目次
■ステップワゴンに与えられた、ドライバーへの親切ぶりを検証してみる
リアル試乗・ステップワゴンのユーティリティ編の続きにして、運転席まわり編のつづきです。
シフトまわりから見ていきます。
●運転席まわり(つづき)
・シフトレバー
ガソリン車は全機種スチールベルトのCVTで、PRNDSの5ポジション式。無段変速であっても加速の仕方しだいでは段付きATのようにメリハリよく変速していきます。
下り坂での自動エンジンブレーキはめずらしくありませんが、下り坂のほかに平地ででもブレーキペダルをチョン踏みすれば「あ、減速したいのか」と目を覚ましたようにロー寄りにシフトしてくれる、任意性のあるエンジンブレーキ制御なのがありがたい。このチョン踏みのエンジンブレーキは誰もがやってもよさそうなのに、あるいはやっているのかも知れないですが、意外と見かけません。
レバーはインパネシフト式で、ゆるやかな傾斜面に取り付けられているので、フロアシフトよろしくほぼ前後移動で操作できるのがいい。軽自動車をはじめ、小さなクルマほどほとんど垂直面からレバーが生えるインパネシフトのクルマがあり、操作性の点で難があると筆者は思っていますが、キャビンが小さめでインパネ奥行きが確保できないゆえでもあるでしょう。
話戻り、ステップワゴンのハイブリッドのe:HEV車は電気式無段変速機となり、シフト操作もレバー式からボタン式に変わります(エレクトリックギアセレクター)。
・パドルシフト
カタログ装備表では「パドルシフト」、取扱説明書では「シフトスイッチ」となっていますが、いったいどっちが本名なんだといいたくなる、ハンドル左右スポーク向こうにあるスイッチ。CVTを7速マニュアルシフトモードで走るのに使います。
使い方はふたとおり。
シフトがDのときに操作すると一時的に7速マニュアルシフトモードに入り、現在の段数がメーターに表示され、手動で1~7速に変速できるように。定速走行状態になるか、右の+スイッチを数秒引き続けると解除されます。
シフトをSに落としてスイッチ操作をするとメーターに「M」が表示され、真の(?)マニュアルモードに移行、任意操作が可能に。無操作で車速が落ちると順次シフトダウンし、停止すると1速に入り、車速が上がってエンジン回転がレッドゾーンに近づくと自動で1段シフトアップするという仕掛けです。解除はシフトのS→D戻しか「+」の数秒引きで。
筆者は、シフトスイッチが便利なのは、せいぜい下り坂でエンジンブレーキを併用したいときくらいで、通常走行ではクルマ任せのほうがよほど自然に走れると思っていてそれほど必要性は感じないのと(実際、ほとんど使わなかった)、どうせマニュアルシフトをするならSはそのままに、Dから枝分かれする「+」「-」のラインをもう1列設け、レバーの前後移動にするほうが使用性、使用頻度とも上がるだろうと思っています。
このデバイスはガソリン車のスパーダ、スパーダPREMIUM LINEに標準。e:HEV車になるとスイッチ形状そのままに、アクセルペダルを離した際の減速の度合いを4段階から選べる「減速セレクター」に変わります。ま、メカや呼び名は変わっても、アクセルペダルフリーでの使用時のクルマの挙動はガソリン車とまったく同じ。こちらはe:HEV版スパーダ、スパーダPREMIUM LINEに与えられます。つまりガソリン車であれe:HEV車であれ、ステップワゴンAIRだけはクルマ任せで走るしかないわけですな。
・ECONスイッチ
ホンダ車ではおなじみのスイッチで、正式名称なのか俗称なのか、読みは「イーコン」。
押すとメーター内にランプが点灯し、ONのときはエンジンやエアコンの作動を省燃費傾向となるように制御します。筆者は今回、まったく使いませんでした。にもかかわらず・・・いや、この話は最終回の「燃費報告」のところで。
・アイドリングストップシステムOFFスイッチ
燃費低減が主目的のアイドリングストップをOFFにしたいときに使います。
