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■ステップワゴンの駐車性能を見る
ステップワゴンリアル試乗7回めは、駐車のしやすさと後方視界を併せて見ていきます。
●拡幅55mmの影響は?
従来のステップワゴンは、標準型が5ナンバーサイズ、スパーダがおそらくは前バンパーの造形違いで全長が延び、3ナンバーサイズになっていたのに対し、今回の新型は全機種3ナンバーサイズになりました。外装パーツで背伸びして3ナンバー域に踏み込んだのではなく、ボディ骨格をイチから見直して手にした3ナンバーボディです。
筆者はどんなサイズの車両も乗れば乗ったでそれなりに順応してしまいますが、元来重度の3ナンバーアレルギー患者で、「自動車は5~6年に1度のモデルチェンジでサイズアップしても、道路や車庫、街の駐車場は5~6年に1度モデルチェンジしない」と唱え続けているのは前に書いたとおりです。
前回採りあげた、1890mmもの(いまだ忘れておらず、ソラで数字を書ける!)車幅を持つマツダCX-60ともなると走る巨大鏡もちのようなもので、車庫入れに難儀し、街乗りでは路側駐車する車両やトラックを避けるのに気を使いました。
では旧型から全長がAIRで110mm、スパーダで95mm延び、幅で55mm拡がった新型ステップワゴンが使いにくいかというと、このサイズアップが日常性に直接響くことはありませんでした。
ただしこれは筆者の場合で、もともと運転が苦手なひと、所有するガレージ面積が小さいひとは影響があるかも知れません。
なんだかんだいいながら、ステップワゴンも7代め、8代めと進んでいくにおよんで長さも幅も2センチ、3センチと伸びて拡がっていくんだろうなあ。
・・・というわけでやってみました、いつもの車庫入れ。
登場するのは毎度おなじみうちの車庫。サイズは写真のとおり。
サイズアップによる使いにくさがなかったのはさきに述べたとおりですが、これは車庫入れでも同じ。
このクルマの場合、むしろサイズアップの懸念よりは、バック時の車両感覚の把握のしやすさを称えてしかるべきでしょう。
後ろを振り向くと長ぁ~い室内が伸び、「わあ・・・リヤガラスがあーんなに遠い」ということになるわけですが、第1回で述べたように、室内を覆うトリム造形がスクエアでリヤコーナーが運転席からでもつかみやすく、ピラーもまっすぐですっきりしているのは、昨年採りあげたトヨタヴォクシーにはない優位点。
ありがたかったのは、2列目シートのヘッドレストがほどほどサイズなことで、頭部保護とやらで「何もここまでしなくても」と思うほどヘッドレストが大きいクルマが多い中、ステップワゴンのそれは高さが抑えられており、これが奏功して後方視界の阻害を抑制しています。これは前席も同じです。
ほかに注意点といえば、形が形なので全高が高く、かつボディ側面もおっ立っているので、通常のクルマよりも高い位置にあるルーフサイドを、車庫入れならガレージの屋根やポールにぶつけないように注意しなければならないことくらい。
ステップワゴンからステップワゴンに乗り換えたひとは慣れっこでしょうが、通常の乗用車から乗り換えたひとはそのあたり、頭の切り替えが必要になります。
まあ、ちょい練習すればじき慣れることでしょう。
●マルチビューカメラシステム
カメラで捉えた周囲状況をHONDA CONNECTのモニターに中継表示する「マルチビューカメラシステム」は、AIRとスパーダに、税込み8万8000円の工場オプション、最上級PREMIUM LINEのみに標準。
8万8000円なんて安くはない価格ですが、自動車は車体をガラスででも造らない限り死角から免れることはできず、運転が不得手なひとが見落としたポールや壁に「ガリッ!」、「はい、板金塗装5万円」、「ごまんえんっ!?」を2回やっちまえばモトが取れちまう額。考え方と予算しだいですが、不安なひとは注文するといいでしょう・・・いや、ベテランにだって便利だぜっ!
