目次
■予習・エクストレイルに与えられた安全支援デバイス群
リアル試乗・エクストレイルの第3回めは、エクストレイルに搭載された安全デバイスについてひとつひとつ解説します。
●全17点にもおよぶ安全デバイスあれこれ
日産では現代的先進安全デバイスを、「360°セーフティアシスト(全方位運転支援システム)」と総称しています。
あらゆる方向に対する、あるいは、あらゆる方向からやってくる危険要素を積極的に察知し、事前に回避するという意味でしょう。
日産がカタログで掲げている360°セーフティアシストの内訳は次のとおりです。
1.インテリジェントエマージェンシーブレーキ
2.インテリジェント FCW(前方衝突予測警報)
3.インテリジェント DA(ふらつき警報)
4.プロパイロット(ナビリンク機能付)
5.プロパイロット緊急停止支援システム(SOSコール機能付)
6.SOSコール
7.インテリジェント BSI(後側方衝突防止支援システム)+BSW(後側方車両検知警報)
8.インテリジェントルームミラー
9.エマージェンシーストップシグナル
10.RCTA(後退時車両検知警報)
11.プロパイロットパーキング
12.踏み間違い衝突防止アシスト
13.インテリジェントアラウンドビューモニター(移動物検知機能付)
14.インテリジェント LI(車線逸脱防止支援システム)+LDW(車線逸脱警報)
15.標識検知機能
16.アダプティブLEDヘッドライトシステム
17.ハイビームアシスト
カタログどおりに列記すれば17点はかなり多く見えますが、これはアダプティブ配光のライトとハイビームアシストのように、ひとつの車両で両立するはずのないシステムも別個にしているため、他社の安全システム総称では含まないデジタルルームミラーや高速点滅のストップランプまでをも含んでいるため、「プロパイロット緊急停止支援システム(SOSコール機能付)」は「SOSコール」を包含しているのにわざわざ別個で扱っているためです(それぞれが単独でつく機種は存在しない)。
また、機種によりけりでオプションまたはオプション選択不可のものもあるので、17のシステムすべてを備えるエクストレイルは存在しません。
それはともかく、デバイス個々について説明していきます。
●先進デバイス群、その詳細
1.インテリジェントエマージェンシーブレーキ
前方の車両、歩行者、ひとが乗っている自転車と衝突する可能性があるとき、警報とブレーキでドライバーの衝突回避操作をアシストする。
約5km/hから作動し、歩行者、ひとが乗っている自転車に対しては10~80km/hで作動する。
2.インテリジェント FCW(前方衝突予測警報)
レーダーで2台先の車両=前の前の車両を検知し、急な減速などで自車の回避操作が必要と判断したとき、メーター表示と警報によって注意を促す。
約5km/h以上で作動。
3.インテリジェント DA(ふらつき警報)
60km/h以上で走行中、ドライバーのハンドル操作からドライバーの注意力が低下しているとシステムが判断したとき、ブザー報知するとともに、メーター内に「休憩しませんか?」と表示する。
4.プロパイロット(ナビリンク機能付)
高速道路や自動車専用道を、ドライバーが設定した車速を上限に、先行車との間隔を適当に維持し、レーンセンターに自車を収める走行を支援する。
5.プロパイロット緊急停止支援システム(SOSコール機能付)
プロパイロット(ナビリンク機能付)での走行中、何らかの理由でハンドル操作が一定時間検知されず、かつ、メーター表示や音による警告にドライバーの反応が見られなかった際、自動でハザード点灯とともにクルマが自車を減速~停止させる。
NissanConnect サービス加入していれば次項「SOSコール」が作動し、緊急通報センターに自動で音声接続され、必要に応じて警察や救急に連絡して緊急車両がかけつける。
6.SOSコール
前項・プロパイロット緊急停止支援システムとのセット品。
急病やあおり運転などに遭ったときの緊急時、走行中でも天井にあるスイッチを押すとオペレーターに接続。オペレーターが警察や消防に連絡し、緊急車両の手配をしてくれる。
また、エアバッグが展開するほどの事故が起きたときには連動してオペレーターに自動通報してくれる。
7.BSW(後側方車両検知警報)+インテリジェント BSI(後側方衝突防止支援システム)
BSW(後側方車両検知警報)は約30km/h以上で走行時、車両後部のレーダーセンサーによってお隣り車線の車両を検知すると、検知した側のドアミラー内のランプを点灯させる。
その車両に気づかず車線変更しようとターンシグナルを点灯するとブザー吹鳴とメーター表示、ドアミラー内ランプで警告する。
