■ミニマル、くつろぎ・安心感、走りの楽しさに「前進感」をプラス
2020年11月19日、初代のタイムレスデザインを継承してモデルチェンジされた2代目「N-ONE」。ボディパネルの多くを流用した異例のスタイリングはどのように行われたのか? さっそく担当デザイナーの江田氏に話を聞きました。
── 新型N-ONEのデザインを始めるにあたって、初代のモチーフである「N360」をもう一度見直したそうですね。
「はい。私は初代のマイナーチェンジも手掛けたのですが、そのときから「N-ONE」というブランドをどう育てて行くべきか、さまざまな議論がありました。そこで、志を大切にし、スピリッツを確認するため、改めてN360の素晴らしさを検証したわけです」
── そこで見えてきたのものは何だったのでしょう?
「大きく分けて「ミニマル」「くつろぎ・安心感」「走りの楽しさ」ですね。技術的にもサイズ的にも極めて限られた制約の中で、あれだけの余裕を感じるパッケージや、あるいはキビキビとした走りを実現していたのはやっぱりスゴいなと」
── 開発途中ではその「ミニマル」「安全性」「走り」を表現した1/4モデルが製作されていますが、なぜ要素別に作られたのでしょう?
「とくに要素別に作ったのではなく、提案された多くのスケッチの中で、それぞれの要素がとくに強く表現されている3案をピックアップし、モデル化したものです。これをベースに1/1のモデルにまとめたのですが、どうもこれは2代目N-ONEではないなと…」
── たしかにちょっと違いますね。ただ、このモデルをもって「2代目は初代のパネルを流用しよう」という判断は少々早急な気がしますが?
「実際には、写真のモデルの他にもN-ONEらしさの「探り」はいろいろとやっていて、もっと違う価値観の提案もあったんです。ただ、テーマに対して若干理詰めになっていた面はあったかもしれません。そうしたブランド継続の検討と同時に、さまざまな社内の意見を総合し、最終的にパネルの流用という手法にたどり着いたわけです」
── では、その初代からの「進化」として、まず踏ん張り感のある佇まいが必要だと考えたのはなぜですか?
「新しいシャシーの採用など、安全性能が圧倒的に進化していますので、その表現はマストだろうと。そこで、アンダーグリルの幅を広げて安心・安全を感じるスタンスのよさを狙いました。もちろん、グリル内にはセンサー類を埋め込むなど機能的な理由もあります」
── 初代は上下のグリルで形状を合わせていて、かつ小さめのアンダーグリルが独自の愛らしさと質感を出していました。
「そうですね。ただ、今回は「オリジナル」でも走りのよさが特徴ですから、これをベースの形状とし、あえて可愛らしさからキリっとした表情に変えています。その上で愛着の持てる表情を加えた感じですね」
── もうひとつの進化が「前進感」ですが、その意図は?
「これも走りの質のよさの表現ですね。初代はサイドビューが前後とも大きく寝ていましたが、リアはそのままにフロントを起こそうと。イメージとしては70~80度を80~90度に近づける感じです。さらに、Hマークのエンブレムは垂直にして前進感を打ち出したい」
── 最後に。今回はパネルの流用という異例の手法をとったわけですが、そこでの収穫はありましたか?
「はい。オリジナルのいい部分を抽出して、次の時代につなぐやりがいのようなものですね。もちろん変化させる面白さもありますが、いいものはいいものとして認める、スクラップ&ビルドだけが手法ではないと。これが「大正解」だと言い切るのは難しいですが、ユーザーによる支持がその答えだと信じています」
── N-ONEのファンを見据えたモデルチェンジということですね。本日はありがとうございました。
(インタビュー・すぎもと たかよし)