目次
■リーフの電動化技術を利用した路線EVバスの実証試験を計画
2018(平成30)年1月19日、日産自動車は同年2月から熊本市内で実証実験走行を始めるEVバス「よかエコバス」に、技術サポートしたことを発表しました。
同日、熊本市で行われたセレモニーで披露されたEVバスには、「リーフ」に使われているバッテリーやモーター、インバーターなどが利用されました。
●「よかエコバス」のベースは、大型車用EVシステムの技術開発プロジェクト
「よかエコバス」は、熊本大学が中心に進める環境省の委託プロジェクト「EVバス、トラックの普及拡大を可能とする大型車用EVシステム技術開発」によって開発されたEVバスです。
このプロジェクトは、乗用車用として普及しているバッテリーやモーターを活用することによって、コストを大幅に抑えた大型EVを製造する技術の確立が目的。日産は、この路線バスの環境対策に取り組むプロジェクトに賛同し、EVバスの開発に必要な基本技術の提供、EVバス専用のギヤボックスの開発、EVシステムに関する技術サポートを行ったのです。
開発された「よかエコバス」は、1月19日に熊本市で行われたセレモニーでお披露目され、2月から運行を開始、1日6便で熊本市と益城町を1年間走行。この実証試験によって、車両やシステムの運行データ、電力量などを計測し、動力性能や環境性能、最適な充電方法などを検証していきました。
●EVバスに必要なEVシステムの基本性能
路線バスとして運行する実用性のあるEVバスの具体的な目標は、一般的なディーゼルバス比+1000万円の低価格で実現可能な大型車用EVシステム技術を開発し、様々な車両工場で生産可能とすることです。
熊本大学では、「よかエコバス」の基本性能について以下の設定を行いました。
・動力性能
路線バスとして最大出力は170kW(231PS)程度必要なことから、モーター出力は190kW(258PS)
・航続距離
ほとんどの路線バスは、運行中に数回の車庫駐車時間があり、車庫から出て次の入庫までの走行距離は50km程度であることから、バッテリー容量は連続走行距離50kmをカバーできるバッテリー容量120kWh
これらの技術目標がクリアできれば、性能的には現行の路線バス並みで、CO2の排出ゼロに加えて、EV特有のスムーズな加速や静粛性などが期待できます。
●リーフのEVシステムを利用してコストを低減
上記の要求性能を実現するために、日産はリーフのEVシステムをベースに技術サポートを行いました。
バッテリーは、2代目リーフで使われているリチウムイオン電池パック(容量40kWh)を3セット、同じくモーターは110kWを2セット減速機で連結して190kWの高出力モーターとし、加えてエアコン等のコンプレッサやポンプを回すための補機用モーター1セットも搭載、それらを駆動させるインバーターが使われました。
大型バスのEV化は、対応する専用のバッテリーやモーターなどの部品、EVシステムの開発にかかる高いコストが普及への大きな課題です。今回開発された「よかエコバス」では、量産リーフで使われているEVシステムを使って、コストを大幅に抑えることに成功したのです。
乗用車のEV化は進んでいますが、日本で走っているEVバスのほとんどは中国製で、日本の大手メーカーのEVバスはありません。最近になって、いすゞ自動車と日野自動車が2024年からEV路線バスとしてのEVバスの生産を行うと発表。遅ればせながら、やっと重い腰を上げ始めたようです。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれません。
(Mr.ソラン)