マツダ「ルーチェ・ロータリークーペ」デビュー。コスモスポーツ、ファミリアに続く第3弾ロータリー車は華麗な上級クーペ【今日は何の日？10月15日】

■上級クーペのルーチェにロータリー搭載モデルも追加

1969（昭和44）年10月15日、東洋工業（現、マツダ）からロータリーエンジンを搭載した「ルーチェ・ロータリークーペ」がデビューしました。

ルーチェは、1966年にガソリンエンジンを搭載してデビューしていましたが、ロータリー第3弾として新たにロータリー搭載モデルを追加したのです。

●スタイリッシュな欧州風デザインで登場したルーチェ

1966年、ルーチェはマツダにとって最上級の中型セダンとして誕生。デザインは、イタリアの巨匠ジウジアーロが担当し、丸目4灯が特徴の見るからにヨーロピアンな雰囲気を漂わせていました。

3ボックスの4ドアセダンで、エンジンは最高出力78PS／最大トルク11.8kgmを発揮する新開発の1.5L直4 SOHCで、車体が軽量であったため0-400m加速19.6秒、最高速度は150km/hを超えました。デラックスとスタンダードの2グレードが設定され、デラックスの価格は69.5万円でした。

当時まだ自動車後進国でもあった日本のメーカーは、1950年代から1960年代にかけて、欧米の自動車技術や生産技術、デザインなどを、技術提携や委託開発によって吸収していました。

なかでも特に、スタイリングデザインにおいては先進国であったイタリア人デザイナーを迎え入れ、多くの名車が生まれました。ミケロッティデザインの「スカイラインスポーツ」や、ピニンファリーナによる「2代目ブルーバード410」、ヴィニアーレの「コンパーノ」などが有名です。

●世界初の量産ロータリー搭載車、コスモスポーツとファミリアクーペ

1967年、東洋工業から世界初のロータリーエンジン量産車「コスモスポーツ」がデビュー。ロータリーエンジンは、おむすび型のローターが回転して動力を発生する画期的な機構のエンジンであり、量産化に成功したのはマツダだけでした。

コスモスポーツは「走るというより、飛ぶ感じ」のキャッチコピーを体現するような、流線形のシャープなフォルムのスポーツカー。最高出力110PSを発揮する10A型ロータリーエンジンを搭載し、最高速度185km/h、0-400m加速16.3秒という圧巻の走りを誇り、パワフルなロータリーエンジンをアピールするのに十分でした。

それに続くロータリーエンジン搭載の第2弾は、1968年にデビューした大衆車の「ファミリアロータリークーペ」です。エンジンは、コスモスポーツと同じ10A型を搭載。最高出力は100PSに下がったものの、軽量ボディの効果で最高速は180km/h、0-400m16.4秒を記録しました。

●ロータリーらしいパワフルな走りをするも短命に終わる

第3弾のロータリー搭載車ルーチェ・ロータリークーペは、ロータリーエンジンだけでなく、マツダ初のFFレイアウトをはじめ、足回りからスタイリングまですべてが専用設計されました。

パワートレインは、最高出力126PS／最大トルク17.5kgmを発揮する13A型（655cc×2ローター）ロータリーエンジンと4速MTとの組み合わせ。最高速度190km/h、0-400m加速16.9秒を叩き出しました。これは、当時のクラウンやスカイラインの6気筒エンジンを凌駕する圧倒的な動力性能でした。

車両価格は、DX：145万円／スーパーDX：175万円と高額だったこともあり、ロータリーエンジンに魅了された一部のファンには評価されましたが限定的で、1972年9月に生産台数わずか976台で生産を終えました。ちなみに、当時の大卒の初任給は3.5万円（現在は約23万円）程度でした。

その後もマツダは、「サバンナ」「コスモAP」「RX-7」など次々とラインナップ展開を図りましたが、2012年の「RX-8」の生産終了をもって、ロータリーエンジンは市場から消えました。

最新情報では、コンパクトSUV「MX-30」にロータリーエンジンを発電機として使う「e-SKYACTIV R-EV」の欧州向けの量産を開始したという発表がありました。まさに、待ちに待ったロータリーの復活です。

毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれません。

（Mr.ソラン）