ホンダから軽量コンパクトな4輪バギー「ホンダTRX70」デビュー、自然のなかで運転する楽しさを誰もが満喫できたビークル【今日は何の日?12月5日】

■初心者や女性も楽しめるコンパクトなオフロード専用4輪バギー

1985年12月5日に発売された軽量・コンパクトな四輪バギーTRX70
1985年12月5日に発売された軽量・コンパクトな四輪バギーTRX70

ホンダは、1985(昭和60)年12月5日にオフロード専用の4輪バギー「ホンダTRX70」を発売しました。

4輪バギーTRX70は、様々なオフロードを走破できるATV(全地形対応車)。公道は走れませんが、コンパクトで軽量なので初心者や女性でも容易に操れて楽しめるのが特徴です。


●日本では50cc以上のバギーカーの公道走行は通常できない

バギーカーは、1960年代に低空気圧の大きなバルーンタイヤを履いた3輪タイプで始まったとされています。

ただし、3輪バギーはスポーツ型やユーティリティ型として広く人気を獲得しましたが、転倒事故が多発したために1980年代には安全な4輪バギーが主流になり、その頃日本でも流行り始めました。

現在も、基本的には大自然の中でバギーに乗ってオフロードを楽しむ目的で作られたものなので、公道で乗る場合は保安基準を満たすことが条件です。一般的に公道を走行できるのは排気量が50cc以下のバギーで、この場合は道路交通法でミニカー扱いとなり、普通免許で運転可能。1人乗りで、法定速度は原付バイクが30km/hに対して、4輪バギーは60km/hと違いがあります。

50cc超の大きいバギーもありますが、安全上の問題などで保安基準を満たすためのハードルが高く、ナンバープレートの取得はほぼ困難。したがって、私有地で楽しむことはできても、公道では走行できません。

●ホンダ最初のバギーは3輪ATCシリーズ

ホンダ初のバギーは、1981年に発売されたオフロード専用3輪バギー「ATC70/110/185S/200」です。オフロードや雪上などでも優れた走破性を発揮したため、スポーツ走行だけでなく、牧場、ゴルフ場、砂丘地、山林などで活用されました。もちろん、公道で走行することはできません。

1982年に発売された三輪バギーATC200E
1982年に発売された三輪バギーATC200E

エンジンは、排気量70cc/110cc/185cc/200ccの空冷4ストローク単気筒で、最高出力はそれぞれ3.4PS/6.5PS/13.0PS/13.0PSを発揮し、登坂能力は26度/33度/35度/33度です。

価格は、16.5万円/23万円/28万円/31万円で、ちなみに当時の大卒初任給は12万円程度(現在は約23万円)でした。このATCシリーズは米国やカナダに輸出され、人気を博しました。

●3輪ATCシリーズに続いて4輪TRXシリーズが登場

3輪ATCシリーズに続いて初めて4輪バギーが登場したのは、1885年10月1日の「TRX200S」、そして同年12月5日発売の「TRX70」です。

1985年10月1日に発売されたTRX200SX
1985年10月1日に発売されたTRX200SX

TRX200Sは、最高出力15.3PSを発揮する排気量199cc空冷4ストロークOHC単気筒エンジンを搭載し、価格は40万円。TRX70は、最高出力3.7PSを発揮する排気量72cc空冷4ストロークOHC単気筒エンジンを搭載し、価格は22万円。ちなみに、当時の大卒初任給は14万円程度(現在は約23万円)でした。

TRXシリーズは、クラッチ操作不要のオートクラッチ、ポイント調整のいらないCDI点火装置、オートカムチェーンテンショナーなど、各種のメンテナンスフリーメカニズムを採用。また、ワンタッチで駐車できるパーキングロック機構や、右手親指で操作するレバー式スロットルも装備されました。

TRX70は、全長/全幅/車高/(重量)がTRX200Sの1660/1000/1015mm/(158kg)に対して、1350/795/795mm/(85kg)とコンパクトで軽量でした。このため初心者や女性でも容易に操れて、家族そろって楽しめるのが特徴です。


バギーでも保安基準に準じた装置が標準装備されれば、公道を走行することは可能です。しかし、バギー本来の魅力は、大自然の中で縦横無尽に運転を楽しむ、いわば玩具のようなクルマではないでしょうか。

毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれません。

Mr.ソラン

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Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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