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■新型エルグランドと日産が提唱するクルマの新価値
●新たなクルマの価値「ドライビング リビング」とは?
日産は、大型ミニバンの新型「エルグランド」の発売に合わせて「家族のクルマ利用」に関する調査結果を発表しました。それによると、withコロナ時代で家族がクルマに求めるのは広さや快適性で、これからの新たなクルマの価値として「ドライビング リビング」も提唱しています。
これからの時代は、家族のクルマとして今後求められるのは「広さ」と「快適性」だというこの新提案。調査結果と共に、その内容をご紹介しましょう。
●家族の移動で「自家用車」派が多数
日産が今回発表した調査は、2020年10月3日〜10月5日に実施されたもので、全国の30代から50代で子どもがいる男女300名が対象です。
概要は、まず「コロナ禍で家族の移動手段」に関する調査で、「自家用車」を利用する人が約90%と圧倒的に多いことが判明。これによりコロナ禍で移動する際には公共交通機関を避け、より安全に移動する手段の一つとしてクルマに注目していることが分かります。
また「アフターコロナでも積極的に利用したい手段について」との問いにも、「自家用車」が約80%という多数を占める結果に。コロナ禍だけでなく、今後も家族で出かける際の手段として、自家用車が増えていくことが予想される結果となっています。
一方で、車内空間に対する家族のニーズについての調査では、「ストレスを感じる要因」としては「車内空間の狭さ」が34.7%と一番多く、2人に1人が車内空間の狭さにストレスを感じていることが分かりました。
さらに、約60%が家族間でも適度な距離を保つ必要があると回答。家族で一緒にいる際にも一定のディスタンスが必要であることも分かっています。
●狭い車内は家族でもストレスになる
調査では「自家用車に求める機能」についても調査を実施しています。それによると「家族が広々座れるスペース」(56.7%)や「くつろげる快適性」(54.3%)を求める声が多数で、自家用車にリビングのような広くて快適にくつろげる居心地を求める家族が約75%を占めていることも判明しました。
これら結果から、脳研究者の池谷裕二氏は、クルマの広さや快適性がどのように家族に影響を及ぼすかについてコメントしています。
池谷氏によると、「人の周囲には、その人にとっての個人的な空間(パーソナルスペース)」があり、その広さは対人関係や文化背景によって変わるそうで、「典型的なアジアの家族では、自分の左右40cmほどが他者との境界線」なのだそうです。
また「一般に、人はパーソナルスペースが侵されると不安や攻撃性」が高まり、「車内のような狭い空間内で長時間パーソナルスペースが侵害され続ける状況は、単に空気がギスギスとして無用な衝突の原因になるだけでなく、強いストレスのもと」にもなるそうです。
さらに、車内のストレスは健康にも関わりがあり、「人によっては膀胱への蓄尿量が増え、突然の尿意」にもつながるそうで、トイレが自由に行けないクルマでの長距離移動では無視できない問題だとしています。
それら理由により、池谷氏は「とくに長距離を移動する場合は、少しでも広いスペースが確保できるクルマが望まれ、上部の天井方向にゆとりがあるほうが左右のパーソナルスペースの許容が高まる」といいます。
●リビングのような快適性を重視
こういった調査や池谷氏のコメントにより、日産が今回提唱したのが前述の「ドライビング リビング」です。これは、現代のニューノーマル時代にファミリー層は、「リビングのような空間」をクルマの価値として求めるという意味です。
また、日産の調査では、車選びの際に「搭載されている車の安全機能(自動ブレーキや衝突回避機能など)を重視しているか」についても約86%の人が重視していると回答しているといいます。
そして日産は、それらを全てクリアしているのが、今回マイナーチェンジを受けた新型エルグランドだといいます。外観が一新されているのはご存じの通りですが、ゆとりのある広い室内や高級セダンの内装をあわせ持った「高級ミニバン」としての魅力はそのままに、インテリアもより充実が図られています。
特に、後席にはリラックス姿勢を維持するシートバック中折れ機能を備えたキャプテンシートを採用。また、同じく後席に角度調節可能なアームレストや折り畳み式シートサイドテーブル、大型のオットマンなども装備し、文字通りリビングにいるような快適な室内空間を実現しています。
さらに、先進安全技術も従来からの「踏み間違い衝突防止アシスト」や「インテリジェント エマージェンシーブレーキ」といった機能に加え、全方向から運転をサポートする360°セーフティアシストを全車標準装備し、さらに拡充。前述の安全機能を重視するファミリー層のニーズに応えています。
近年、エルグランドなどの大型ミニバンは、コンパクトカーや軽自動車のワゴンなどが台頭したこともあり、かつてほどの需要が見込めず苦戦しています。
果たして、日産の主張通り、「広さ」「快適性」「安全性」がwithコロナ時代のファミリー層が求めるクルマの価値として「ニューノーマル」になり、大型ミニバンの復権に繫がるのか興味深いところです。
(文:平塚 直樹/写真:日産自動車)