インテリジェント BSI(後側方衝突防止支援システム)は、車両後部のレーダーセンサーで隣接車線の車両を、フロントカメラでレーン、それぞれを読み取っている状態で約60km/h以上の走行時に自車が検知している側のレーンに寄ったとき、前記BSWが作動するとともに車両を自車線内に戻す方向にブレーキ制御を行う。
8.インテリジェントルームミラー
いわば従来のルームミラーの場所に設置した、ルームミラーの形をした長方形の液晶モニター。従来ミラーの場合と異なり、バックドアガラス上方からの車両後方画像を映し出すので、後席乗員やトランク荷物の有無、後席ヘッドレストとは無関係に、車両後方の様子を把握することができる。
9.エマージェンシーストップシグナル
急ブレーキのとき、ストップランプを点滅させて後続車両に急ブレーキであることを伝える。
10.RCTA(後退時車両検知警報)
シフトがR、かつ約8km/h時に作動。バック時に自車後方を横切ろうとする車両の接近を車両後部のレーダーセンサーが検知すると、ブザー吹鳴と検知した側のドアミラー内ランプの点滅でドライバーに報知する。
11.プロパイロットパーキング
車庫入れ、縦列駐車、前向き駐車を支援する。
12.踏み間違い衝突防止アシスト
車両周囲のカメラ(フロントカメラ、リヤカメラ)と前後バンパー内のソナーで、進行方向の壁など障害物、車両、歩行者を検知。低速のときにドライバーがブレーキペダルと間違えてアクセルペダルを必要以上に踏みこんだとシステムが判断すると、ドライバーに音とメーター表示で警告すると同時に、約6秒間、加速を抑制もしくは弱いブレーキ操作を行い、車速の上昇を抑え、過度な加速の防止や障害物への衝突防止をアシストする。
作動速度は、車両、歩行者に対しては約0~25km/h、壁などの障害物に対しては約0~15km/h。
13.インテリジェントアラウンドビューモニター(移動物検知機能付)
車両の前後左右(フロントグリル、左右ドアミラー、バックドア)に設置したカメラの画像を合成し、車両周囲のようすを上方から見たかのような疑似的画像をナビ画面に表示する。
14.LDW(車線逸脱警報)+インテリジェント LI(車線逸脱防止支援システム)
LDW(車線逸脱警報)は、意図せず自車が走行レーンから逸脱しそうになったとき、警報でドライバーに注意を促す。
インテリジェント LI(車線逸脱防止支援システム)は、上記の状況のとき、自車をレーン収束させるためのドライバー操作をアシストする。
約60km/h以上で作動。
15.標識検知機能
フロントカメラが捉えた道路標識をメーター表示する。
16.アダプティブLEDヘッドライトシステム
ハイビーム時でも先行車や対向車に幻惑を与えないよう、照射範囲を制御する。
約25km/h以上で走行中に作動し、約15 km/h以下になると解除、ロービームに切り替わる。
17.ハイビームアシスト
先行車や対向車の有無、周囲の明るさに応じて、ヘッドライトのロー/ハイを自動で切り替える。
約25km/h以上で走行中に条件が揃うとハイビームに切り替わり、約15 km/h以下になるとロービームに切り替わる。
注文がいくつか。個々のシステムの働きについてではなく、カタログでの各々の説明が不足しています。
カタログを見れば、デバイス名称は記載していても、それらがどのような内容の機能を持っているのか、ほとんど説明がなく、かろうじて「インテリジェントFCW」「プロパイロット」「プロパイロットパーキング」の3つについて説明書きがあるのみ。
名称にくっついているアルファベット・・・「FCW」「DA」「BSI」「BSW」「RCTA」「LI」「LDW」がいったい何の略称なのか、カタログにもなければ取扱説明書にもなし。ならばせめて日産ホームページ内の技術解説ページにはあるかと思えば、これがどこにも見当たらない・・・中には想像がつくものはあるものの、自社製品をよりPRするならきっちり明記してほしいもの。
これは他社製品にも見られることですが、同じひとつのデバイス呼称がカタログと取扱説明書とで統一されていないのも混乱します。
取扱説明書の索引「SOSコール」でたどっても説明ページでは正式名称がいきなり「先進事故自動通報システム」に変わっている・・・これとて読み込めばわかりはするとはいうものの、どうにもカタログと取扱説明書とで呼称も扱いもまちまちな感が強く、カタログ製作者、取扱説明書製作者、安全技術担当者、3者間の統制が取れていない印象を受け、これでは結果的にユーザーや販社の混乱と理解不足を招くだけです。
使ってみればそれなりにいいものがあるし、中には日産が老舗のデバイスもあるのに、何とももったいないではないか!
