ホンダが新開発した「E-クラッチ」はリターンライダー待望のデバイスになる!【バイクのコラム】

■ホンダが「E-Clutch」システムを発表

電動クラッチでありながら、レバー操作も併用できるというのが”わがまま”なリターンライダーにはピッタリ。
電動クラッチでありながら、レバー操作も併用できるというのが”わがまま”なリターンライダーにはピッタリ。

ホンダが二輪向けトランスミッション技術として、「Honda E-Clutch(ホンダ イークラッチ)」システムを発表しました。

同社によれば、『世界で初めて二輪車用有段式マニュアルトランスミッションのクラッチコントロールを、自動制御する』ことを可能にしたメカニズムということで、クラッチレバーを操作することなく、発進・変速・停止を可能としたシステムということです。

すでにホンダには、クラッチ操作の不要な二輪用ATとしてDCTを設定していますが、「E-Clutch」はクラッチレバーはそのまま残し、変速操作についてはライダーがマニュアル操作するというのが違いとなっているようです。

YouTubeにアップされているティザームービーを見ると、構造としては従来のクラッチ操作系に複数のアクチュエーターや歯車を追加することで、クラッチ操作を機械が担うようにしたものといえます。ですから、ライダーがクラッチレバーを握れば、そちらが優先してクラッチのコントロールができるようになるというわけです。

●発進・停止まで任せられるシステムになっている

クラッチレバーにつながるであろうワイヤーと、複数のアクチュエーターが組み合わさっている。
クラッチレバーにつながるであろうワイヤーと、複数のアクチュエーターが組み合わさっている。

前述したティザームービーでは、クラッチレバーを握らずにライダーが1速に入れ、そのままスタートするシーンも描かれています。

特に、大排気量バイクになるとクラッチレバーの操作が重く、長時間のライディングでは左手が疲れてしまうこともありますが、そうした負担から解放されるというわけです。渋滞にハマってしまったような状況においては、非常にありがたい機能となるのではないでしょうか。

クラッチのマニュアル操作と自動制御を併用できるシステムということで、こだわりのあるリターンライダー諸氏のニーズにマッチした機能といえそう。

停止時にも、自動的にクラッチを切ることで、エンストせずに止まることができるというのは、将来的に二輪用EBS(衝突被害軽減ブレーキ)を搭載するときにも有効な機能となり得ます。二輪においてもプリクラッシュ機能は重要となってきますから、多くのマニュアルトランスミッションに「E-Clutch」が必須になる時代がやって来るかもしれません。

ホンダがYouTubeに公開しているティザームービーによれば従来のクラッチシステムにアクチュエーターや歯車を追加したシステムのようだ。
ホンダがYouTubeに公開しているティザームービーによれば従来のクラッチシステムにアクチュエーターや歯車を追加したシステムのようだ。

筆者が個人的に気になっているのは、変速時に「E-Clutch」がどのような制御をしているか、という点です。通常のクラッチシステムを搭載したバイクにおいても、シフト操作に合わせてエンジン制御を行うことで、クラッチレバーを操作せずにシフトアップやシフトダウンが可能になる「クイックシフター」と呼ばれる機能は普及しています。

「E-Clutch」の変速時においても、クイックシフター的な制御としたほうが効率的な場合もあるでしょうし、一方で、クラッチを切ってエンジン回転を合わせたほうがスムースな場合もあるでしょう。

いずれにしても、ライディングに集中でき、楽しさを満喫できる制御プログラムになっていることを大いに期待したいと思います。

自動車コラムニスト・山本 晋也

【関連リンク】

Honda E-Clutch先行情報サイト
https://global.honda/jp/business_and_innovation/motorcycles/Honda_E-Clutch/

この記事の著者

山本晋也 近影

山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
続きを見る
閉じる