搭載。丸目1灯ヘッドライトなどでビンテージ感溢れる外観ながら、ABS、トラクションコントロール、アシスト&スリッパークラッチなどの先進装備を合わせ持つバイクです。
なお、兄弟車には、700cc・3気筒エンジンの「XSR700」もあります。
その新型では、まずエンジンの排気量を889ccにアップ、欧州の排ガス規制ユーロ5に対応させながら、トルクフルなパワー特性を実現します。
●まるでカウルを外した80年代レーサー
注目は、軽量CFアルミダイキャスト製の新フレーム。先行で発表された欧州のヤマハ公式サイトによると、このフレームは「デルタボックスのスタイル」と表記されています。
デルタボックスとは、元々1980年前半に、ヤマハが2輪最高峰レース「WGP」などに投入していたファクトリーレーサー「YZR500」に採用されたもの。
エンジンを吊すダイヤモンド型ながら、ヘッドパイプの上下幅が広く、側面から見ると三角形になっていることで「デルタ」、また断面が箱形なので「ボックス」と名付けられたヤマハ独自のフレーム形式です。
しかも、このフレーム形式は、1985年以降、数々のヤマハ市販スーパースポーツにも採用されてきました。80年代中盤から90年代初頭に爆発的人気を誇ったレーサーレプリカ「TZR250」を筆頭に、現在のヤマハフラッグシップ「YZF-R1」に至るまで、熟成を重ねながらカウル付きスポーツ車に長年使われているのです。
XSR900は、ネイキッドモデルながら、そのデルタボックスをイメージさせる形状のフレームを採用。タンデム部が昔のレーサーに採用していたシートカウルのようなスタイルの新型シートなどと相まって、まるでカウルを外した80年代レーシングマシンのようなフォルムを実現します。
●カフェレーサー風フォルムも実現
もうひとつのトピックスは、そのボディカラーでしょう。燃料タンクやフロントフェンダーなどに採用されたブルーの色調は、やはり1980年代にWGPで活躍したゴロワーズ・ヤマハのYZR500を彷彿とさせます。
ゴロワーズ・ヤマハは、青いYZR500を駆るフランス人ライダーのクリスチャン・サロン選手が大活躍したWGPチームで、当時日本でも多くのファンがいました。あまりの人気ぶりから、ヤマハは、前述のTZR250にも、同様のカラーを施した限定仕様車を発売したほど。ファンから「ゴロワーズカラー」と呼ばれ、大きなセールスを記録しました。
新型XSR900では、タンクに施されたイエローのラインや、水色のアクセントも印象的。ゴロワーズカラーにも、イエローや水色のラインが入っていたからです。まさに、あの人気カラーを再現したような雰囲気が漂います。
さらに、新型では、ステーなどが一新された丸型LEDヘッドランプやバーエンドミラーなども採用。カフェレーサー的なスタイリッシュなフォルムも実現します。
ほかにも、足着き性を高め着座姿勢を最適化する専用のリアフレーム、MT-09にも採用されて話題を呼んだ、軽量・高剛性の「スピンフォージド ホイール」なども採用。
IMUを活用した運転操作を支援する各種制御など、最新テクノロジーを駆使した装備もアップグレードされ、より走りを磨いています。
日本での価格などはまだアナウンスされていませんが、今から登場が楽しみですね。一体どんなマシンに仕上がっているのか、早く現車が見たいものです。
(文:平塚 直樹)