目次
■知能と身体能力を高次元で合わせ持つ新型ASIMO登場
2005(平成17)年12月13日、ホンダは高い運動能力とオフィスなど実際の環境で作業する能力を特徴とする「新型ASIMO」を発表しました。
二足走行ロボットASIMOは、2000年に誕生して以降、進化し続け、新型ASIMOでは受付案内やワゴンの運搬作業、走る速度が6km/hに向上するなど、大きな技術の進展がありました。
●最初は足だけのロボットから始まり、14年かけてASIMOが誕生
ホンダは、新しいモビリティの創造性を目指して人間型ロボットの開発に着手し、1986年に二足歩行のために作った最初の研究用ロボット「E0」が完成しました。このときは、足だけのロボットで足を交互に出して、ゆっくりですが歩くことに成功したのです。
その後、1993年に胴体と腕が付いた本格的なロボットの姿に進化した人間型ロボット第1弾「P1」が完成。1996年12月に、世界初の人間型ロボットとして「P2(身長182cm/体重210kg)」が世界に公表されました。
そして2000年11月20日、さらに小型・軽量化が進み、よりスムーズな歩行を実現した歩行技術“i-WALK”を搭載した「ASIMO(身長120cm/体重52kg)」が発表されたのです。
一般的な生活空間で使用されることを前提に、歩行自在性の更なる向上およびシステムの簡素化を実現。階段や坂道などの一般的な生活環境でも自在に移動することができ、さらにユーザーの要望に応える専用動作や案内説明のコンテンツを付与することが可能になりました。
●ASIMOの進化、そして2005年にさらに新型へ
発表の翌2001年から、レンタル事業用ASIMOを発表、レンタル費用は1日当たり200万円、1年間で2000万円でした。
2002年には、接近する人に挨拶する、人に追従する、指示された場所に移動する、顔を認識して名前を呼ぶなど、人とのコミュニケーションができるようになり、さらにインターネットを介して情報の提供や案内などのサービスも可能となりました。
そして2005年のこの日、オフィスなど実際の環境で作業する能力と、高い運動能力を特徴とする2代目ASIMO(身長130cm/体重54kg)が登場。視覚センサー、床面センサー、超音波センサー、手首の力覚センサーなど、最新のセンサー技術を駆使して、次のような新しい機能を発揮していました。
・受付案内などを人に合わせて自動で行う機能
IC通信カードを人が携帯することで、人の動きに合わせて自動で受付・案内ができ、タイミングよく物の手渡しや受け取りができ、また手をつないでASIMOと一緒に歩行ができる。
・ワゴンを使った運搬機能
ワゴンを押す左右の腕の力を調整することで、ワゴンの積載重量10kgまで自在に操ることが可能。
・走行機能の向上
両足が浮いているときでも、積極的に姿勢の傾きを制御することで、走るスピードを従来の時速3km/hから時速6km/hに倍増させ、高速旋回走行もできる。
●2022年に引退も、その技術は様々な分野で活用
その後もASIMOは、複数のASIMOをネットワークで連携させて共同作業ができるようなったり、3人同時に話す言葉を聞き分けたり、走る速度が9km/hに速まったり、両足ジャンプ/片足ジャンプ、さらに水筒を開けてコップに水を注ぐ、手話表現を行うなど、一般のオフィスなどでも活躍できる実用的なロボットへと近づきました。
しかし、2022年3月31日の“Hondaウエルカムプラザ青山”でのショーを最後に、ASIMOは表舞台から姿を消しました。ASIMOは一定の成果が得られて中断となりましたが、人間に近づけるというより、より実用的で人の役に立つ遠隔操作のアバターロボやロボティクスの研究開発が強化されているようです。
ASIMOで培った様々な要素技術である、姿勢制御技術、画像および音声認識技術、衝突予知・回避技術認識などの技術は、車やバイクの安全技術をはじめ、様々な分野にフィードバックされています。最近の車やバイクは、見方によってはロボットみたいですから。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれません。
(Mr.ソラン)