■酒酔いは警察官の判断、酒気帯びはアルコール濃度で決まる
年末年始はお酒を飲む機会が増えます。「ちょっとしか飲んでいないから大丈夫だろう」という誤解から、飲酒運転も増える時期です。
警察庁の令和4年中の交通事故の発生状況データによると、飲酒運転の死亡事故率は飲酒していない死亡事故率の7.1倍と、かなりの高確率になっています。このデータから、飲酒運転による交通事故が死亡事故につながる危険性が極めて高いことが窺えます。
飲酒運転がなぜ危険なのかというと、飲酒により血中アルコール濃度が高まることによって、中枢神経の麻痺をはじめ、「集中力が鈍る」「理性・自制心が低下する」「身体の平衡感覚が狂う」「視力が落ちて視野が狭くなる」といった症状が生ずるためです。
その結果、運動能力が低下してブレーキやアクセル、ハンドルの操作が遅れ、大きな事故を引き起こす原因となります。したがって絶対に飲酒運転をしてはいけませんし、また運転者に飲酒をすすめてもいけません。飲酒した運転手の同乗者や、車両提供者も同様に罰せられる可能性がありますので、「自分は免許がないから」といって安心せず、周囲に注意する心づもりを常に持ちましょう。
●飲酒運転の処分は重いものばかり!
さて、その飲酒運転には「酒酔い運転」と「酒気帯び運転」の2つがあります。どちらもお酒を飲んで運転しているのだから、酒酔い運転では? と思われるかもしれません。確かにそうなのですが、法規的には酒酔い運転と酒気帯び運転では処分が大きく異なります。
「酒酔い運転」は「アルコールの影響によって正常な運転ができない恐れのある状態」であるかどうかです。具体的な検査としては、直線の上を歩かせてまっすぐに歩けるかどうか、また言語などから判断・認知能力の低下がないか、などを調べられます。つまり、検査をする警察官が客観的に見て、酔っているかどうかで判断されます。
一方の「酒気帯び運転」は、血液中や呼気に含まれるアルコール濃度の量によって該当するかどうかが判断されます。酒酔い運転とは判断基準が異なるので、運転者の体質次第では酒気帯び運転の基準に満たない飲酒量でも酒酔い運転となります。
2007年と2009年に飲酒運転に対する法改正が行われ、罰則が重くなりました。現在では酒気帯び運転は3年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科せられます。違反点数は呼気中のアルコール濃度によって変わり、0.15mg以上0.25mg未満が13点、0.25mg以上だと25点となります。
酒酔い運転は5年以下又は100万円以下の罰金という重い刑事罰が科せられ、違反点数に関しても35点(取り消し3年)です。酒酔い運転はクルマやバイクだけでなく、自転車などの軽車両でも違反であり、罰則の対象となります。最近増えてきた電動キックボードも、もちろん罰則の対象に含まれます。「飲んだら乗るな!」を必ず守ってください。
また、令和4年より自動車を使用(乗車定員が11人以上の自動車1台以上、もしくはその他の自動車5台以上を保有する事業所)する事業所には「安全運転管理者による運転者の運転前後のアルコールチェック」が義務化されています。10月1日以降はアルコール検知器を使った確認が義務となっており、「アルコール検知器を常時有効に保持する」ことも求められています。
言い古された標語ではありますが、やっぱり「飲んだら乗るな、乗るなら飲むな」! お酒を飲む機会の増えるシーズンには、改めて意識し、安全運転を日々心がけましょう。
(萩原文博)
※2022年1月7日の記事を2023年12月22日に追記・再編集しました。