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■参戦初年度に逆転で初の王者に
アジアの国際ロードレース選手権「2023FIMアジアロードレース選手権(以下、ARRC)」の最終戦タイ大会(2023年12月1〜3日)で、ヤマハ発動機(以下、ヤマハ)の南本宗一郎が、スーパースポーツ600(以下、SS600)クラスの年間チャンピオンを獲得しました。
南本選手は、2023年シーズンのARRCで、ヤマハの600ccスーパースポーツ「YZF-R6」を駆り、「YAMAHA GEN BLU RACING TEAM ASEAN」からSS600クラスに初参戦。
最終戦の前ではランキング1位と7ポイント差の3位でしたが、最終戦で逆転し、見事に自身初となるアジア王者の称号を手にしました。
●アジアロードレース選手権とは?
今回、南本選手がチャンピオンを獲得したARRCとは、アジアにおける国際ロードレース選手権として1996年にスタート。MotoGPなど世界的レースへのステップアップをめざすライダーの排出や、アジア全域のモータースポーツのさらなる発展を目指す目的で行われているシリーズ戦です。
新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大により、2020年は開幕戦のみ開催。2021年は全戦中止となりましたが、2022年に再開し5大会を実施。2023年は全6大会が開催され、再び盛り上がりをみせています。
ARRCの開催クラスは、2019年に新設された1000ccマシンによる最高峰のASB1000を筆頭に、600ccのスーパースポーツを使用するSS600、250ccのスポーツバイクを使用するAP250、アンダーボーンフレームの150ccマシンで競うUB150を実施。
南本選手が参戦したSS600クラスはライダーの育成といった意味合いが強く、最高峰のASB1000、または世界のロードレースへのステップアップを促すためのクラスだといえます。
●南本選手ってどんなライダー?
そんなARRCのSS600クラスで年間チャンピオンとなった南本選手は、奈良県出身の23歳(2000年生まれ)。
2016年からARRCのAP250クラスに参戦。同年には、MotoGPのレジェンド「バレンティーノ・ロッシ」さんとヤマハがタッグを組んで実施している若手育成プログラム「ヤマハVR46マスターキャンプ(YAMAHA VR46 Master Camp)」にも参加しています。
その後は、ARRCへのスポット参戦や全日本ロードレース選手権のST600、ST1000などで活躍。2023年はARRCに加え、代役参戦ながらMoto2世界選手権(負傷欠場した野左根航汰選手の代わり)にも挑戦しており、まさに注目の若手ライダーだといえます。
●最終戦では今季2勝目もマーク
南本選手は、2023年シーズンからチームに加入。1大会2レース制で行われた開幕戦タイ大会のレース2で3位表彰台を獲得しました。
その後、第3戦日本大会のレース1では2位と安定した成績を残したものの、この時点でランキングトップに39ポイント差の5位。久々に乗る600ccマシンであったこともあり、シーズン序盤はやや苦戦気味の展開となりました。
ところが、第4戦インドネシア大会から攻勢に転じ、レース1で3位を獲得すると、レース2では今季初優勝も達成。第5戦中国大会でも3位、2位と、4レース連続で表彰台に上がることで、ライバルとの差を一気に縮め、7ポイント差のランキング3位で最終戦を迎えます。
そして運命の最終戦。予選でポールポジションを獲得した南本選手は、レース1でホールショットから一度もトップを明け渡すことなく、今季2勝目をマーク。2ポイント差ながらランキングトップに浮上しました。
そして、2023年シーズンのラストとなるレース2では、ライバルが序盤に転倒したこともありチャンピオンを大きく引き寄せます。最後は、チームメイトのアピワット・ウォンタナノン選手に優勝こそ譲りはしたものの、2位でチェッカーを受けて、自身初となるチャンピオンが決定したのです。
【南本宗一郎選手のコメント】
「走行経験のないサーキットでのレースもあり、しかも600クラス自体が自身3年ぶりということもあって、シーズン前半は苦しいレースが続きました。
しかし、ベースセッティングが決まってきたインドネシア・ラウンドから流れを変えることができました。また、今年はMoto2世界選手権に代役で参戦しましたが、マシン以上に人間ができることがあるというのを改めて知ることになったし、メンタルも鍛えられたと思います。
これまでランキング2位という結果が多かったのですが、そのジンクスのようなものを打ち破れたのも大きな喜びです。チャンピオンを獲得することができ、本当にチームには感謝したいと思います」
見事にアジア最強ライダーとなった南本選手ですが、2024年シーズンはどんなクラスで戦うのか楽しみですね。近い将来、ぜひ世界最高峰のMotoGPなどにステップアップし、世界に「日の丸の旗」をはためかせてもらいたいものです。
(文:平塚 直樹)