取扱説明書には、普通ならアイドリングストップが作動する条件が書かれると思うのですが、「アイドリングストップしない条件」が記載されていました。
おもしろいので列記します。たーくさんあるぞ。
1.アイドリングストップシステムOFFスイッチを押してアイドリングストップ機能をOFFにしたとき。
2.運転者がシートベルトを着用していないとき。
3.エンジンが十分暖まっていないとき、または冷却水の水温が高いとき。
4.トランスミッションフルードの油温が低いとき、または高いとき。
5.エンジン始動後、5km/hに達しないまま停車したとき。
6.急な坂道で停車したとき。
7.シフトポジションをD以外にしたとき。
8.ボンネットが開いている状態でエンジンを始動したとき。
9.バッテリーの充電量が少ないとき。
10.バッテリーの内部温度が5°以下のとき。
11.外気温が-20℃以下または40℃以上で、エアコンを使用しているとき。
12.エアコンの風量が多いとき。
13.エアコンの設定温度がHiまたはLoで、エアコンを使用しているとき。
14.フロントデフロスター(くもり止め)がONのとき。
15.後席用エアコン/クーラーの風量が最大のとき。
「アイドリングストップしないことがある条件」も載っています。
1.急ブレーキをかけて停止したとき。
2.ハンドルを動かしているとき。
3.標高が高いとき。
4.低車速で、加減速が繰り返されるとき。
5.エアコン風量が多いとき。
6.エアコンを使用中で設定温度と車内の温度差が大きいとき。
7.エアコンを使用中で車内の湿度が高いとき。
8.後席用エアコン/クーラーの風量が最大のとき。
・電子制御パーキングブレーキ
スイッチの押し引きで制動する電動パーキングブレーキもだいぶ普及しました。
故障や誤作動が怖いですが、制動力が操作するひとの腕力・脚力に依存する従来のレバー式や足踏み式に対し、常に確実な制動をしてくれるのがメリット。
スイッチ引きで制動、ブレーキペダル踏みのスイッチ押しで解除するほか、自動制動/解除する機能もあり、エンジンOFFで自動制動し、自動解除は以下3つの条件が揃ったときに行われます。
・運転席シートベルトが装用されているとき。
・エンジンが始動しているとき。
・シフトがP、N以外のとき。
とはいうものの、パーキングブレーキを「かけた」「解除した」の自覚をするため、常にスイッチ操作をするほうがいいと思います。筆者も自動機能をあえて宝の持ち腐れにし、乗っている間はいつでも押し引きしていました。
<自動作動機能のON/OFF>
この電子式駐車ブレーキの自動制動/解除機能をON/OFFすることもできます。
1.シフトをPにする。
2.ブレーキペダルを踏まずにパーキングブレーキスイッチを引き上げる。
3.そのまま引き上げ続け、「ピーッ、ピーッ、ピーッ・・・」音が鳴り始めたら手を離し、3秒以内に再び引き上げ続ける。
4.操作完了音が聞こえたらスイッチから手を離す。
・自動作動機能ONでは「ピーッ、ピーッ」と吹鳴。
・自動作動機能OFFでは「ピー」と吹鳴。
寒冷地では、パーキングブレーキの凍結を防ぐため(解除できなくなる)、駐車時にMT車は1速に、AT車ならPに入れ、パーキングブレーキはかけない手法が採られますが、自動機能はこのようなシーンでOFFにするにとどめ、平素は意識的にスイッチ操作をするほうがいいでしょう。
・オートホールド
ブレーキペダルによる制動を、ペダルを離した後も維持するデバイス。すなわち、電子制御パーキングブレーキが後2輪だけにかかるのに対し、こちらは4輪にかかります。
スイッチは前項電子制御パーキングブレーキの下にあり、押すとメーターに「BRAKE HOLD」が点灯、「信号待ちなど一時的に停止したいときの使用に適しています(説明書)」。
坂道発進のときに便利な補助装置ていどに捉え、停止するときはあくまでもブレーキペダルを踏み続ける、信号待ちが長めで足を離したいときはシフトをNまたはPに入れて駐車ブレーキをかけることを原則としたほうがいいでしょう・・・いや、原則じゃなく鉄則だ!
