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■高級車中心のカスタムから、スポーツカーのチューニングへと原点回帰したTOM’S
日本で開催されているモータースポーツの箱車最高峰といえば、スーパーGTです。
2023年シーズンはau TOM’S GRスープラが3勝をあげて、シリーズチャンピオンに輝きました。またスーパーフォーミュラでもVANTELIN TEAM TOM’Sの宮田莉朋選手がドライバーズチャンピオンに輝くなど、素晴らしい成績を残しました。
TOM’S(トムス)というとモータースポーツのイメージが強いブランドですが、実は市販車をベースとしたコンプリートカーも販売しています。
今回は、TOM’Sが手掛けたGR86とGRヤリス2台のコンプリートカーを、ドリキンこと土屋圭市さんがサーキットで全開インプレッションを行いましたので、その評価とともにTOM’Sとは一体どのような会社なのかを紹介します。
●レースだけじゃない! 創業約50年、老舗チューニングパーツ&コンプリートカーメーカーでもあるTOM’S
TOM’Sは1974年2月に設立され、まもなく50周年を迎える会社です。トヨタのファクトリードライバーだった舘信秀氏と、トヨタディーラーのスポーツコーナー責任者だった大岩湛矣氏によって「株式会社トムス」が設立されました。
1975年にはトヨタチューニングショップ認定を受けるのを皮切りに、1978年には初のオリジナルホイールであるトムスラリーを発売。1980年には2TGエンジン用のピストンキットを発売するなど、メカニカルなチューニングを得意としていきます。
そして1996年には、TOM’Sの製品が全国のトヨタ自動車販売店で販売されるようになり、同時にTOM’SのサスペンションキットであるAdvox(アドヴォクス)を発売します。
2000年には、全国のビスタ系販売店を通じてトヨタ自動車のラインを使用して製造されたコンプリートカーの「VA300TOM’S」を限定200台発売。また、2002年には、ハイパーコンプレッサーを装着したコンプリートカーの「F070セルシオGT」を発売するなど、チューニングカーを高級車へとシフトしていきます。
この頃からTOM’Sのチューニングといえば、コンピューターを書き換えてパワーアップしたり、ブレースと呼ばれる補強パーツをボディに装着したりするのが中心となっていました。
しかし、2020年コンプリートカー「TOM’S SUPRA」と「TOM’S CENTURY」を発表。高級車のチューニングに加えて、TOM’Sにとって原点回帰とも言える、スポーツカーのコンプリートカー開発も再開したのです。
●GR86 TSとGRヤリスTSS340をサーキットに持込み全開テスト!
今回、TOM’Sがサーキットに持ち込んだコンプリートカーは「TOM’S GR 86 TS」と「TOM’S GRヤリスTSS340」の2台。それそれのチューニングメニューを紹介しましょう。
【TOM’S GR 86 TS】
TOM’S GR 86 TSは、ベース車両であるGR86の持つ素性の良さはそのままに、TOM’Sが考える「FRスポーツ」を具現化したモデルです。
外観ではフロントディフューザーをはじめ、サイドディフューザー、リアバンパーサイドフィン、トランクリッドスポイラーで空力性能を向上。さらにエキゾーストシステム「トムス・バレル」を装着しています。
走行性能面では、サスペンションにはしなやかで懐の深いサスペンションフィールが特徴なAdvox Sportsを装着。アーム、ブッシュ類の最適化と減衰力20段調整の全長調整式ダンパー&専用スプリングを使用しています。
さらにクラッチ、1.5way専用セッティングのLSDを搭載しています。ホイールには軽量かつ高剛性を両立した18インチの鍛造ホイール「TWF04」を装着。タイヤはフロント215、リア225サイズと、フロント/リアともタイヤ幅を変更したブリヂストン ポテンザRE-71RSで、回頭性と操縦安定性の両立を図り、弱アンダー傾向の乗り味が特徴のライトチューンなモデルです。
【GRヤリスTSS340】
一方のTOM’S GRヤリスTSS340は、最高出力を340psまで高めたフルチューンモデル。外観はフロントディフューザーをはじめ、カナード、サイドディフューザー、TKリアアンダーディフューザー、TKリアバンパーダクト、リアルーフウイングで空力性能を向上。
搭載する1.6Lターボエンジンは、コンプリートカー専用ECUセッティング、ハイフロータービン、インタークーラー、ラジエターを交換。そしてエグゾーストシステム「トムス・バレル」を装着。
さらに、クラッチ、Advoxサスペンションシステムを装着しています。またオプション装備のTOM’S×ブレンボキャリパーキット(109万2300円)やTOM’S鍛造ホイール(35万2000円)、ブリヂストン ポテンザRE71RS(25万800円)などを装着する仕様。
それでは、袖ケ浦フォレストレースウェイで行ったドリキンによるインプレッションを紹介しましょう。
●チャンピオンチームの高い技術力が反映され、街乗りからサーキットまでこなすオールラウンダー
TOM’S GR 86 TS、そしてTOM’S GRヤリスTSS340の順番で5ラップのサーキット走行を終えたドリキンは、開口一番こう話してくれました。
「さすが2冠を取ったチームが作った車だね。サーキットで培った技術力が、ちゃんと市販車に反映されている。ひと言で言って乗りやすいし、怖さがない。
オレがモデューロ(ホンダ)の開発でも狙っていることだけど、2台ともそれぞれの車両重量、ホイールベース、トレッドに対してドライくらいのサスペンションストロークを与えたら、ドライバーが気持ち良いところにマッチしている。
そして、サスペンションストロークやサスペンションスピード、いわゆる沈み込みと伸び側の動きのレベルが高いから、コレ、すごく価格の高い足がついているのだろうな、というのが感じ取れるよ。
TOM’Sのコンプリートカーは、インフォメーションをドライバーに伝えてくれるので、扱いやすいしいきなり破綻することがない。ストリートメインの味付けだけど、サーキットに行っても楽しめるように仕上げてあるね。とにかく味付けのバランスが最高。一度乗ってもらいたい」(土屋圭市)。
ドリキンも話していたように、TOM’Sは大規模な試乗会を行うことがあるので、ホームページなどでチェックしてください。
また、2024年1月12日~14日に開催される「東京オートサロン2024」では、今回とは異なるテイストの出展車を予定しているので、期待してもらいたいとのことです。
(文:萩原 文博/写真:株式会社トムス、萩原 文博)