■2050年カーボンニュートラルの実現のためF1から撤退を決定
2015年からマクラーレンと手を組み、F1に復帰したホンダ(第4期)は、パワーと信頼性が不足するなど、なかなか思ったようなパフォーマンスを出せず、2015年はとくに苦労の1年でした。しかし、2016年にコンストラクターズランキングで6位に入ります。2017年は再び思ったようなパフォーマンスを出せず、マクラーレンと袂を分かつと、2018年にはトロ・ロッソにパワーユニットを供給。
2019年になりレッドブルとトロ・ロッソにエンジンを供給し、2015年の復帰以来待望の表彰台を開幕戦のオーストラリアGPで獲得。第9戦のオーストリアGPではフェルスタッペンがホンダにとって2006年以来の優勝をもたらします。F1パワーユニットの責任者は、初代N-BOXなどの開発責任者であった浅木泰昭氏で、筆者もN-BOXの試乗時にインタビューをしたことを思い出しました。
しかし、勝ち始めたホンダがなぜF1から撤退するのでしょうか。同社は、レッドブル・レーシング、アルファタウリとのパートナーシップのもと、2019年シーズンは第4期初優勝を含めて3勝、2020年シーズンも2勝(第10戦終了時点)するなど、大きな目標としてきた勝利を実現することができたとしています。
さらに、今回のF1撤退について同社は、自動車業界が100年に一度の大転換期に直面する中、最重要課題である環境への取り組みとして、持続可能な社会を実現するための「2050年カーボンニュートラルの実現」を目指すためとしています。そのために、カーボンフリー技術の中心となる燃料電池車(FCV)、バッテリーEV(BEV)など、将来のパワーユニットやエネルギー領域での研究開発に経営資源を重点的に投入していく必要があり、その一環として、今年4月に「先進パワーユニット・エネルギー研究所」も設立しています。
F1で培ったエネルギーマネジメント技術や燃料技術、そして 研究開発の人材も同様に パワーユニット・エネルギー領域に投入し、将来のカーボンニュートラル実現に集中し、取り組んでいくために、今回、F1への参戦を終了するという判断をしたそうです。
今後は、2021年シーズン終了までレッドブル・レーシング、アルファタウリの両チームとともにさらなる勝利を目指し、最後まで全力で戦い抜くと表明。モータースポーツ活動を通じて培われたチャレンジング・スピリットをもって、将来のカーボンニュートラル実現という新たな目標に挑戦していく、と続けています。
ホンダは、北米でEVと内燃機関分野でGMと協業し、さらに新聞などの一部報道によると、研究開発費は8600億円と、トヨタの1.1兆円には及ばないものの、先行投資の手は緩めていません。F1ファンにとっては非常に残念な発表ですが、2021年シーズン終了までのF1と、参戦するカテゴリーに全力を注ぐと表明していて、1回でも多く表彰台のてっぺんに登る勇姿を見たいものです。
(塚田勝弘)