バイク由来の水素「スーパーチャージャー」エンジンがカッコよすぎた【東京オートサロン2024×バイクのコラム】

■トーヨータイヤにあった4輪バギーはバイクメーカー協力の証

水素燃料エンジン実験車「HySE-X1」はダカール2024に参戦、見事に完走した。
水素燃料エンジン実験車「HySE-X1」はダカール2024に参戦、見事に完走した。

東京オートサロン2024、TOYO TIRESのブースには見慣れない「サイド・バイ・サイド(4輪バギー)」が飾られていました。そのカウルには「HySE」のロゴが入っています。

HySEとは”Hydrogen Small mobility & Engine technology”を縮めたものであり「技術研究組合 水素小型モビリティ・エンジン研究組合」の略称です。

そしてHySEを構成しているのは、川崎重工業株式会社、カワサキモータース株式会社、スズキ株式会社、トヨタ自動車株式会社、本田技研工業株式会社、ヤマハ発動機株式会社の6社(五十音順)。国内の4大バイクメーカーが集結している研究組織です。

トーヨータイヤのブースで展示されていたサイド・バイ・サイド『HySE-X1』は、HySEで研究している水素エンジンを積んだ、2024年のダカールラリーに参戦したマシンのレプリカ。同社の「オープンカントリーS×S」を採用している縁で展示されていたというわけです。

●カワサキH2系のスーパーチャージドエンジンを搭載?

カワサキの「スーパーチャージド」エンジンではおなじみのロゴも確認できた。
カワサキの「スーパーチャージド」エンジンではおなじみのロゴも確認できる。

車体の後ろ側(ミッドシップ)に搭載されたエンジンを確認してみると、バイクファンなら見慣れた「SUPER CHARGED」の文字が確認できました。

公表されているエンジンのデータから総排気量は998cc、水冷4ストローク直列4気筒DOHC 4バルブということですから、カワサキのNinja H2などに搭載されているスーパーチャージドエンジンをベースにした水素エンジンであることがわかります。

「SUPER CHARGED」の文字が緑色に塗られているのは、カーボンニュートラル燃料である水素のクリーンさをアピールするものでしょう。

カーボンニュートラル、つまり炭素を含まない燃料としてのウィークポイントは、体積あたりの熱量が、化石燃料に比べて小さい点にあります。過給することで必要なパワーを絞り出すというのは、水素エンジンにおいては有効な手段といえます。スーパーチャージドエンジンは、そうした点において水素エンジンと相性が良いといえるのかもしれません。

●水素タンクの搭載など課題はあるが…期待大

車両のカタチとしては4輪バギーだが、二輪も含めた水素エンジンの研究開発がテーマ。
車両のカタチとしては4輪バギーだが、二輪も含めた水素エンジンの研究開発がテーマ。

東京オートサロン2024では、ヤマハ発動機も水素エンジンの4輪バギーを展示していました。日本ではあまり馴染みのないカテゴリーにおいて、水素エンジンというソリューションでカーボンニュートラルを実現するというのは、ある意味でトレンドとなっています。

水素は体積あたりの熱量が小さいという欠点があると記しましたが、逆に”重量当たりの熱量は非常に大きい”という特徴も持っています。モビリティの電動化においてバッテリーが車体を重くしてしまうことは、ジレンマになっています。

航続距離を求めると、結果的に「バッテリーを運んでいる」ようなパッケージになってしまうからです。そうした傾向は、小型モビリティになるほど顕著になります。

4輪バギーはサイド・バイ・サイドとも呼ばれる。トーヨータイヤが開発した専用タイヤ「オープンカントリーS×S」を履く。
4輪バギーはサイド・バイ・サイドとも呼ばれる。トーヨータイヤが開発した専用タイヤ「オープンカントリーS×S」を履く。

さほど航続距離を気にしないで済むような、近距離ユースの超小型モビリティについては、燃料補給よりも家庭用コンセントで充電できる電動化が向いているでしょうが、中長距離を前提とした小型モビリティ(バイクやバギーなど)においては、多量のバッテリーを積むより、水素エンジンのほうがユーザーニーズに合ったパッケージにできる可能性もあるといえます。

ただし、安全性を考慮した水素タンクはまだまだ大きくなってしまいがちなのは課題。一般ユーザーが使うようなバイクを水素エンジン化するには、水素タンクを小型化する技術革新が必要といえます。HySEには、そうした領域におけるイノベーションも期待したいものです。

自動車コラムニスト・山本 晋也

この記事の著者

山本晋也 近影

山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
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