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■高い快適性や環境性能を実現する新技術や新機能に期待
近年は、2輪車にも様々な新しい機能や技術が投入されることで、より安全かつ爽快な走りが楽しめるモデルが増えてきました。
特に、ライディングを自在に楽しむことが好きなユーザーも多いスポーツバイクには、路面状況に応じて後輪のスリップを抑えるトラクションコントロールなど、電子制御システムの搭載も今や当たり前。まさに、日進月歩といえるほど、高性能化が進んでいます。
そんなスポーツバイクですが、ここでは2024年に登場予定のモデルたちのなかで、筆者的に特に注目な新しい機能や技術を搭載するモデル3台をピックアップして、紹介してみます。
●ホンダ・CBR650R
初代ホンダ「CBR650R」のオーナーである筆者にとって、かなり気になるのが2024年モデルです。イタリアで2023年11月に開催されたEICMA2023(通称:ミラノショー)でホンダが発表した新型には、世界初の「ホンダ E-クラッチ(Honda E-Clutch)」が投入されているからです。
CBR650Rは、最高出力95PSを発揮する648cc・水冷4ストローク直列4気筒を搭載するフルカウルスポーツ。セパレートハンドルやカウリング、扱いやすいエンジン特性などにより、ツーリングからスポーツ走行まで、幅広いシーンに対応する軽快な乗り味が魅力のモデルです。
そんなCBR650Rの2024年モデルに搭載されるホンダ E-クラッチは、ホンダによれば世界初の「2輪車用有段式マニュアルトランスミッションのクラッチコントロールを自動制御する」システムとのこと。
これにより、ライダーはクラッチレバーの操作なしで発進から変速・停止まで可能。たとえば、変速操作はシフトペダルだけでできるため、まるでクイックシフターのように素早く、確実なギアシフトをすることができるといいます。
ちなみに、筆者が乗る初期型や現行モデルの場合、クイックシフターはオプション設定。しかも、シフトアップにしか対応していないので、シフトダウンも楽にできるのはきっと重宝することが予想されます。
また、発進や停止時も、クラッチレバーを握る必要なし。ストップ&ゴーが連続する渋滞時などの疲労を軽減してくれそうです。
加えて、極低速走行時にクラッチレバーの操作ミスなどでエンストし、立ちゴケしてしまうような心配も無用。バイクの操作にあまり自信のない初心者やリターンライダーでも、安全に走ることができそうです。
しかも、通常のクラッチレバーを使ったマニュアル変速も可能。バイクはやっぱりクラッチとブレーキ、アクセルを駆使して乗りたいという、筆者も含めた昔からのバイクファンの好みもちゃんと掴んでいますね。
なお、このE-クラッチは、CBR650Rと同じエンジンや車体を持つ兄弟車のネイキッドモデル「CB650R」にも搭載しています。
また、新型2モデルは、いずれもデザインを若干変更。CBR650Rでは、デュアルLEDヘッドライトのデザインを変更し、上下カウリングも一新。CB650Rでは、新型デザインのLEDヘッドライトを装備するなどのアップデートを受けています。
まだ、日本仕様車については、いつ頃出るのかや価格など、詳細に関するアナウンスはありませんが、なかなか興味深いモデルであることは確かです。
ちなみに、現行のCBR650Rは107万8000円〜111万1000円、現行のCB650Rが100万1000円〜102万3000円。おそらく、E-クラッチの搭載で、どちらの新型も価格アップになる可能性は高いでしょうね。
●ヤマハ・MT-09
ヤマハ発動機(以下、ヤマハ)が、同じくEICMA2023で発表した新型の900ccネイキッドスポーツ「MT-09」は、筆者的には、ハンドルバーの高さやステップ位置が可変式になっていることが注目です。
MT-09は、アグレッシブなスタイルや、街中からワインディングまで軽快に走れることが魅力のヤマハMTシリーズに属するミドルサイズモデルです。
2021年にフルモデルチェンジを受けた現行モデルは、3気筒エンジンの排気量を845ccから888ccにアップし、最高出力は120PSを発揮。ピストンやコンロッドなど多くの主要パーツを新設計することで、パワートレインの軽量化も実現しています。
