自動車のゆくえは?1997年に京都で開催された気候変動枠組条約国会議(COP3)で採択された「京都議定書」が発効【今日は何の日?2月16日】

■目標は、先進国の温室効果ガス排出を1990年比で5%削減

2005年2月16日、気候変動枠組条約国会議(COP3)で採択された「京都議定書」が発効(引用:PhtoAC)
2005年2月16日、気候変動枠組条約国会議(COP3)で採択された「京都議定書」が発効(引用:PhtoAC)

2005(平成17)年2月16日、気候変動に関する国際連合枠組条約「京都議定書」が発効されました。

京都議定書は、6種類の温室効果ガスを1990年のレベルから、2008年~2012年の5年間に先進国全体で5%以上の削減を目指すという取り決めで、2004年にロシアが加入することで発効条件を満たしたのです。


●過剰な温室効果ガスの排出が地球温暖化の原因

温室効果ガスとは、地球温暖化を促進する、大気中に含まれるCO2(二酸化炭素)やメタンなどのガスの総称です。温室効果ガスは、太陽から放出される熱を地球に閉じ込める働きがあるので、地球の平均温度は14度に保たれています。もし、温室効果ガスがなくなれば、地球の表面温度は-19度になるとされています。

温室効果ガスによる地球温暖化メカニズム
温室効果ガスによる地球温暖化メカニズム

したがって、温室効果ガスの存在は地球にとって不可欠なのですが、現在は産業の発展とともに温室効果ガスが過剰に増えたために太陽熱の授受のバランスが崩れて、地球が徐々に温暖化しているのです。

大気に排出されている人為起源の温室効果ガスの割合(2010年気象庁発表)は、CO2:76%、メタン:15.8%、フロン類:2.0%と、CO2が最も排出量が多いことが分かります。CO2が多い主な原因は、化石燃料による燃焼であり、CO2増加分の3/4以上が化石燃料によるものとされています。

CO2排出量を抑えるために、カーボンニュートラルの実現が必要なのです。

●京都議定書の目標はクリア、現在はパリ協定に移行

京都議定書は、1997年に京都で開催された第3回気候変動枠組条約締約国会議(COP3)で採択された国際的な取り決めで、先進国(日本、米国、EUなど)の温室効果ガス排出量を2008年~2012年に5%削減(1990年比)することが目標。一方で開発途上国(中国、インドなど)には、低減の義務化はされませんでした。

ただし、京都議定書の発効には、55ヵ国以上の国の参加、参加した先進国のCO2排出量が地球全体の55%以上となる、という2つの条件が必要でした。

米国は、排出量の多い中国が責任を負わず、先進国だけが責任を負うのは不公平だとして、京都議定書に参加しませんでしたが、2004年にロシアが参加し、これにより発効条件を満たしたため、2005年のこの日に発効されたのです。

具体的な目標は国ごとに異なり、2014年時点で日本は-8.4%(目標-6%)、英国-22.5%(目標-12.5%)、ドイツ-24.7%(目標-21%)と、加盟している国すべてが目標を達成しました。

また、2015年には新たに「パリ協定」が採択されました。パリ協定は、京都議定書の後継として2020年以降の地球温暖化対策を目標に、先進国だけでなく協定に加盟しているすべての国が削減対象となりましたが、目標達成が義務化されておらず、不完全な条約との意見も上がっています。

●日本のカーボンニュートラルへの取り組み

温室効果ガスを削減するために世界の主要国は、具体的な温室効果ガスの削減目標を策定しています。

日本では、2020年10月の菅首相による所信表明で、2050年までに温室効果ガスの排出を実質的にゼロにするという「2050年カーボンニュートラル宣言」を行いました。「カーボンニュートラル」とは、温室効果ガスを完全にゼロにすることは現実的でないので、“温室効果ガスの吸収・除去量を、排出量から差し引いた合計(プラスマイナス)をゼロにする”という考え方です。

ちなみに菅首相(当時)の宣言はあったものの、2021年英国グラスゴーで開かれたCOP26で日本は「化石賞」という不名誉な賞を受賞しました。温室効果ガス排出量世界第5位の日本が、気候変動に対して消極的な姿勢を取っているとみられたからです。この賞の受賞で日本は、COP25から引き続き昨年2023年12月のアラブ首長国連邦ドバイでのCOP28まで、実に4回連続となっているのです。


日本の2050年温室効果ガスの実質ゼロを受けて、すべての自動車メーカーは多少の違いはあるものの、2030年から2040年の間にほぼ電動化100%の目標を掲げています。残された時間を考えると、今後電動化が急加速することは確実だと思います。

毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれません。

Mr.ソラン

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Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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