Dでペダルを離しても不安に思わなくなるほど慣れきったら故障のときが恐ろしい。メーカーを信用しないわけじゃないけど、警戒心は失わないようにしたいものです。
・サンバイザー
居住空間が上下にも広いぶん丈も大きめで、うら面にはふたを開ければ点灯する照明付き。チケットを挟むベルトが格納状態でも使えるおもて面に設けたのはよき配慮で、下げて現れるミラーふたに一体にしているやつよりはずっと使いやすいものです。
それにしても、クルマがこれだけ先進デバイス満載になっても、こいつだけは見た目も、板の上げ下げで機能させるという使い方も昔のまま。
ハリアーだったっけ、スイッチでガラス全面を白基調にして調光する技術をガラスサンルーフに採り入れたのは。最近センチュリーSUVのリヤドア&クォーターガラスに同じ手法を採用しましたが、車両価格上昇はともかく、いずれフロントガラス&フロントドアガラス上部・・・つまり部分的に調光or陽ざしをカットする技術が表れるかも知れませぬ。
・緊急通報&トラブルサポート
コネクトサービスの一環で増加中にあるデバイス。
「緊急通報」「トラブルサポート」の2種の機能があり、いずれもHonda Total Careプレミアムの申し込みが必要です。
<緊急通報>
事故発生時、もしくは急病などの緊急時に、オペレーターが乗員に代わって警察や消防へ通報するシステム。
自動通報機能と手動通報機能のふたつを有し、自動通報はエアバッグの展開をキーに(展開しないまでも、車両にある一定以上の衝撃が加わった場合でも)、クルマが自動でオペレーターに接続開始、このとき自車の場所や車両状態などをオペレーターに送信・・・ドライバーないし他の乗員が意識を失っていることを想定しています。
いっぽうの手動通報は、前述の緊急時、乗員が緊急通報ボタンを押すことでオペレーターに接続します。
子どものいたずらなど、不用意に押されることのないよう、緊急ボタンにカバーがついています。
<トラブルサポート>
警告灯が点灯した際、あるいは車両に起きたトラブルなどが起きたとき、トラブルサポートボタンを押すことでHondaTotal Care緊急サポートセンターに接続し、対処法やロードサービスの手配をサポートするサービス。
トラブルサポートボタンは再度押しで接続が切れますが、緊急通報ボタンは押して接続はできても再度押しで切ることはできず、切断はオペレーターのみに委ねられています。電話の気分で押して切った気になり、「対応悪いなあ、チッ」などと悪口をいって舌打ちしたりしないように。オペレーターにまる聞こえになります。
●室内照明
取扱説明書では「室内灯」としぶい昭和時代的名称を使っていますが、一部を除き、光源は現代的にLEDになっています。
<フロント>
・ルームランプ&アンビエントライト
・・・は、左右振り分けで設置され、個別でマップランプ、同時点灯でルームランプという構成になっています。
中央のシーソースイッチでOFF、DOOR、ON。左右個別スイッチでそれぞれが点灯。
スイッチ両脇には小さなアンビエントライトがついています。
<リヤ>
・ルームランプ
セカンドシート列上に設置され、こちらは旧5代目上級版のLEDから電球に格下げ。でも切れたときの交換が安い電球だけですむならそのほうがいいヤ。スイッチ構成は写真左からON、DOOR、OFFの3つです。
ここまでの照明、三栄の社用車で5代目ステップワゴンを使っていた時期があるので覚えていますが、5代目のLED室内灯装備車(電球のクルマもあった)の前後ルームランプには照度調整のダイヤルがあったし、2列目ルーフサイドにまでマップランプがありました。このあたり、新型ステップワゴンの室内照明は、旧5代めに対してコスト削減でリストラされた印象があります。
・カーテシーランプ
といってもフロントドアにはなく、両側スライドドアのみ。内外足元を照らし、夜間のスライドドアからの乗降を助けます。こちらも電球です。
・ラゲッジルームランプ
こちらも電球。荷室ルーフ後端についています。見た目からして2列目席用と同一品のようで、スイッチ構成も2列目用と同じでした。
●電源各種と通信端子
電源がこんなに車内に要るのかね? と思うほど潤沢に用意されています。携帯電話orスマートホン1人1台時代によるものでしょう。
<前席>
・アクセサリーソケット/USBジャック/充電専用USBジャック
ここは十把一絡げに。
前席用はセンターコンソール上部に3つ。
いちばん左は従来型の12Vソケットで、多くは120wまでのところ、ステップワゴンでは180Wになっています。すなわち15Aまでは使用可能なわけだ。
中央はたぶんHonda CONNECT用のUSBポート。最右は充電用のポートで、容量は3.0Aです。
<2列目席>
・充電専用USBジャック
左右フロントシート背面中央寄りにひとつずつ設置。その横にある、「ストレージ編」で述べるつもりのポケットに機器を収容しながら使ってくださいということでしょう。
トヨタのJAPAN TAXIにも同じ場所に充電ポートがありますが、機器を置く場所はなし。ヘタに置き場所を設けることで乗客が機器を置きっぱなしにすることがないように配慮したんだって。
<3列目席>
・アクセサリーソケット
