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■カーボンニュートラルやコネクティッド、先進安全技術(ADAS)、電動化を見据えた協業に
●トヨタ、日野、いすゞの「Commercial Japan Partnership」にスズキ、ダイハツも参画
日本における85%が狭い道路であり、地方では50%を超えるシェアに達する軽自動車。2021年7月21日、スズキとダイハツは、軽自動車の軽商用事業で「CASE」普及に向けた「Commercial Japan Partnership」プロジェクトに参画すると発表しました。
発表会には、トヨタの豊田章男社長、トヨタが保有する「Commercial Japan Partnership Technologies(コマーシャル・ジャパン・パートナーシップ・テクノロジーズ」の中嶋裕樹代表も加わっています。
今回の発表は、軽自動車の「CASE」技術の普及を通じたカーボンニュートラルへの取り組みを加速することを目指し、商用事業プロジェクト「Commercial Japan Partnership(以下、CJP)」にスズキとダイハツが参画するという内容。「CJP」は、日野自動車といすゞ、トヨタが2021年3月に発表済みです。
CJPは、いすゞ、日野自動車が培ってきた商用事業基盤に、トヨタのCASE技術を組み合わせることで、CASEの社会実装、普及に向けたスピードを加速し、輸送業が抱える課題の解決やカーボンニュートラル社会の実現に貢献することを目標に、3月の発表後、翌4月にすでに立ち上げられています。
今回の発表により、いすゞ、日野自動車に加えて、ラストワンマイルまでを担う軽商用車の「CASE」対応をトヨタ、スズキ、ダイハツで図っていくことになります。なお、CJPの資本構成は、トヨタ60%、いすゞ10%、日野10%、スズキ10%、ダイハツ10%。
●豊田章男社長「軽自動車は日本に欠かせない」
豊田章男社長は、「日本では軽自動車が欠かせない存在である一方で、CASEに個社で対応するのは難しい」とコメントしています。スズキ、トヨタの子会社であるダイハツも当然、そうした状況下にあります。
スズキの鈴木俊宏社長は、「トヨタから日本のライフラインを一緒に守っていこう。スズキとダイハツもCJPに入ったらどうか?」と明かしています。日本の軽商用車を果たす役割は、eコマース、ネット通販などの普及により、ライフラインそのものという状況にあります。軽商用車を運用しているのは、大企業だけでなく、中小企業や個人事業主もいます。しかし、「CASE」技術への対応と無縁ではいられません。ダイハツの奥平総一郎社長も「スズキの鈴木俊宏社長と、以前から一緒にできることはないか」と相談してきたそう。奥平社長は、「軽商用車は、車両価格もコスト面も非常にシビアで、ダイハツも個社でできることは限られる」と説明しています。
具体的な内容は今後、詰められますが、「トラックからラストワンマイルまでつなぐ軽商用車」、「ADASなど顧客の安全を守る、より廉価な先進安全装備」、「電動ユニットなどの共有」などを挙げています。今回の発表では、「CJP」での協業による主な目標として、「物流の大動脈(トラック物流)から毛細血管(軽商用車)までつながるコネクティッド基盤構築による物流効率化」、「安心安全に寄与する先進安全技術の商用車~軽自動車までの普及拡大」、「サステナブルな普及を目指す良品廉価な軽自動車の電動化に向けた技術協力」の3点を挙げています。
発表会では、低価格でありながらカーボンニュートラルやコネクティッド、電動化などの軽商用車の課題が再三触れられています。豊田章男社長は、「スズキとダイハツは、クルマを作る会社としてはライバルだが、CASE対応では協業した方がユーザーメリットがある」としています。「Commercial Japan Partnership Technologies」の中嶋裕樹代表は、「コネクティッド技術を活用し、まずは大都市部で物流のラストワンマイルの改善、将来は日本全体の物流の改善に貢献したい」としています。
なお、スズキの鈴木社長は、今回の協業について「商用車と乗用車を分けているのではなく、まずは商用車からスタートすることで、ユーザーの困り事を解決できる」と説明しています。さらに、Commercial Japan Partnership Technologiesの中嶋裕樹代表は、開発された「CASE」が新型車のみならず、既存車にも安価に提供できればとコメントしています。
(塚田 勝弘)