注文いくつかを並べましたが、使ってみればひとつひとつの機能はなかなか優秀でした。
というわけで今回はここまでとし、次回「360°セーフティアシスト実践編」でその優秀さをお見せします。
ではまた。
(文:山口尚志)
【試乗車主要諸元】
■日産エクストレイル G e-4ORCE アクセサリー装着車〔6AA-SNT33型・2022(令和4)年7月型・4WD・ステルスグレー&スーパーブラック2トーン/ブラック内装〕
★メーカーオプション(税込み)
・アダプティブLEDヘッドライトシステム(オートレベライザー付):3万3000円
・クリアビューパッケージ(リヤLEDフォグランプ):2万7500円
・BOSE Premium Sound System(9スピーカー):13万2000円
・ステルスグレー/スーパーブラック 特別塗装色:7万7000円
・ルーフレール+パノラミックガラスルーフ(電動チルト&スライド、電動格納式シェード付):18万1500円
★販社オプション(税込み)
・グリルイルミネーション(インテリジェント アラウンドビューモニター付車用):6万3840円
・日産オリジナルドライブレコーダー(フロント+リヤ):8万6302円
・ウインドウ撥水 12ヶ月(フロントガラス+フロントドアガラス撥水処理):1万1935円
・ラゲッジトレイ:1万7800円
・デュアルカーペット:3万9800円
・滑り防止マット:1980円
・アドベンチャーズパッケージ(リモコンオートバックドア・インテリジェント アラウンドビューモニター付車用):16万3118円(セット内容:フロントアンダーカバー、リヤアンダーカバー、フロントバンパーフィニッシャー(ブラック))
・フードディフレクター:2万9800円
●全長×全幅×全高:4660×1840×1720mm ●ホイールベース:2705mm ●トレッド 前/後:1585/1590mm ●最低地上高:185mm ●車両重量:1880kg ●乗車定員:5名 ●最小回転半径:5.4m ●タイヤサイズ:235/60R18 ●エンジン:KR15DDT型(水冷直列3気筒DOHC) ●総排気量:1497cc ●圧縮比:8.0-14.0 ●最高出力:144ps/2400-4000rpm ●最大トルク:25.5kgm/2400~4000rpm ●燃料供給装置:ニッサンDi ●燃料タンク容量:55L(無鉛レギュラー) ●モーター型式(フロント):BM46 ●種類:交流同期電動機 ●最高出力:204ps/4501-7422rpm ●最大トルク:33.7kgm/0-3505rpm ●動力用電池(個数/容量):リチウムイオン電池(-/-) ●モーター型式(リヤ):MM48 ●種類:交流同期電動機 ●最高出力:136ps/4897-9504rpm ●最大トルク:19.9kgm/0-4897rpm ●動力用電池(個数/容量):リチウムイオン電池(-/-) ●WLTC燃料消費率(総合/市街地モード/郊外モード/高速道路モード):18.3/16.1/19.9/18.4km/L ●JC08燃料消費率:-km/L ●サスペンション 前/後:ストラット式/マルチリンク式 ●ブレーキ 前/後:ベンチレーテッドディスク/ベンチレーテッドディスク ●車両本体価格:478万8700円(消費税込み・除くメーカーオプション)