■格納式アウタードアハンドル、130万画素のLEDヘッドライトを採用
新型メルセデス・ベンツSクラスは、最新技術の走る見本市といえるほど、多様な先進機能が用意されています。
まず、格納式アウタードアハンドルが乗員を迎えてくれます。キーを携行してクルマに近づくと、アウタードアハンドルが自動でせり出す仕掛けで、エクステリアの見た目の美しさと風切り音の低減にも効果がありそうです。新型SクラスのCd値は、最小で0.22と世界トップクラスを誇ります。
ヘッドライトは、130万画素の「DIGITAL ライト」と呼ばれるLEDで、130万個の微小な鏡により光を屈折させることで照射方向を定めるというもの。ヘッドライト片側でじつに130万ものエリアに分割可能な光を照射できるそう。これにより、ハイビームアシストが対向車、先行車、道路標識などに光が当たらないように調整する際の精度が従来の84画素の光に比べて大きく向上しています。繊細なグラフィックを描くテールランプは、横長になりスマートな印象をもたらしています。
インテリアで目を惹くのは、タブレットような12.8インチの「有機ELメディアディスプレイ」。こちらでは、ナビやエアコン、車両、シートマッサージの各種設定ができます。
ディスプレイでは、顔、指紋、声の3種類いずれかの生態認証により、シートポジションやエアコン設定などを記憶させることができる認証の設定などが可能(生体認証は、エンジン始動などセキュリティ面では使われません)。
こうしたタブレットようなディスプレイは、テスラなどが先行しています。それでもメルセデスの凄みを感じさせるのが、自然対話式インフォテインメントシステムである「MBUX」。Sクラスでさらに熟成、進化された印象で、ドライバーの呼びかけに対して、かなりの精度で車両が応えてくれます。
ナビやオーディオ、エアコン設定などは手動でやるよりもストレスなく操作できる印象で、こうしたボイスコントロール系では自動車業界トップクラスといえるでしょう。
今回は1人乗車でしたのでなかなか試すことはできませんでしたが、Sクラスでは前席両側からはもちろん、後席左右席も含めてどのシートから発話されているかを聞き分け、アンビエントライトでその席をハイライトする機能が加わっています。そして、発話者のゾーンのみ温度設定やエンタメの設定を変更するなど、きめ細かい操作が可能。
「MBUXインテリア・アシスタント」も加わっています。BMWが7シリーズなどで採用しているジェスチャーコントロールと似ていて、ディスプレイの前に、例えばVサインを出すことで、お気に入りの機能のショートカットが有機ELメディアディスプレイに表示できるほか、リーディングライトやサーチライトのオン・オフやパノラミックスライディングルーフとサンシェードの開閉などもできるそう。
さらに、ドライバーがシフトレバーをバックに入れて、後ろを振り返るとリヤウィンドウの電動ブラインドが自動で開くなど、かゆいところに手が届く機能まで用意。
ナビゲーション関連も充実しています。高精細な3D地図画面をはじめ、花粉症の方にはうれしいスポット別の花粉の量が表示されます。12.8インチの「有機ELメディアディスプレイ」は、多様な情報を表示できるようで、必要かどうかは別にして車体番号まで表示されるのには驚かされました。
世界で初めてAR(拡張現実)ナビをこの有機ELメディアディスプレイだけでなく、フロントウィンドウに投影するシステムをメーカー純正オプションで選択することも可能。従来は、目的地を設定して案内をする場合、地図上に進むべき道路がハイライトされましたが、新型Sクラスではそれに加えて、車両の前面に広がる現実の景色がナビ画面の一部に映し出され、進むべき道路に矢印が表示されます。
ヘッドアップディスプレイ上には、進むべき道路が約10m先の景色に重ねて矢印で表示されます。クルマの進行方向が変わると、それに従って矢印も動き、常にどの方向に進むべきかを分かりやすく表示。より直感的にどの道路に 進むべきかを判断することができるなど、Eクラスよりも案内のポイントが分かりやすくなっています。
ほかにも、多彩なマッサージ機能には、「エナジャイジング コンフォート」が用意されています。こちらは、各種ヒーターや香りを放つパフュームアトマイザー、シート設定、照明、音楽などのシステムを統合的にコントロールし、快適性を高めるもので、ドライバーが体験するとリラックス効果だけでなく、眠気も飛ばしてくれる印象を受けました。
(文・写真:塚田 勝弘)