また、CFアルミダイキャスト製フレームや、超軽量に仕上げた「スピンフォージド・ホイール(SPINFORGED WHEEL)」など数々の独自の技術により、車両重量189kg〜190kgという軽い車体も魅力。街乗りからワインディング、高速道路まで、幅広いシーンで特に、軽快なハンドリングを楽しめます。
そんなMT-09の2024年モデルでは、まず、車体を改良。エンジン懸架を変更して剛性を高める一方、フロントまわりの剛性をやや抑え気味にチューニングするなどで、より幅広い領域での安定感と軽快さの両立を実現しています。
そして、筆者が注目するライディングポジション関連の新装備。まず、ハンドルバーの位置を2段階に調整できることで、好みの高さに設定することが可能です。また、フットレストにも位置変更が可能なアジャスタブルタイプを採用。これらのマッチングにより、ライダーの体格やラインディングスタイルの違いに対応したセッティングを可能とし、より自由度が高い乗車姿勢を実現しています。
従来、バイクのポジションは、ハンドルやステップを社外品に変えたり、リヤサスのイニシャル調整やユニット交換など、カスタマイズを行うことで変更することが一般的でした。MT-09の新機構が、そうしたことをしなくても、オーナーの好みや体格にマッチできるかどうかは注目です。
なお、新型MT-09では、ほかにも出力特性やトラクションコントロールなどのモードを統合的に切り替えることができる「YRC(ヤマハライドコントロール)」を搭載。高速道路などで、アクセル操作なしで設定速度を維持する「クルーズコントロールシステム」なども新追加することで、ロングツーリングなどでの快適性も追求しています。
こちらの日本仕様についても、ヤマハからは「2024年春以降の予定」といったアナウンスだけで、価格など詳細は未発表です。また、現行モデルに設定がある上級グレード「MT-09SP」が、新型にも登場するのかなども明らかになっていませんが、アップデートされた2024年モデルが一体どんな乗り味を体感させてくれるのか、今からとっても気になります。
ちなみに、現行のMT-09は、スタンダードが114万4000円、上級グレードのMT-09SPが133万1000円。こちらも、おそらく新型になって価格は上がりそうですが、どの程度のアップになるのかも注目です。
●カワサキ・ニンジャ7ハイブリッド
カワサキモータース(以下、カワサキ)が、2023年10月のジャパンモビリティショー2023で国内初披露したミドルサイズのフルカウルモデル「ニンジャ7ハイブリッド(Ninja 7 Hybrid)」は、2輪車で世界初のストロングハイブリッドを採用している大注目モデルです。
ストロングハイブリッドとは、エンジンと電気モーターの2つのパワートレインを搭載するシステムのこと。発進時などに電動モーターがエンジンの動力をアシストする「マイルドハイブリッド」と区別する場合によく使われる用語で、トヨタ「プリウス」など、4輪車ではおなじみのシステムだといえます。
そんなストロングハイブリッドを採用したニンジャ7ハイブリッドでは、パワートレインに451cc・水冷並列2気筒エンジンと、カワサキが「トラクションモーター」と呼ぶ電動モーターをマッチング。
また、一般的なバイクが変速操作をシフトペダルで行うのに対し、このモデルでは、6速ボタンシフトミッション機構を採用します。
さらに、状況などに応じ、ライダーは以下の3つの走行モードを選択することが可能です。
1:エンジンとモーター、ふたつのパワーユニットのポテンシャルをフルに引き出す「スポーツハイブリッド(SPORT-HYBRID)」
2:トラクションモーターで発進し、EVからHEVへシームレスに移行し高い燃費性能を実現する「エコハイブリッド(ECO-HYBRID)」
3:静粛で低振動、しかもゼロエミッションの低速・近距離用「EV」モード
そして、これらにより、高い環境性能と自在に操れる楽しさを両立。まさに「次世代のモーターサイクル」と呼べる走りを堪能できるといいます。
ちなみにカワサキは、このモデルの兄弟車として同じパワートレインや車体を持つネイキッド版の「Z7ハイブリッド(Z7 Hybrid)」を、前述したイタリアのEICMA2023で発表。ニンジャ7ハイブリッドと共に、国内でも販売することを明かにしています。
これらの国内仕様車も、まだ価格や正式な発売時期など詳細は未発表ですが、電動モーターとエンジンを組み合わせることでどんな走りを味わえるのかが注目。また、どのくらいの燃費性能を持つのかも、かなり気になりますね。
(文:平塚 直樹)