トヨタが大規模水電解システムを千代田化工と共同開発

■燃料電池とプラント建造技術の融合により国内外の水素製造市場に対応

千代田化工建設(千代田化工)とトヨタは、大規模水電解システムの共同開発・戦略的パートナーシップを構築し、協業基本合意書を締結したと発表しました。政府が策定した水素基本戦略に基づき、国内外を対象にした水電解装置導入の政府目標の達成に貢献するとしています。

水電解装置(高集積化されたトヨタ製水電解スタック群)
水電解装置(高集積化されたトヨタ製水電解スタック群)

この水電解装置導入量の政府目標は、2030年の世界導入量予測134GW(出展:IEAのGlobal Hydrogen Review 2022)で、部材メーカーを含む日本関連企業のシェアを約1割(15GW程度)と設定されてます。

大規模水電解システム(千代田化工によるスマート・スケーラブルエンジニアリング)
大規模水電解システム(千代田化工によるスマート・スケーラブルエンジニアリング)

今回の両社の基本合意では、トヨタが持つ燃料電池技術を使った水電解セル・スタックの生産や量産技術、千代田化工が持つプロセスプラント設計技術や大規模プラントの建造技術を融合。競争力のある大規模水電解システムを開発することで、急激に拡大する国内外の水素製造市場に対応するのが狙いです。

具体的には、世界最小レベルのサイズでありながら、水素の製造効率が高い水電解システムの開発が掲げられています。水素の使用量や設置面積の制約など、ユーザーの多様なニーズに対応できるように5MW級を原単位(設置面積:2.5m×6m、水素製造能力:約100kg/時間)として開発。組み合わせて標準パッケージ化することで、大規模な水電解システムが構築されます。

同装置は、一般的な設備に比べて約半分の設置面積に収まり、高いメンテナンス性が確保されます。輸送性や現地工事期間の短縮、土木、建築工事のコストダウン効果などのメリットがあるそうです。

また、トヨタが得意とする工業製品のノウハウと、千代田化工が得意とするプラントエンジニアリングのノウハウが融合され、最適化することで、グリーン水素の生産に必要な水電解システムのコストダウン、生産効率アップ、品質安定化などを実現するとしています。

トヨタ 水素ファクトリー チーフプロジェクトリーダー 濱村 芳彦(左)、千代田化工 常務執行役員 松岡 憲正
トヨタ 水素ファクトリー チーフプロジェクトリーダー 濱村 芳彦(左)、千代田化工 常務執行役員 松岡 憲正

両社の協業基本合意書の締結を踏まえ、2025年度からトヨタ本社工場の水素パーク内に水電解システムの導入が始められます。将来的には10MW級まで拡大され、実証や開発に活用していく予定。進捗などについても順次公開される予定です。

なお、両社は、東京ビッグサイトで2024年2月28日~3月1日に開催される「H2&FC EXPO」に出展します。

トヨタでは、水素の社会実装を目指し「作る」「運ぶ」「貯める」「使う」というバリューチェーン(価値連鎖)において、マルチパスウェイによる水素社会の実現を目指し、量産化を図る構えです。

(塚田勝弘)

この記事の著者

塚田勝弘 近影

塚田勝弘

1997年3月 ステーションワゴン誌『アクティブビークル』、ミニバン専門誌『ミニバンFREX』の各編集部で編集に携わる。主にワゴン、ミニバン、SUVなどの新車記事を担当。2003年1月『ゲットナビ』編集部の乗り物記事担当。
車、カー用品、自転車などを担当。2005年4月独立し、フリーライター、エディターとして活動中。一般誌、自動車誌、WEB媒体などでミニバン、SUVの新車記事、ミニバンやSUVを使った「楽しみ方の提案」などの取材、執筆、編集を行っている。
続きを見る
閉じる