125ccバイクでも2段階右折が必要になる!? 検討が進む「新基準原付」とは

■原付バイク絶滅を防ぐための新基準

現在、警察庁では、原付免許で乗ることができる原付バイクについて、エンジンの総排気量を50cc以下から125cc以下にすることを検討しており、最高出力を4kW(5.4PS)以下に抑えた「新基準原付」であれば、現行の原付バイクと同じ扱いにする方針を公表しました。

新基準原付が導入されると、125cc以下のバイクのナンバーや法規などはどうなる?
新基準原付が導入されると、125cc以下のバイクのナンバーや法規などはどうなる?

これは、現行の50cc以下とされている原付バイク(道路運送車両法上の第一種原動機付自転車)は、2025年(令和7年)11月から施行される新しい排気ガス規制に対応させることが技術や費用面で難しく、このままでは生産や販売ができず、絶滅してしまう可能性があるからです。

でも、125cc以下のバイク(道路運送車両法上の第二種原動機付自転車)は、現在、運転免許こそ小型限定以上の普通二輪免許が必要ですが、法定速度は60km/hで、2人乗りができ、2段階右折も不要。

一方で、50cc以下のバイクの場合は、原付免許か普通免許の取得で付帯されることで、運転免許の取得が比較的簡単。でも、法定速度は30km/hで、2人乗りは不可、2段階右折も必須といった違いがあります。

では、もし新基準原付が導入されると、125cc以下のバイクでも、原付と同じ規制が導入されてしまうのでしょうか?

●排気量は125cc以下でも、最高出力を制限

今回、警察庁が公表した方針は、2023年9月から実施している「二輪車車両区分見直しに関する有識者検討会」の報告書が、2023年12月21日に発表されたことを受けたものです。

「二輪車車両区分見直しに関する有識者検討会」報告書概要(出展:警察庁)
「二輪車車両区分見直しに関する有識者検討会」報告書概要(出展:警察庁)

この検討会は、学識経験者や交通安全などに関わる実務経験者、日本自動車工業会などの業界関係者などが集まったもの。総排気量125cc以下のバイクについて、前述の通り最高出力を4.0kw(5.4PS)以下に制御することで、現行の50cc以下の原付バイクと同じ区分にすることが妥当か否かを検討したものです。

つまり、ここでいう新基準原付とは、排気量は125cc以下だけれど最高出力を制限することで今の原付バイクと同等の性能にし、法律上の扱いも同じにするバイクだといえます。

検討会では、関係者からのヒアリングなどに加え、実際に最高出力を4kW(5.4PS)以下に制御した125ccや110ccのバイクの走行評価も実施。熟運転者(技能試験官)や一般ライダーなどに試乗してもらったインプレッションにより、新基準原付が現行の原付と同じ性能などになり、原付ライダーが安全に走れるのかなどの検討も行いました。

新規樹原付を想定したバイクの走行評価、習熟運転者らが実施(出展:警察庁「二輪車車両区分見直しに関する有識者検討会」報告書)
新規樹原付を想定したバイクの走行評価、習熟運転者らが実施(出展:警察庁「二輪車車両区分見直しに関する有識者検討会」報告書)

それらの結果、検討会では、前述の報告書で

・「現行制度を前提に、新基準原付を原付免許で運転できる区分となるよう、道交法体系上の見直しを行うこと」
・「新基準原付の扱いが、現行原付と整合するように関係諸制度を改めること(外見上の識別・車両法体系の区分等)」
・「区分の前提となる出力制御について、適切な不正改造防止措置を講じるとともに判別できるよう取り組むこと」

といった内容の結論を発表。

そして、新基準原付を原付免許で運転できるようにするために法律の見直しをすべきといった検討会の提言に対し、警察庁は、

「検討会の結論を踏まえ、今後、関連する諸制度の見直しと歩調を合わせて、道交法施行規則を見直す」

といった方針を公表したのです。

●同じ125cc以下のバイクでもナンバーが変わる?

