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■FCXが認定を受け世界初のリース販売を開始、同時にトヨタのFCVもリース開始
2002年(平成14)年11月22日、ホンダは燃料電池車「FCX」の国交大臣の認許を取得しました。これを受け、12月2日に日本の中央官庁と米国のロサンゼルス市庁(米国では4ヶ月前に認許取得)にFCXを納車、同時にトヨタのFCV「クルーガーV FCHV」もリース販売を開始しました。
●35MPaの水素タンクを搭載して航続距離355kmのFCX
燃料電池車(FCV/FCEV)は、車載タンクに充填した水素と大気中の酸素を反応させて発電する燃料電池の電力を使って、モーターで走行します。EVにおいては2次電池と言われる電池ですが、FCVではその2次電池の代わりに燃料電池を搭載したシステムで、通常のガソリン車がガソリンを補給するように、水素を補給します。
FCVは、原理的に発生するのは水のみで有害な排出ガスが出ません。エネルギー効率はガソリンエンジンの約2倍と高く、水素を製造するために石油以外の多様な燃料が利用可能などのメリットがあります。CO2フリー水素の製造も期待できることから、カーボンフリーにも対応できる究極のエコカーと呼ばれています。
ホンダは、1990年代から燃料電池車の開発を本格的に進め、1999年にはFCXのベースとなる燃料電池車「FCX-V1」と「FCX-V2」を発表。2002年に完成したFCXは、4人乗りのコンパクトカーで、水素高圧タンクは35MPaの156.6L、最高出力60kW/最大トルク272Nmで最高速度150km/h、1回の水素充填による航続距離は355kmの性能を達成しました。
FCVの心臓部である燃料電池スタックは、バラード社製のPEFC(固体高分子膜型)。PEFCは、作動温度が広く出力密度が高いため、自動車用としてほとんどのメーカーが採用しています。
●米国でもリース販売を開始、米国では個人向けリースも
FCXは、日本だけでなく米国においても、2002年7月25日燃料電池車として初めてEPAとCARBの認定を取得し、これを受けてホンダは、その年の12日2日に日本の中央官庁とともに、米国カリフォルニア州のロサンゼルス市庁にも納車しました。
その後、FCXは日米ともリース販売先を拡大し、日本では2004年に箱根駅伝や様々なプロジェクトなどに参加して、FCVの環境性能と実用性の高さをアピールすることに貢献したのです。
米国では、2005年にカリフォルニア州で世界初の個人向けのリース販売も開始。個人向けリースのFCXは、2002年の初期型に対しモーター出力を80kWに向上させるなどの改良を加え、航続距離は430kmまで延長しました。
●同時にトヨタの「クルーガーV FCHV」も日米リース販売を開始
FCXと同じ12月2日に、トヨタもSUV「クルーガーV」をベースにした燃料電池車「クルーガーV FCHV」を中央官庁に納車しました。当日は、首相官邸で盛大なセレモニーが行われ、小泉純一郎総理(当時)がトヨタ奥田会長とホンダ吉野社長から、それぞれクルーガーV FCHV、FCXの大きなレプリカキーを受け取りました。
クルーガーVのFCHVは、高圧水素タンクに貯蔵された水素35MPaを搭載、独自開発の燃料電池スタックで、パワーユニットのモーターは、最大出力80kW/最大トルク260Nmを発生し、最高速度は155km/h、航続距離は300kmでした。
その後、リース販売を地方自治体や民間企業にも展開し、FC機能を改良した「FCHVアドバンスド」は、箱根駅伝の緊急対応車両やハイヤーの実証試験でも活躍し、その後のMIRAIへの開発に繋がったのです。
その後、ホンダは2008年からFCXクラリティ、トヨタは2014年からMIRAIを市場に投入しましたが、水素インフラが整備されていない状況では、一般ユーザーには手の届かない存在でした。
ホンダは、2021年に生産を一旦中断しましたが、2024年、日米でGMと共同開発した次世代燃料電池車「CR-V FCEV」を市場に投入すると発表しました。停滞気味の燃料電池車が勢いを増すのか、注目です。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれません。
(Mr.ソラン)