3列目席左のドリンクホルダー前方にUSBポートと併設。前席用と同じく12V×15A=180Wです。
・充電専用USBジャック
こちらは左右にあり、左は前項アクセサリーソケットの手前に、右もドリンクホルダー前方に設置されています。
●ドア内張り
妙に情緒的な斜めのラインや意図不明のふくらみを廃し、まっすぐな線とフラットな面で構成されています。見た目にすっきりしていていいですな。
・ドアハンドル&ドアロックノブ
シルバー塗装が施されたドアハンドルはロックノブと併設。ハンドルは大きめで操作しやすいものでした。
車速が約15km/h以上になると全ドア(含むテールゲート)がロックされる車速連動オートドアロック、ブレーキペダル踏みのシフトP入れで自動解錠されるシフト連動オートドアアンロック付きで、車体に衝撃を受けるとアンロックされる「衝撃感知ドアロック解除システム」もついています。
運転席に限ってはロックしていてもハンドルを引けばドアは開きますが、防犯上の配慮なのか、他のドアが解錠されないのは、降りた後に他のドアを開けて荷を取り出したいときは不便です。運転席連動か非連動かを選べればいいのに。
もうひとつ、エンジンを切ってひと待ちをするときのことを考え、アンロックをシフトP連動か非連動も選べるといいと思います。
・電動ミラー調整スイッチ
安全&電子デバイスの増加でインパネ側にスイッチが増えたこともあってか、ドア側に電動ミラースイッチを置くクルマが増えました。ただ、電動ミラーについては運転姿勢のまま調整できるドア側に設置したのは結果的に正解。インパネ側にあると前かがみで操作しなければなりません。
もともと広くない場所にスイッチが3種(電動格納、左右切り替え、ミラー向き調整)あるためにひとつひとつが小さいのが難点。ならばすべてを1本レバーに集約し、左右まわしで左右切り替え、上下左右でミラー調整、格納状態で調整するひとはいないのだから押し込んで電動格納、再度押しの飛び出しで復帰というスイッチはできないか、常々思っています。
・パワーウインドウスイッチ
先回登場のCX-60で酷評したパワーウインドウスイッチと異なり、ステップワゴンのものは前後が明快に区切られていること、スイッチ前端が左右でひとつのカーブになっていることから手探りでも押し間違いが皆無の優れたデザインでした。
運転席のみワンタッチのオート開閉&はさみ込み防止機構付きはめずらしくないですが、エンジンOFF後のタイマーを、最近の他車のように40秒なんていうケチくさいものではなく、10分にしたのはえらい! 実際にクルマを使っていると、この違いは大きいョ。
その前にあるパワーウインドウメーンスイッチ、さらに前のドアロックスイッチの位置も適切だと思いますが、パワーウインドウスイッチとは逆に押し間違いが頻発したのがロックスイッチ。横向きシーソーになっていますが、室内側がアンロック、室外側がロックになっています。人間が乗り込んだときにロック、外に出る際にアンロック・・・これを運転席で操作するのだから逆じゃないか。感覚が逆になるので何度も押し間違えました。
・ドアプルハンドルとアームレスト
パワーウインドウスイッチ後ろにはドアプルハンドルがあり、ポケットにも使えそうなサイズを持っています。指の引っ掛かりがいいように、内側上部に突起を設けるという工夫が与えられています。本当はアームレストの設置面側に前から後ろまでスリットを設け、ドア開口角が小さい場合は前側を、大きい場合は後ろ側をつかんで閉められるようにすれば理想。つかむ場所がヒンジから遠いほど軽く閉められるからです。
そのアームレストはやわらかいパッドに包まれ、ソフトな感触で腕を置くことができます。
最後、フロント左右ドアの内張りを載せておきます。
今回はここまで。
ユーティリティ編はまだ続きます。
(文/写真:山口尚志(身長176cm) モデル:星沢しおり(身長170cm))
【試乗車主要諸元】
■ホンダステップワゴン スパーダ〔5BA-RP6型・2022(令和4)年5月型・FF・CVT(自動無段変速機)・ミッドナイトブルービーム・メタリック〕
●全長×全幅×全高:4830×1750×1840mm ●ホイールベース:2890mm ●トレッド 前/後:1485/1500mm ●最低地上高:145mm ●車両重量:1740kg ●乗車定員:7名 ●最小回転半径:5.4m ●タイヤサイズ:205/60R16 ●エンジン:L15C型(水冷直列4気筒DOHC16バルブ直噴ターボ) ●総排気量:1496cc ●圧縮比:10.3 ●最高出力:150ps/5500rpm ●最大トルク:20.7kgm/1600~5000rpm ●燃料供給装置:電子制御燃料噴射(PGM-FI) ●燃料タンク容量:52L(無鉛レギュラー) ●モーター:- ●最高出力:- ●最大トルク:- ●動力用電池(個数/容量):- ●WLTC燃料消費率(総合/市街地モード/郊外モード/高速道路モード):13.7/10.4/14.3/15.3km/L ●JC08燃料消費率:15.4km/L ●サスペンション 前/後:マクファーソン式/車軸式 ●ブレーキ 前/後:ベンチレーテッドディスク/ディスク ●車両本体価格:325万7100円(消費税込み・除くメーカーオプション)