マツダの燃料電池車「プレマシーFC-EV」が公道試験を開始【今日は何の日?2月15日】

■燃料電池車として国内で初めての公道走行試験を開始

2001年に公道試験を開始いたプレマシー FC-EV
2001年に公道試験を開始したプレマシー FC-EV

2001(平成13)年2月15日から、マツダおよびダイムラー・クライスラー日本は、国内で初となる燃料電池車の公道走行試験を開始するとのことを発表しました。

燃料電池車は、マツダの「プレマシーFC-EV」とメルセデス・ベンツAクラスベースの「Necar5」の2台です。


●マツダの燃料電池車開発の歴史

マツダは、将来の代替燃料車の有力候補として、1991年にバラード社から燃料電池のリースを受けて、燃料電池車の基礎研究に着手しました。

1997年に開発された水素吸蔵合金型燃料電池車のデミオFC-EV
1997年に開発された水素吸蔵合金型燃料電池車のデミオFC-EV

1992年には、バラード社製固体高分子型燃料電池と水素吸蔵合金タンクを搭載した燃料電池カート車を開発。1997年には電極や触媒などを改良した高性能な燃料電池システムを独自に開発。これに水素吸蔵合金タンクを搭載した「デミオ FC-EV」を開発し、社内ながらFCEVの実験走行に成功したのです。

1998年4月に、マツダはフォード社、ダイムラー・クライスラー社、バラード社による燃料電池開発のためのアライアンスに参加。翌1999年には、燃料電池アライアンスによって開発された燃料電池システムを搭載した「デミオ FC-EV」の2号車が完成しました。

マツダは、1996年のフォードとの資本提携によってフォード傘下となったことから、一連の燃料電池車の開発にはフォードのFCEVの技術が生かされているのです。

●プレマシーFC-EVは、メタノール改質型燃料電池

デミオFC-EVが水素吸蔵方式燃料電池だったのに対して、プレマシー FC-EVはメタノール改質方式の燃料電池システムを採用しています。

プレマシー FC-EVのリアビュー。床下に燃料電池スタックを搭載。
プレマシー FC-EVのリアビュー。床下に燃料電池スタックを搭載

エタノール改質FCEVとは、メタノールをタンクに供給し、タンク内のリフォーマー(改質器)を用いて水素を生成し、その水素を使って燃料電池で発電する方式。当時は、まだ燃料電池の黎明期だったので、その他にも水素吸蔵方式や現在主流の高圧水素タンク方式など、いろいろな水素供給方式が検討されていました。

プレマシーFC-EVは、燃料電池スタックや改質装置など全てのユニットを小型化して床下に搭載。ベース車の基本パッケージを変えることなく、5人がゆったりと乗れる実用性の高い室内空間を実現、モーターの最高出力は65kW(88PS)でした。

同様のシステムは、メルセデス・ベンツAクラスベースの「Necar5」にも搭載され、国土交通省の大臣認定を受けてナンバープレートを取得、燃料電池自動車としては国内では初めて公道走行が認可されたのです。

●その後マツダはFCEVでなく水素エンジンの開発を推進

プレマシーFC-EV以降、マツダは直接水素ガスを燃料とする水素エンジンの開発に注力しました。

2004年に公道試験を行ったRX-8ハイドロジェンRE
2004年に公道試験を行ったRX-8ハイドロジェンRE

2003年に水素ロータリーエンジン搭載の「RX-8」を発表し、2004年には水素とガソリンの2つの燃料が併用できる“デュアルフューエルシステム”を搭載した「RX-8ハイドロジェンRE」を開発して公道試験を行いました。デュアルフューエルシステムは、CO2排出量ゼロの水素エンジンとガソリンロータリーエンジン特有の力強い走りを両立させ、水素の充填ができない環境下でも、ガソリンで走れることが大きなメリットです。

その後、マツダは2015年にトヨタと包括的業務提携を結び、技術面で連携してお互いの得意分野を相互に活用することを決めました。この中でマツダは、トヨタが強みを持つFCEVの技術を提供してもらうことになっています。


カーボンニュートラルの実現に向けて、FCEVがどれだけ貢献できるか不透明な状況です。そのような中でマツダのような中堅メーカーは、巨額のリソースを必要とするFCEVでは技術供与を受け、マツダが得意とするエンジン技術が生かせる水素エンジンなどに注力するのは妥当だと思われます。

毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれません。

Mr.ソラン

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Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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