これにより、おそらく2025年までには、最高出力4kW(5.4PS)以下に制御した総排気量125cc以下のバイクが、新基準原付として登場する可能性が高くなりました。

現在の車両区分(出展:警察庁「二輪車車両区分見直しに関する有識者検討会」報告書)
現在の車両区分(出展:警察庁「二輪車車両区分見直しに関する有識者検討会」報告書)

でも、現在、125cc以下のバイクは、道路交通法では普通自動二輪車、50cc以下のバイクは一般原動機付自転車に該当し、公道を走る際の規定や規制も違います。

たとえば、50cc以下のバイクでは、法定速度30km/h、2人乗り禁止、2段階右折が必要。一方、125cc以下のバイクは、法定速度60km/h、2人乗りOK、2段階右折は不要といった違いがあります。

また、運転免許は、50cc以下のバイクであれば、学科試験などより容易に取得できる原付免許か、普通自動車免許などを取得すると付帯されます。一方、125cc以下のバイクでは、技能試験もある小型限定以上の普通二輪免許を取得しないと運転できません。

これに対し、前述の検討会では、報告書のなかで

「小型自動二輪車との区別がつくように外見上の識別性を確保する」
「出力を制御していない小型自動二輪車までも原付免許で運転できるようになったとの誤解が生じないよう、周知に努める」

といった内容の言及。つまり、今回もし法律の改正などが行われる場合は、同じ排気量125ccや110ccのバイクでも、

最高出力4.0kw(5.4PS)以下に制御=新基準原付
最高出力の制限なし=現行の排気量125cc以下のバイクと同じ

といった感じになるようです。

現行のナンバープレート区分(出展:警察庁「二輪車車両区分見直しに関する有識者検討会」報告書)
現行のナンバープレート区分(出展:警察庁「二輪車車両区分見直しに関する有識者検討会」報告書)

ただし、そのためには、外見上でも新基準原付との区別が必要。これは、たとえば、ナンバープレートの色で区別することが考えられます。

現行の法規では、原付バイクは白で、50cc超〜90cc以下のバイクは黄色、90cc超〜125cc以下のバイクはピンク。

それが、新基準原付が導入されると、たとえば、同じ排気量125ccバイクでも、ナンバープレートが白なら新基準原付、それ以外は黄色かピンクといった感じです。

また、法定速度や2人乗り、2段階右折なども、新基準原付は現在の原付バイクと同じ、それ以外は、現在の125cc以下のバイクと同じとなることが予想されます。

いずれにしろ、検討会の報告会でも言及している通り、「出力を制御していない通常の125cc以下のバイクも原付免許で運転できるようになった」といった誤解が生じないようにして欲しいもの。

また、報告書では、これも先に紹介した通り、最高出力が制限された新基準原付のパワーアップを行う不正改造などができないような措置も必要と言及。取得が簡単な原付免許で乗れる新基準原付を、機能や技術面の含め、安全に乗るために必要な対策をすべきとしています。

以上は、あくまで検討会の報告書がベースで、まだまだ新基準原付の詳細はこれから。でも、通勤・通学や買い物など、日常の足として便利な原付バイクだけに、ぜひ絶滅の危機を回避してもらいたいですね。

(文:平塚直樹

この記事の著者

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平塚 直樹

自動車系の出版社3社を渡り歩き、流れ流れて今に至る「漂流」系フリーライター。実は、クリッカー運営母体の三栄にも在籍経験があり、10年前のクリッカー「創刊」時は、ちょっとエロい(?)カスタムカー雑誌の編集長をやっておりました。
現在は、WEBメディアをメインに紙媒体を少々、車選びやお役立ち情報、自動運転などの最新テクノロジーなどを中心に執筆しています。元々好きなバイクや最近気になるドローンなどにも進出中!
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