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■交通革命を起こした馬車鉄道が開業
1882年(明治15年)の1月5日、馬車鉄道が新橋~日本橋間で開通しました。
馬車鉄道は、鉄製のレールの上の客車を馬が牽引する乗り物です。原始的なようですが、これが後の都電や市電など路面電車として発展し、交通革命を起こす引き金になったのです。
●馬車鉄道は、庶民に浸透した初めての公共交通機関
世界初の馬車鉄道は、1807年に英国ウェールズ地方のオイスターマス鉄道で、既存の路面電車のレールを利用したもので、マンチェスター~リヴァプール間の主として綿製品の輸送などに活用されました。
それから遅れること75年、1882年に東京馬車鉄道が新橋~日本橋間で馬車鉄道を開業し、同年には早くも日本橋~上野~浅草~日本橋へと至る環状線も開通しました。
すでに馬車や乗合馬車などは運行していましたが、未舗装の荒れた道路の走行は不安定で乗り心地が悪く、加えて輸送量もあまり期待できませんでした。一方、敷設されたレール上を走る馬車鉄道は、抵抗も少なくスムーズに走るため、輸送のスピードアップや効率化、さらには乗り心地も改善されたのです。
また、馬車鉄道は比較的裕福な層が利用する馬車や人力車に比べて運賃が安く、庶民が手にした初めての公共交通機関として瞬く間に全国へと拡大し、乗客数は年間900万人を超えるほど普及しました。
●馬車鉄道から路面電車への動きが加速
全国に普及して営業面では好調な馬車電車でしたが、課題もありました。
レールの敷設による道路の破損や運行が増えたことによる接触事故の多発、さらには馬の糞尿問題に周辺住民からの苦情が多く寄せられていたのです。これを受け、道路の整備や拡張をはじめ、馬車鉄道に合った道路づくりが行われましが、簡単には課題は解決できませんでした。
この課題は、日本より普及していた欧米でも同じで、代替機関として電気を使った路面電車の開発が急がれました。日本で初めて馬車鉄道が走った翌1983年には、ドイツの電機会社シーメンスが開発した路面電車がベルリン郊外で定期運航を始め、米国でも1986年にアラバマ州やペンシルベニア州で路面電車が走り始めました。
日本でも、1980年に上野公園で開催された第3回内国勧業博覧会で、東京電燈株式会社が米国から購入した電車を一般に公開。会場内で臨時に敷設された約500mのレールで試運転され、路面電車の必要性が叫ばれるようになったのです。
●京都の路面電車が引き金となり、馬車鉄道から路面電車に移行
日本で初めて路面電車が運行したのは、馬車鉄道の運行から13年経った1895年、京都電気鉄道の伏見線(七条停車場前~伏見町京橋下油掛通間)でした。これは、日本初の電気鉄道でもありましたが、その後京都電気鉄道は京都市に買収され、京都市営電気鉄道となりました。
京都での成功が引き金となり、3年後の1898年には名古屋電気鉄道が開業し、続いて東京でも東京馬車鉄道が1900年に東京鉄道と改称し、馬車鉄道だった路線をすべて電化し、その後東京市電(のちの都電)となったのです。
昭和に入ると路面電車は全盛期を迎え、鉄道ファンが憧れる車両も、この時期に数多く誕生しましたが、路面電車も自動車の普及とともに1960年代には次々と廃業に追い込まれました。現在は、全国17路線と数は少なくなりましたが、風情のある街の乗り物として愛され続けています。
古代から馬は交通や輸送手段の中心でした。自動車のエンジンの出力(仕事率)を馬力という単位で表すことからも、馬が人類発展のために大きく貢献してくれたことがよく分かりますね。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかも知れません。
(Mr.ソラン)