カメラは、前側ではフロントグリルのホンダマーク下にひとつ、サイドでは左右ドアミラーカバー下面にひとつずつ、後ろにまわってバックドアのナンバープレート左上にひとつ・・・計4つが用いられます。
画面はフロント画像、リヤ画像とともに4種類ずつ。
画像切り替えはスイッチで行いますが、おもしろいのはそのスイッチの場所で、ワイパースイッチレバーの先端についています。
車庫入れの話の続きとして、先にリヤ画面から載せていきます。
【リヤ表示】
シフトをRにすると自動で車両後方を表示します。
<リヤワイドビュー>
リヤカメラが映し出した車両後方の様子をワイドに映し出す。
<リヤワイドビュー+グラウンドビュー>
グラウンドビュー(4つのカメラが捉えた周囲の様子を合成し、疑似的に作成した車両真上からの映像)を表示。
<リヤビュー>
リヤカメラが映し出した車両後方の様子を映し出す。
<リヤビュー+グラウンドビュー>
リヤビューの右にグラウンドビューを表示。
筆者は毎度このリアル試乗で、バックドア開閉の可能限界を示す線を画面上に入れてほしいといっていますが、ホンダはきちんと入れてくれています。
取扱説明書上では、「テールゲートを開いたときの目安距離」として「約1.2m」と記載していますが、筆者の実測では、後ろのクルマの先端とステップワゴンリヤバンパー間距離が1063mm、バックドア全開時のリヤボディからの張り出し量は975mmでした。取扱説明書の「約1.2m」がひとのスペースを入れているのかどうかわからないし、ていねいに行ったつもりの実測値「1.2m」に対して違いが大きく、非常に不安なのですが、まあ目安にしてください。
希望は、目安ガイド線&予測ガイド線、そしてせっかく入れてくれているバックドア開閉限界ライン横への距離の値の併記です。実際には画面上の後ろの壁ないしクルマ前端とラインを重ねて停止すれば問題なく、「あと1m」「あと0.5m」と距離刻みで駐車位置を決めるひとはいないでしょうが、横に小さく「0.5m」「1.2m」「1.0m」と示してくれるとなおわかりやすくなると思います。じゃまなら設定画面でOFFできるようにしておけばいい。ホンダの担当者の方にはぜひご検討いただきたく。
【フロント表示】
カメラスイッチを押すと車両前方を表示。停車中もしくは車速が20km/h以下のときにカメラスイッチを押すと画像が切り替わります。
<フロントブラインドビュー>
フロントカメラが映し出した車両前方の様子をワイドに映し出す。
<フロントビュー+グラウンドビュー>
グラウンドビュー(4つのカメラが捉えた周囲の様子を合成し、疑似的に作成した車両真上からの映像)を表示。
<左右サイドビュー>
左右サイドカメラからの車両フロントサイド画像を表示する。
<左右サイドビュー+グラウンドビュー>
左右サイドビューグラウンドビューを表示。
このマルチビューカメラシステムは、トヨタ車のようなシースルー(透視)のような凝った表示はしないし、ボタンひと押しで自動駐車してくれるデバイスは持ち合わせていませんが、操作に複雑なところは見られないし、「ライン表示に距離併記があれば」と思った以外、不足な点もありません。
初めて乗るひとでも難なく使うことができるでしょう。
というわけで今回はここまで。
次回、「ユーティリティ編」でまたお逢いします。
(文/写真:山口尚志(身長176cm))
【試乗車主要諸元】
■ホンダステップワゴン スパーダ〔5BA-RP6型・2022(令和4)年5月型・FF・CVT(自動無段変速機)・ミッドナイトブルービーム・メタリック〕
●全長×全幅×全高:4830×1750×1840mm ●ホイールベース:2890mm ●トレッド 前/後:1485/1500mm ●最低地上高:145mm ●車両重量:1740kg ●乗車定員:7名 ●最小回転半径:5.4m ●タイヤサイズ:205/60R16 ●エンジン:L15C型(水冷直列4気筒DOHC16バルブ直噴ターボ) ●総排気量:1496cc ●圧縮比:10.3 ●最高出力:150ps/5500rpm ●最大トルク:20.7kgm/1600~5000rpm ●燃料供給装置:電子制御燃料噴射(PGM-FI) ●燃料タンク容量:52L(無鉛レギュラー) ●モーター:- ●最高出力:- ●最大トルク:- ●動力用電池(個数/容量):- ●WLTC燃料消費率(総合/市街地モード/郊外モード/高速道路モード):13.7/10.4/14.3/15.3km/L ●JC08燃料消費率:15.4km/L ●サスペンション 前/後:マクファーソン式/車軸式 ●ブレーキ 前/後:ベンチレーテッドディスク/ディスク ●車両本体価格:325万7100円(消費税込み・除くメーカーオプション)