三菱「デリカD:5」にディーゼル復活。ガソリン車より約36万円高い「ポスト新長期規制」対応のクリーンディーゼル車を追加【今日は何の日?12月27日】

■人気のデリカD:5にディーゼル車が8年ぶりの復活

2012年に追加されたディーゼルのデリカD:5
2012年に追加されたディーゼルのデリカD:5

2012(平成24)年12月27日、三菱自動車は人気のミニバン「デリカD:5」に、「ポスト新長期規制」対応のクリーンディーゼルエンジン搭載車の追加を発表しました。

国内販売が許される車に課せられた排出ガス規制。達成が義務付けられた厳しいポスト新長期規制でしたが、2010年の「パジェロ」ディーゼルで開発された後処理システムが流用アレンジされ、デリカD:5は規制をクリアしていきました。


●ロングセラーを続けるデリカの歴史

1979年にデビューした2代目デリカ
1979年にデビューした2代目デリカ

1968年に誕生した初代デリカは、ラダーフレームにキャブオーバーの3人乗りキャビンを組み合わせた小型トラックでした。クラス初の前席3名乗車がアピールポイントで、エンジンは乗用車「コルト1100」の1.1L直4 OHVを搭載。翌年の1969年には、リアに上開きのドア、左側面にスライドドアを設けたワンボックス型の商用車と、9人乗りの乗用ワゴン「デリカ・コーチ」、「デリカ・ライトバン」が発売されました。

1986年にデビューした3代目デリカ・スターワゴン
1986年にデビューした3代目デリカスターワゴン

乗用ワゴンのデリカ・コーチが、その後1979年に2代目デリカへと進化。3代目「デリカスターワゴン(1986年~)」と4代目「デリカスペースギア(1994年~)」は、パジェロとともにRVブームを牽引する人気モデルとなります。

1994年にデビューしたデリカ・スペースギヤ
1994年にデビューしたデリカスペースギヤ

特にディーゼル車は、太い低中速トルクと優れた燃費で人気を獲得し、デリカの人気を支えていましたが、2004年に定められた排出ガス規制の「新短期規制」への対応が困難なことから、ディーゼル車の投入は一旦中断されたのです。

●RVブームが去り、SUV化したデリカD:5がデビュー

2000年を過ぎた頃にはRVブームが去り、代わりにSUVが市場で人気を集め始めました。それに対応するため、2007年に登場した5代目「デリカD:5」のプラットフォームは、パジェロベースからSUVのアウトランダーベースに切り換えられました。

2007年にデビューしたデリカD:5
2007年にデビューしたデリカD:5

エンジンは、アウトランダーと同じ2.4L直4 MIVEC(三菱可変バルブ機構)を搭載。最大のアピールポイントの4WDシステムも、やはりアウトランダーで採用中の電子制御4WDが採用されました。これは、前後輪のトルク配分を適正に制御するシステムで、2WD/4WD/4WDロックと、3つのモードを選択できるシステムです。

13年振りのモデルチェンジであり、スタイリングもスポーティに変貌したことから、デリカの人気回復に成功しました。

●DPF+NOx吸蔵触媒で排ガスをクリアしたクリーンディーゼル車投入

人気を獲得したデリカD:5でしたが、市場からは2004年に投入を止めたディーゼル車待望の声が根強くありました。その声に対応するため、デビュー5年後の2012年にポスト新長期対応のクリーンディーゼル搭載車が追加されたのです。

2.2Lコモンレールディーゼルエンジン
2.2Lコモンレールディーゼルエンジン

排ガス規制に対応するために、新しく開発した2.2L直4 コモンレール直噴エンジンに、DPF(ディーゼル・パテキュレート・フィルター)とNOx吸蔵触媒を組み合わせた後処理システムを採用。これは、2010年にパジェロ用に開発された後処理システムをデリカ用にアレンジしたものです。トランスミッションは6AT、駆動方式はもちろん4WDですが、FFも用意されました。

車両価格は、標準的なガソリン車のGパワーパッケージの316万円に対して、クリーンディーゼルのDパワーパッケージが351.7万円と、ディーゼル車は約35.7万円高価でした。ディーゼルエンジンそのものが高いことに加えて、排ガス低減のための後処理システムが加わってのコスト上昇が価格差の要因です。


燃費に優れたディーゼル車ですが、排ガス規制対応システムのコストが高いという課題は本質的な問題なので、今後も解消することは困難でしょう。脱炭素社会の動向もあり、ディーゼル車が今後増えるとは考えにくいのですが、デリカのようなアウトドアを楽しめるオフローダーは、ディーゼル特有の太いトルク特性が威力を発揮するので、今後もファンは絶えず生き残っていくと思われます。

毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれません。

Mr.ソラン

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Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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